雪どけ、乳白、きぬの夢。~みちのくより遠い関東へ 1日目 ③~ | 旅は未知連れ酔わな酒

雪どけ、乳白、きぬの夢。~みちのくより遠い関東へ 1日目 ③~

4月中旬雪どけの加仁湯 旅の宿

新宿駅を発ち電車と小さなバスを乗り継ぐこと約5時間、ようやく今回の旅の目的地である『加仁湯』に到着。遠路はるばるやって来た。同じ関東とは思えぬほどの、想像以上の辿り着いた感。

4月中旬雪どけの加仁湯積善館客室
帳場でチェックインし、早速お部屋へ。実はこちらに泊まるのは今回が2度目。前回は約15年前、僕の秘湯好きを形作ってくれた会社の温泉好き仲間での訪問。その時と同じ積善館のお部屋に、当時の想い出が一気に甦ります。

4月中旬雪どけの加仁湯窓の外には残雪と滝
建物のすぐ横を流れるのは、鬼怒川の源流。窓からの川音に誘われ外を見てみると、4月半ばというのに残雪が。芽吹き前の山肌には二条の滝が落ち、ここが自分の住む地方と同じであることを忘れてしまう。

4月中旬雪どけの加仁湯第二露天風呂
遠い道のりをはるばる越えてやってきた甲斐があったと思える光景に、早くも心は逆上せ気味。逸る気持ちに急かされつつ浴衣に着替え、早速お風呂へと向かいます。

この宿にはいくつか浴場があり、滞在中に湯めぐりを楽しめるのも嬉しいところ。まずは小ぶりな第二露天風呂へ。加仁湯の源泉は5本あり、それらを混合して湯船に掛け流し。日によって温度や色味が異なるようで、この日はかなり熱めでした。

4月中旬雪どけの加仁湯カモシカの湯
熱々の第二露天風呂に足だけ浸かり、すぐ近くに位置するカモシカの湯へ。滝を間近に眺める場所に設えられた浴槽には無色透明の源泉が掛け流されており、こちらは適温。さらりと優しい浴感のお湯とともに、くり抜かれた岩風呂の質感が体を包み込むような心地よさ。

4月中旬雪どけの加仁湯第三露天風呂
一旦体を拭いて浴衣を羽織り、更に奥に位置する第三露天風呂へと向かいます。一番奥の第一露天風呂は女性専用、そしてこの第三と先ほどの第二は混浴となっています。

鬼怒の源流やふた筋の滝を望む、絶好のロケーション。その大きな浴槽には美しいにごり湯が満たされ、その見た目だけでも山の秘湯というものを具現化したかのような世界観。

そんな風情溢れる情景の中、肩まで浸かり滝を愛でつつ深呼吸。湯けむりとともに立ち上る硫黄の香を胸いっぱいに吸い込めば、あぁ、ここまでやってきて良かったと心の底から思えてしまう。

4月中旬雪どけの加仁湯残雪つまみに湯上りの冷たいビール
濃厚なにごり湯ながら、肌なじみの良い穏やかな浴感の至極の湯。15年前も感激したけれど、幾多もの温泉へと足を延ばすようになった今訪れても、この悦びは色褪せない。久々の再会を噛みしめつつ飲む湯上りの冷たいビールは、残雪がつまみとなればその旨さもひとしお。

4月中旬雪どけの加仁湯にごり湯満たされる内湯
東北の冬季休業するような宿ならいざ知らず、四月半ばの関東で雪見露天なんて。そんな夢のような洗礼に到着したそばから圧倒されつつ、あっという間にもうすぐ夕食の時間に。その前に内湯で頭を洗い、静かな室内でじっくりと加仁湯のお湯と向き合います。

4月中旬雪どけの加仁湯1泊目夕食
長い移動と湯浴みでお腹もすっかり減り、お待ちかねの夕食会場へ。テーブルには美味しそうな山の幸がずらりと並びます。まずは惣誉を開け、きのこやうどといった山の幸で乾杯。口に広がる滋味深さが、山のいで湯へ来たという実感を連れてきます。

お刺身や煮物には、日光名物の湯波が。生湯波の刺身はとろりとした濃厚な豆の味わいが広がり、巻き湯葉の煮物はぎゅっと凝縮された豆感が堪らない。

子供の頃、京都の湯葉は好きだけど日光の湯波は苦手だった。時が経ち、大人になってから何度も日光湯波を食べましたが、こんなにおいしかったんだと毎度嬉しくなってしまう。大人になって味覚が変わるって、本当にあることなんですよね。

そして揚げたてを運んできてくれたのは、熱々の天ぷら。うどはサクッとした衣の中からぶわっと広がる香りが豊満で、ふきのとうは口中に駆け巡るほっくりとした苦みが何とも春らしい。これだけでも、この時期ここへ来た甲斐があったというもの。

4月中旬雪どけの加仁湯1泊目夕食山菜ときのこのグラタン
続いて運ばれてきたのは、こちらも焼き立てのグラタン。とろりと溶けたチーズの奥には、たっぷりの山菜ときのこが隠されています。濃すぎずゆるすぎずの丁度よい塩梅のホワイトソースに絡んだ山の幸は、和の惣菜で味わうのとはまた違った表情に。僕これ、大好き。

4月中旬雪どけの加仁湯1泊目夕食しんじょうの湯波包み
こちらも熱々の蒸し物、真丈の湯波包み。食べ応えある湯波で、ふんわりとした真丈が包まれています。京都の湯葉に比べ、日光の湯波はその存在感の強さが印象的。大豆のたんぱく質を凝縮したぞ!という食感と風味の濃さが、僕にとっての日光湯波のイメージ。

4月中旬雪どけの加仁湯1泊目夕食鴨の陶板焼きと岩魚の塩焼き
そしてこれまた焼き立ての岩魚の塩焼きが。ほっくりとした身を頭から頬張れば、やっぱり湯宿は山に限るとさえ思えてしまう。その隣、まもなく焼きあがるのは鴨の陶板焼き。柔らかな身に詰まった赤身の旨味が惣誉を誘います。

4月中旬雪どけの加仁湯夜のお供に澤姫純米吟醸真・地酒宣言
最後にご飯で〆て、大満腹。手作りの山の幸の品々に、ここまで来て本当に良かったと満足感に包まれます。敷かれた布団にころりと転がり、一杯のお腹を落ち着けたところで今宵の供を開けます。

この旅1本目に選んだのは、宇都宮は井上清吉商店の澤姫純米吟醸 真・地酒宣言。栃木県産の酒造好適米ひとごこちで醸されたお酒は、しっかりと味わい深いのにさらりと飲みやすく、するするとどんどん飲みたくなる旨さ。

4月中旬雪どけの加仁湯白熱灯に照らされる美しい白濁の湯
視覚からすら伝わるようなシルキーなにごり湯に身を委ね、耳に川音、鼻に硫黄の香、そして肌に温もりを感じるこの幸せ。漆黒の夜闇に目を凝らせば、四月半ばというのに目を悦ばせる雪見露天。

仕事を終え、10時半に新宿を発ち5時間かけて。今日はほぼ移動の一日だったけれど、この満たされた気持ちは何だろう。

15年ぶりに訪れた想い出の宿が、その時の記憶を裏切らずに迎えてくれる。遠路はるばるやって来たという感慨もさることながら、そのこと自体が嬉しいのかもしれない。こんな夜が、明日も明後日も続くなんて。これから出逢うであろう豊かな時間に、思わず目を閉じ思いを馳せてみるのでした。

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雪どけ、乳白、きぬの夢。~みちのくより遠い関東へ~
4月中旬奥鬼怒温泉郷ホテル加仁湯夜の露天風呂
2022.4 栃木
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