1年ぶりに石垣島で迎える朝。窓から差し込む陽射しに期待しつつ外を見てみると、すでに力を持ち始めた太陽があたりを強烈に照らしていることがガラス越しにも伝わるよう。
さぁ今日は天気がよさそうだ!一日遊ぶ活力を得るため、お待ちかねの朝食会場へと向かいます。バイキング会場には和洋のオーソドックスな品々のほか、八重山の郷土の味がずらりと並んでいます。
ということで今朝の僕のチョイスはこれ。ゴーヤーチャンプルーは穏やかな味付けがゴーヤーの爽やかな苦みを引き立て、グルクンの唐揚げはホテルの朝食とは思えないからりと揚げられた本格派。オリオン、飲みてぇ。
ソーセージにはもずく、卵焼きにはアーサーが入れられ、ちょっとした海の気配が美味。お気に入りのもずくのりやラフテーもしっかり美味しく、そして何より朝から八重山そばが食べられるのが本当に嬉しいところ。
繰り返しますが、この朝食は無料のサービス。考え方によっては朝食代込みとも言えますが、やはり宿泊費を考えると無料だと思えてしまう。ちなみに他のベッセル系列も各地の郷土色を活かした朝食を提供しているそう。もし旅先の候補地にあれば、優先的に選択肢に入ることは言うまでもありません。
なんだかすっかりベッセルホテルの回し者のようになってしまいましたが、それだけしっかり八重山を感じられる内容だったということ。美味しい朝食にお腹も心も満たされ、落ち着いたところで今日の活動を開始します。
バスターミナルから『東運輸』の川平リゾート線に乗車し、やいま村を目指します。ちなみに今回は、5日間全線乗り放題のみちくさフリーパスを購入。HP等では5日間有効と案内されていますが、実際は購入時から5日後の同時刻まで120時間有効の模様。ということは、昨日空港からのバス車内で買っておけばよかった!残念!
バスは市街地を抜け青い海沿いを走ること約40分、やいま村入口バス停に到着。すぐ近くに海へと続く道があったので、ふらりと下ってみることに。するといきなり眼前に広がる、この光景。これを絶景と言わずして、何を絶景というのだろうか。
深い森に守られた浜は人の気配もなく、あたりには穏やかな波が砂を洗う音が響くのみ。遠浅の名蔵湾は陽射しのすべてを溶かしこみ、それを精製し鮮烈な青さとして表しているかのよう。
意図せず極上の美しさを魅せてくれた海に別れを告げ、坂道をひたすら上り『石垣やいま村』へと到着。こちらには八重山の古民家が移築され、中には国の登録有形文化財に指定されているものもあるのだそう。
石垣と草木に包まれた園内へと入ると、渋い佇まいの古民家がお出迎え。時を経て深みを増した木材の風合いと、経年を感じさせる漆喰と赤瓦の対比。屋根に座るシーサーが睨みを利かせ、場所は変われどこの建物を守り続けているかのよう。
こちらの旧大浜邸には、赤瓦を積み上げて作られた渋い塀が。美しい花の咲き誇る生垣と共に、家に悪者を寄せ付けないという守りの意思すら感じさせるよう。
ある種の荘厳さすら漂わせる敷地内へとお邪魔してみると、平屋というものを体現したかのような重厚な佇まいの家屋がどっしりと横たわります。雨戸を開け放たれ骨格のみとなった屋敷からは、暑さ厳しい琉球の地で暮らすことの厳しさが伝わるよう。
琉球の古民家は基本的な様式が決まっているそうで、東側、この写真では奥から手前に向け一番座、二番座と呼ばれる部屋が並びます。そして一番西が、火の神様を祀る台所となります。
家屋内へと上がってみれば、強烈な陽射しは屋根に遮られ、柱のみとなった室内には絶えず自然の風が吹き渡り想像以上の涼しさ。エアコンも扇風機もない時代から、こうして自然と対峙して生きてきた歴史。古い日本家屋には、各地の険しい自然に暮らす知恵が、結晶となり宿っているのです。
古民家の渋い佇まいに琉球での古の暮らしを感じ、続いてはリスザルの森へ。フェンスで囲われた深い森では、幾多ものボリビアリスザルが自然に近い状態で飼育されています。
小さなリスザルは想像以上に人懐っこく、近づいても逃げることなくその愛くるしい姿を惜しげもなく見せてくれます。ふわふわな毛並みに、一点の曇りもないつぶらな瞳。檻を隔てず間近で見るのはこれが初めてですが、その可愛さにもうすっかり骨抜きに。
中には自分の太いしっぽに手をつき、くつろぎながらご飯を味わうリスザルも。正直僕は猿の類が苦手なのですが、原猿類やリスザルは別。ころころと変わる表情と細かい動きに、時間も忘れいつまでも見ていられそう。
赤ちゃんをおんぶしたリスザルも多く見受けられ、小さな赤ん坊がお母さんにしがみつく姿はもう説明不要の愛らしさ。くりくりとした大きな目に、なかなかこの場を離れることができません。
程なくして、民謡のコンサートが始まる時刻に。後ろ髪を引かれつつもかわいいリスザルに別れを告げ、旧牧志邸へと向かいます。
座敷へと上がると、カスタネットのような楽器が配られます。この三板(さんば)は、左手の指に挟みカチャカチャと鳴らして使います。試しに音を出してみると、あ、この音!とすぐに伝わる沖縄感。どうやら無意識のうちに、この音色に親しんでいたようです。
地元の老人クラブの方々が奏でる民謡を、風に吹かれつつ古民家で聴くひととき。何となく八重山のくらしに触れたところで、今度は中身の入った一升瓶を頭に載せて踊る瓶踊りが始まりました。最後にはみんなで立ってカチャーシー。この空気感、いいなぁ。
耳に残る三線の音色と沖縄の穏やかな陽気さの余韻に包まれつつ、近くに建つアンパル塔に登ってみることに。螺旋状の通路を上がっていくと、目の前には豊かな南国の植生と抜けるような爽快な青さが。胸のすくような。その言葉とは、こんな状況のためにあるのかもしれない。
八重山の雄大な自然と、そこに溶け込む古の暮らしに触れたやいま村。あぁ、なんだか、やっぱり、いつかは住みたい。回を追うごとに増す、その気持ち。訪れる度に、僕は八重山中毒になってゆく。
毎度感じる、この感覚。自分の体がふたつに割れれば。いや、そうじゃない。二拠点生活なんて言葉も、あるんだよなぁ。いつかは八重山と盛岡へ。そんな僕の妄想をハイビスカスに託し、やいま村を後にします。
四度目となる石垣島で、初めて訪れたやいま村。古き良き時代の八重山を感じたいならば、本当におすすめの場所。そんな最高の体験を一層彩ってくれたこの晴天に包まれ、僕の心の中にも花が咲いてゆくのを感じるのでした。
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