北東北 夏巡り ~漲る灯り、地の滾り。 3日目 ②~

百沢温泉アソベの森いわき荘

弘前に通うこと7年。ついに岩木山神社へのお参りを果たし、清々しい気分で歩く道。岩木山神社付近の百沢は温泉地としても名高く、どうやら成分の濃い良いお湯が湧いている模様。

ということで今回は、岩木山神社から歩いて15分ほどにある『アソベの森いわき荘』に立ち寄ることに。高原のリゾート感漂う立派な外観が目印です。

あいにく浴場内は撮影禁止のため写真はありませんが、大浴場には内湯と露天、大きな2つの浴槽で構成されています。

内湯には青森らしくヒバがふんだんに使われ、漂う木の香とともに肌に感じる柔らかな木肌と湯屋を支える重厚な木組みが、湯浴みを一層味わい深いものとしてくれます。

露天は眼前に百沢の緑深い森を眺めることができ、湯浴みと同時に森林浴もできてしまいそう。今回は残念ながら夏の風物詩、アブちゃんがいたので入れませんでしたが、これはまた季節を変えて来てみたい。

肝心のお湯はと言えば、見るからに成分の濃そうな土っぽい色のほんのりとしたにごり湯。ナトリウム・マグネシウム-炭酸水素塩・塩化物泉のお湯は、肌へピタッと吸着するような浴感が印象的。古くから熱の湯といわれる百沢温泉だけあり、湯上がりは中々汗がひかないほどの保温効果があります。

アソベの森いわき荘で湯上がりのビールを
この旅初の温泉をたっぷりと愉しみ、汗もたっぷりとかいたところで湯上がりのビールを。

木の温もり溢れる、広々としたロビー。大きく取られたその窓から溢れる、岩木山麓の木々の緑。渋い湯宿も好きですが、たまにはこんな高原リゾートでのんびりするのもいいかもしれない。今度は立ち寄りではなく泊まりで来てみたい、そう思えるホテルです。

山頂がWの山の字になっている岩木山
初めての百沢温泉の濃さを堪能し、爽快な気分でホテルを後にします。バス停へと向かい歩く長閑な道。ふと振り返れば、そこには頭も隠さず黒々と聳える岩木山。

ここから眺める山頂は、ふたつの「山」という文字が隠されているように見える独特の姿。この地にこの山をご神体とした神社があることが必然と思える幽玄たる美しさに、思わず息を呑みます。

弘南バス車窓に広がる嶽きみ畑と津軽富士
百沢温泉前バス停より再び『弘南バス』に乗り込み、次なる目的地を目指します。

更にぐんぐんと標高を上げるバス。登るにつれて車窓はりんご畑からとうもろこし畑へと変化し、白く輝く穂の姿に嶽きみの甘さが思い出されます。

嶽温泉山のホテル
夏の高原の雄大な車窓を愛でること10分足らず、嶽温泉に到着。ここは初めて弘前を訪れた際に泊まった、思い出の場所。まさかそこから毎年こうして弘前の地へと来るようになるとは。鼻をくすぐる硫黄の香に、6年前の記憶が一気に甦るよう。

数軒の宿の並ぶ小さな温泉街の中で、今回お邪魔したのは『山のホテル』。立ち寄り湯と名物を振る舞う食堂の両方が揃い、日帰りでも嶽の魅力を味わえる便利なお宿です。

中へと入り、まずは食堂で食事と立ち寄り湯のオーダーを済ませます。名物のマタギ飯は炊き上がりまでに時間が掛かるため、その間にお風呂を楽しみつつ待つという、何とも嬉しいシステムです。

嶽温泉山のホテル美しい白いにごり湯
ぐぅと鳴るお腹をなだめつつ、まずはお風呂へ。脱衣所の扉を開けた瞬間、鼻孔をくすぐるかぐわしい硫黄の香り。美しくにごるその白さに、思わず見とれてしまいそう。

味わい深い木の湯屋に身を委ねつつ、6年ぶりの再会を噛み締める嶽の湯。その浴感は、シルキーと表現するのが一番相応しい。酸性泉にありがちな刺激はなく、全身を包む優しさと穏やかさ。たゆたういで湯に身を任せれば、この上ない心地よさに溶けてしまいそう。

嶽温泉山のホテルで湯上がりのビールを
久々に味わう嶽の恵みに満たされ、再び湯上がりのビールを。ソファーの横の窓からは高原の爽やかな風が流れ込み、冷房には決して創りだせない自然の涼やかさを心ゆくまで味わいます。

嶽温泉山のホテル名物マタギ飯
指定の時間になり、併設された食事処マタギ亭へ。宿の先代のご主人がマタギであったというだけあり、山菜や獣肉を使ったメニューが揃います。本当はガッツリいきたいところでしたが、今夜も早めの夕食のため、ボリューム控えめのマタギ飯セットを注文しておきました。

席へとつくと、すぐに運ばれてくる炊きたて熱々の名物、マタギ飯。ご飯が見えないほど覆うたっぷりの舞茸の他に、鶏、根曲がり竹、ごぼうといった風味豊かな具材が炊き込まれています。

周囲にふわっと広がる豊満な香りに期待しつつ、ひと口。あぁ、しみじみ旨い。素朴ながら日本人としての琴線に触れるような滋味深い味わいは、飾り気のない山里のご馳走そのもの。味付けも素材の風味を損ねない塩梅で、物足りなさや飽きを感じることなく最後までおいしく食べられます。

嶽温泉山のホテル舞茸の土瓶蒸し
おかずなし、それだけでもどんどんと食べ進めたくなる絶妙な旨さのマタギ飯。それをさりげなく支えるのが、この舞茸の土瓶蒸し。こちらも必要十分なだしと塩分により、舞茸の持つ香りや風味を素直に味わうことができます。

澄んだ上品なおだしに溶け込む、具材の旨味。お猪口に注いでクイッと飲めば、胃へと辿りつく前に体の芯へと浸透するかのような穏やかさ。全てがいき過ぎる街に住む者にとって、この素朴なもてなしに心の深い部分をギュッとされてしまいそう。

初弘前で叶うことのなかった岩木山神社への参拝から始まり、百沢と嶽の恵みに浸かるひととき。8度目にしてもなお、新鮮な感動をくれる津軽。訪れれば訪れるほどに、この地へ寄せる想いは増すばかりなのでした。