大館から約3時間半、花輪線の車窓を満喫し盛岡に到着。この街も、夏の祭りの真っ最中。遠くの駅前広場からは、さっこらちょいわやっせ~の特徴的な掛け声が。
さんさ踊りの賑わいを感じつつ、まずは盛岡といえばの名物を味わうべく駅前の『盛楼閣』へ。時刻は14時過ぎ、行列はできていましたが意外と早く15分程で入店。
ほどよい苦みが旨いハーフ&ハーフを飲みつつ待つことしばし、お待ちかねの盛楼閣冷麺が到着。辛さを選べますが、今回もキムチは別添えの辛味別で注文。
まずは透明感あるスープをひと口。うんそうそう、沁みるんだよなぁ。あっさりながらじんわりとした旨味が宿り、すっと牛の香りが通ってゆく。
そんなきれいな味を愉しんだら、続いてキムチを汁ごと投入。すると表情は一変、一気に増す華やかさ。キムチの酸味と旨味、辛みが加わり、舌から脊椎へと抜けてゆく直感的な旨さに変化。でも決して、キムチ味一色になるわけではない。それはきっと、ベースのスープがしっかりしているから。
続いて、涼しげな見た目をした艶やかな麺を。その太さとは裏腹に、ちょうど良い塩梅の弾力と歯切れのよさ。しっかりと歯触りがありながら、冷麺にありがちな嫌なぐにぐに感がない。この独特な食感の麺だからこそ、スープとのバランスがとれているのだろう。
弾力ある麺を噛みしめ、スープを啜り。ときおりすいかやしっかりと煮込まれた牛を挟めば、また異なる表情を愉しめる。旨いよ、本当に旨いよ。そう呟きつつ、名残惜しくも最後の一本一滴まであっという間に完食。
駅前の有名店ということもあるだろうが、盛楼閣が混むには理由があるんだよな。行列嫌いな僕でも、ここには並んでしまう。そう思わせてくれる盛岡冷麺との逢瀬を終え、大満足で盛岡の街へと向かいます。
真っ青な夏空に映える白い開運橋にご挨拶し、架橋から71年もの間現役を続ける古老の上へ。眼下には、滔々と流れる北上川。その先に見えるはずの岩手山は、今日はお休みの様子。
ときおりすれ違う祭り姿の人々に今宵の賑わいを思いつつ、商店街を進み盛岡城跡へ。お堀端には、真っ盛りの夏を愉しむかのように枝を伸ばす豊かな緑。その奥では、石垣の修復工事が進められています。
本当はお城に登りたかったけれど、今日の盛岡は絶好調な暑さ。そのままお堀沿いを進み、櫻山神社にお参りを。こうして幾度も盛岡へと帰ってくることができているお礼を伝えます。
さらにその先に進むと、交差点に凛と建つ岩手銀行旧本店本館。今日のこの青空が、重厚な赤レンガを一層鮮やかに染めあげる。
特に行き先を決めず、のんびり歩く盛岡の街。そうだ、次はあそこへ向かおう。そう思い肴町アーケードに向かうと、そこには風流に揺れる七夕まつりの吹き流し。魚屋さんらしい1000貫のお寿司が並ぶ光景に、思わず笑みがこぼれてくる。
さらさらと耳へと届く涼しげな音を聴きつつ進んでゆくと、三陸鉄道開通40周年を祝う吹き流しが。今ではリアスの北と南が繋がったことだし、また乗りに行かなきゃだな。
さらにその先へとゆけば、重厚な赤レンガ館の描かれた岩手銀行の吹き流し。その横に佇む渋い建物が、これまた味わい深い。
思いがけず出会えた、色とりどりに彩られた七夕の風流さ。そして嬉しかったのが、商店街が元気になっていたこと。正直、初めてここを訪れたときはシャッター街の様相だった。ですが今は営業しているお店が増え、盛岡唯一のアーケードは賑わいを取り戻しています。
大好きな街の明るい変化に嬉しさを噛みしめつつ、八幡町通へ。歴史を感じさせる古いお店から、夜に灯りの点るであろう妖しい店まで。門前町としての歴史と繁華街の香りが、何とも言えぬ対比を生み出しています。
まっすぐに伸びる門前町を抜け、大きな鳥居の建つ盛岡八幡宮へ。容赦なく網膜を灼く夏の光線、その青に映える朱の鮮烈さ。本当に今日の盛岡は、夏全開だ。
まずは手を清めようと手水に向かうと、夏の暑さに一服の清涼を与える花々が。水に浮かぶ瑞々しくも優しい色彩に、胸にふっと風が吹き渡る。
夏空と濃い緑に染まる森を背負い建つ、立派な拝殿。幾重にも重なる屋根や鮮やかな色彩の放つ荘厳さに包まれつつ、今年も善き夏を過ごすことのできたお礼を伝えます。
境内に、ちりちりと涼やかな音を届ける風鈴たち。蝉に花火に風鈴に。音に季節を感じられるこころを、いつまでも持っていたいとそう願う。日本には、津々浦々、四季折々の音が満ちているのだから。
そんな風流なことを考えたのも束の間、ずらりと並ぶ樽に思わずごくり。どれも旨い記憶に彩られる面々に、今宵の酒へと喉が鳴る。
お参りを終え、清々しい心持ちで浴びる全力の夏。その滾るような陽射しと青さを全身に受け取り、更なる盛岡の夏を求め再び街へと歩みを進めるのでした。
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