看板建築と酒蔵に彩られる甲州街道を逸れ、小雪の舞う中のんびり街歩きを続けます。上諏訪は宿場、そして城下として古くから栄えた街。住宅地の中に歴史を感じさせる建物が溶け込みます。
古そうな火の見櫓があったので近づいてみると、これまた古そうな琺瑯の看板を発見。何が書いているのだろうと見てみれば、鐘やサイレンの鳴らし方を示したもの。號や應といった字体からもその古さが伝わるよう。それにしても、消防信号というものを初めて知りました。
古いものがいかにもという形ではなく、自然と残されている諏訪の街並み。湖以外の場所を訪れるのは初めてですが、ここは僕好みの歩いていて楽しい街。雪のちらつく空模様がまた、冬旅の情緒をより深いものとしてくれています。
住宅街を歩いてゆくと、小さな水路へと差し掛かります。その先でゆらゆらと揺れるものが気になり、近づいてみると・・・。
舟運のためのものなのか、それとも漁に出るためのものなのか。現役かもわかりませんが、まるで時代劇にでも出てきそうな小さな木船が係留されています。こんな発見に出逢えるのも、歩き旅ならでは。
住宅地を抜け市役所の前を進んでゆくと、立派な石垣に天守や櫓を持つ高島城に到着。白く凍てつくお堀が、この地の冬の厳しさを物語るよう。
築城された当時は、この辺りは諏訪湖や湿地に囲まれた浮島のような場所だったのだそう。今は干拓され奥には市街地が広がっていますが、諏訪湖と天守の競演はそれは優美なものであったことでしょう。
お堀に突き出た天守の雄姿を眺めつつ、冠木門より本丸へと進みます。門の重厚さを一層強めるかのように、両側に迫る苔むした石垣が印象的。
中へと入ると、冬支度の整えられた庭園が広がります。高島城は明治維新により廃城となり、現在は高島公園として開放されています。
現在建つ天守閣や櫓などは、昭和45年に復興されたものだそう。大きな破風や華頭窓が、このお城の持つ独特な表情を形作ります。
築城当時は諏訪湖に面していたというお城の西側。ごつごつとした印象を持つ野面積みの石垣が続きますが、地盤が軟弱なため木の筏が組まれその上に石が積まれているのだそう。
諏訪の浮城とも呼ばれたという高島城。諏訪湖に面した天守とその足元を固める重厚な石垣という当時の姿に思いを馳せ、今一度その雄姿を見上げます。
古き良き建築から、立派な石垣を持つお城まで。進むごとに様々な表情を見せてくれる諏訪の街歩きは更に続きます。
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