雪どけ、乳白、きぬの夢。~みちのくより遠い関東へ 4日目 ⑤~ | 旅は未知連れ酔わな酒

雪どけ、乳白、きぬの夢。~みちのくより遠い関東へ 4日目 ⑤~

4月中旬雨の日光東照宮雨に濡れる神輿舎 旅行記

奥宮で3年半ぶりのお参りを終え、軽い足取りで麓へと戻ります。漆黒の壁と金の装飾の対比が印象的なこの建物は、神輿舎。春と秋に行われる渡御祭に使われる、三基の御神輿が納められています。

4月中旬雨の日光東照宮神輿舎に納められた三基の御神輿
天井を舞う美しい天女に見守られ、ひっそりと安置される御神輿。中央が徳川家康公、右側は豊臣秀吉公、そして左側は源頼朝公の御神輿なのだそう。名だたる三人の武将が並ぶ姿は、きっと歴史好きには堪らないことでしょう。

4月中旬雨の日光東照宮去り際に陽明門をもう一度
いつ訪れても、彫刻や色彩の美しさ、そして何より杉に覆われた山の持つ空気感に圧倒されてしまう日光東照宮。その余韻を噛みしめつつ、あまりにも優美な陽明門の姿をもう一度だけこの眼に灼きつけます。

4月中旬雨の日光東照宮陽明門で遊ぶ唐獅子たち
煌びやかな門をくぐり振り返れば、楽しそうにじゃれ合う唐獅子たち。そうか、前回訪れたときはまだだいちゃんは健在だったんだ。時の流れの速さに驚くとともに、きっと今頃こうしてお友達と遊んでいるんだろうなぁ、なんて飼い主の淡い期待を重ねてしまう。

4月中旬雨の日光東照宮鳴き龍のある薬師堂
かわいい唐獅子に別れを告げ、右手に位置する薬師堂へ。その名の通り、こちらはお薬師様が祀られた輪王寺のお寺。中へと入ると天井には巨大な龍が描かれており、その顔の真下で拍子木を叩けばころころと堂内に響き渡る龍の声。それにしても、拍子木の音が変化するのは顔の真下の一点だけ。何とも不思議なものです。

4月中旬雨の日光東照宮雨に濡れる陽明門をもう一度
鳴き龍の美声の余韻を耳に宿しつつ、日光東照宮を後にすることに。その前に、振り返り豪華絢爛な世界観をもう一度。今日このタイミングで来ることができ、本当に良かった。その想いを胸に、先へと進みます。

4月中旬雨の日光東照宮雨に濡れ佇む御仮殿
参拝を終え鳥居を目指し進んでゆくと、その手前に御仮殿特別公開中の看板が。これまで気づきませんでしたが、立派な御仮殿がひっそりと佇んでいました。御本社を修理する際に、神様を一時的に遷すための仮の社殿。日本に数ある神社の中で、仮の社殿が常設されているのはここだけなのだそう。

4月中旬雨の日光東照宮御仮殿透塀の彫刻
仮とは思えぬほどの、この荘厳さ。立派な社殿の周囲には透塀が廻らされ、その上部には花鳥風月の彫刻が無数に施されています。380年以上前に建てられ、使われたのは19回。幕末を最後にしばらく使用されていないそうで、まるで次の出番をひっそりと待っているかのよう。

4月中旬雨の日光東照宮二荒山神社へ続く参道
久しぶりの東照宮の空気を胸いっぱいに吸い込み、そぼ降る雨の中二荒山神社へと進みます。いつもなら人の波ゆくこの参道も、今日はしっとり、独り占め。

4月中旬雨の日光東照宮白くて丸いかわいいミツマタの花
したたる緑に目を細め歩いてゆくと、白い花火のような球体の先に黄色い花を咲かせる木が。小さなポンポンを無数につける姿が愛らしく、帰ってから調べてみるとこれがミツマタの花なのだそう。和紙の原料としては知っていましたが、こんな可憐な花が咲くのですね。

4月中旬雨の日光二荒山神社
東照宮の石鳥井からゆっくり歩くこと約5分、二荒山神社に到着。すぐ近くには徳川家光公の廟所である大猷院がありますが、今回は時間の都合で見送ることに。いつかは輪王寺や大猷院にもお参りせねば。新たな宿題が増えてしまいました。

4月中旬雨の日光二荒山神社立派な拝殿でお参りを
1,200年以上もの歴史を持つ、男体山を御神体とする二荒山神社。今回はその姿を仰ぐことはできませんでしたが、再びこうして日光へ戻ってくることのできたことのお礼を伝えます。

4月中旬雨の日光二荒山神社雨に濡れる八汐つつじ
やっぱり日光は半日では足りないなぁ。今度は明知平や中禅寺湖へ・・・。そんな良からぬ妄想を抱きつつ境内を歩いていると、梅でも桜でも桃でもない艶やかな色合いの花を発見。

4月中旬雨の日光二荒山神社可憐な八汐つつじ
近づいてみると、八汐つつじと書かれた札が。歴史と同じく花にも疎い僕。いわゆるつつじやさつきは好きですが、こんなつつじもあるなんて。雨に打たれひらひらと咲く可憐な花に、思わず言葉を忘れて見入ります。

雨が降らなければ、今回は訪れる予定のなかった日光。でもこれまで、十代、二十代、三十代と、その時々での良さを教えてくれた。だからきっと、せっかく四十代になったのだからと、雨がここへと導いてくれたのかもしれない。

今日の日光は、穏やかで、静か。天候や人の少なさもさることながら受け取る側の自分の変化をしみじみと感じ、またひとつこの地で得た想い出が胸へと刻まれるのでした。

雪どけ、乳白、きぬの夢。~みちのくより遠い関東へ~
4月中旬奥鬼怒温泉郷ホテル加仁湯夜の露天風呂
2022.4 栃木
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