雪どけ、乳白、きぬの夢。~みちのくより遠い関東へ 4日目 ③~ | 旅は未知連れ酔わな酒

雪どけ、乳白、きぬの夢。~みちのくより遠い関東へ 4日目 ③~

4月中旬雨の日光東照宮しっとりとした風情の杉並木参道 旅行記

雨に濡れ、しっとりとした空気感に包まれた参道。両側に並ぶ立派な杉木立は緑の濃さを増し、石垣を覆う苔の色合いも一層深く。晴れには晴れの良さがありますが、この静かで落ち着いた世界観もまた美しい。

4月中旬雨の日光東照宮雨に煙る東照宮入口
思い返せば、初めてここを訪れたのは確か10歳のときだった。それ以来4度目の訪問となる今日、一体僕はどんな景色を見るのだろうか。

十代、二十代、三十代。その度ごとに、僕は新たな感動を受け取ってきた。そして四十代になって初めて訪れる今日、また新たな想い出を持ち帰るに違いない。

4月中旬雨の日光東照宮五重塔
時節柄、そしてこの天候。こんな静かな東照宮は初めて。絶えず降る雨と鬱蒼と茂る木々のもたらすほの暗さから、若干の心細さすら感じるほど。今日はゆっくりできそうだ。時間もたっぷりあるので、じっくり腰を据えてお参りすることに。

4月中旬雨の日光東照宮仁王像の安置された表門
200年以上前に再建されたという五重塔を見上げ、拝観券を買っていざ中へ。両側に睨みを利かす仁王様の安置された表門で券を見せ、極彩色に溢れる別世界へと足を踏み入れます。

4月中旬雨の日光東照宮濡れて艶めく三神庫
まず初めに目に飛び込むのが、緻密かつ美しい装飾の施された三神庫。鮮やかな色彩に彩られた建物と重厚な色合いをした大屋根の対比、それらを凛と引き締める金の輝き。霞を背負い雨に濡れ艶めく姿に、幻想的の言葉以外見つからない。

4月中旬雨の日光東照宮三猿の神厩舎
振り返れば、見ざる聞かざる言わざるの三猿で有名な神厩舎が。文字通り神馬をつなぐための厩で、昔から馬を猿が守るとされていることからこれらの彫刻が施されています。

4月中旬雨の日光東照宮神厩舎子ども時代から独り立ちまで
あまりにも三猿が有名なこの建物ですが、正面から右側にかけて8面の猿の彫刻が施されています。右へと進むにつれて年齢があがり、人生の一部を猿になぞらえて表したものだと言われています。

一番左は赤ちゃん時代。母猿が子の将来を見渡すかのように眺める姿を、不思議そうに見上げる小さな子猿の姿が印象的。その隣は三猿。幼少期は悪事を見たり言ったり聞いたりせず、良いことだけを吸収し素直に育つようにとの意味が込められています。

更にその隣は、青年期。親元を離れた若猿はひとりで座り、まもなく来るであろう独り立ちの瞬間に備えているよう。

4月中旬雨の日光東照宮神厩舎大人になり希望と挫折を味わう
右半分の2面は、大人になってから。天を見上げる若い猿は、将来大物になろうと志を抱く姿が表現されています。その希望溢れる様子から一転、下を見下ろす猿。その姿は挫折を味わいうなだれているようで、周りの仲間が励ましている様子もまた何とも現実的。

4月中旬雨の日光東照宮神神厩舎恋愛から結婚・妊娠まで
右側には3面の彫刻が施されており、相手を見初めて結婚し、新たな命を授かるまでが豊かな表情をもって描かれています。そして生まれた赤ちゃんは、また始まりの彫刻へ。このような形で猿も人も一生が続いてゆく、ということなのでしょう。

4月中旬雨の日光東照宮御水舎
何とも考えさせられる猿の姿に別れを告げ、手を清めるための御水舎へ。このときは時節柄使用が中止されていましたが、上屋に施された豪華絢爛な彫刻や色彩は圧巻のひと言。

4月中旬雨の日光東照宮日暮の門の異名を持つ陽明門
そしていよいよ、東照宮の顔とも言える陽明門の姿が。その美しさにいつまで見ていても飽きないということから、「日暮の門」の異名を持つ陽明門。華奢な美しさの胡粉塗りと、黒々とした漆と金箔の対比が唯一無二の美しさを放ちます。

4月中旬雨の日光東照宮極彩色に彩られた回廊
贅の限りを尽くした美しい門に誘われつつも、その前に左右にのびる回廊へ。大きな一枚板にはそれぞれ花鳥風月が透かし彫りで描かれており、そうとは思えぬほどの立体感に思わず圧倒されてしまう。

4月中旬雨の日光東照宮陽明門の見上げる緻密な装飾
透かし彫りの見事な躍動感に触れ、陽明門の直下へ。くぐる前にと見上げてみれば、視界を占める無限の装飾。漆塗りの組木には金箔の装飾が施され、その先端を護る幾多もの唐獅子や龍たち。その隙間には故事や子どもの遊びなどを題材とした緻密な彫刻が施され、美しさという名のいい意味での圧力、圧倒的な力というものを感じずにはいられない。

4月中旬雨の日光東照宮手直し工事が終わり真っ白な姿になった陽明門
視線を下へとずらせば、かわいく戯れる二頭の唐獅子。元パグ飼いの僕としては、東照宮の唐獅子は堪らないものがある。この躍動感、肉付きの良いしなやかな体、そして三角お耳と大きくつぶらな瞳。だいちゃん、今頃元気にしてるかなぁ。

4月中旬雨の日光東照宮陽明門天井の昇り龍
思いがけず愛犬との温かい記憶に触れ、いざ陽明門をくぐります。ふと上を見上げてみると、何故かこれまで気づきませんでしたが立派な龍の天井絵が。こちらには眼光鋭い昇り龍が描かれています。

4月中旬雨の日光東照宮陽明門の降り龍
その隣には、降り龍の天井絵。昇り龍は見る者を睨みつけるような眼力を感じさせる一方で、降り龍は何となく心を見透かされているような不思議な視線を感じます。

4月中旬雨の日光東照宮胡粉の白と木の色合いの対比が美しい唐門
陽明門をくぐると、正面に現れるのが御本社。その前に建つ唐門は、陽明門とはまた違った美しさ。全体を胡粉の白で彩られつつも、黒檀や紫檀の渋い色味が全体を引き締めるよう。無数に施された彫刻や朱漆と相まって、荘厳さの中にも華奢な雰囲気を漂わせています。

4月中旬雨の日光東照宮雨に濡れる御本社
そしていよいよ、御本社にお参りを。3年半ぶり、4度目となる日光東照宮。再びこうしてここへ戻ってくることができたお礼を、家康公に伝えます。

雨に濡れ、しっとりと穏やかな時間の流れる今日の東照宮。やっぱり雨が、僕をここへと誘ってくれたに違いない。また新たな荘厳さを魅せてくれる東照宮の、更に奥へと歩みをすすめます。

雪どけ、乳白、きぬの夢。~みちのくより遠い関東へ~
4月中旬奥鬼怒温泉郷ホテル加仁湯夜の露天風呂
2022.4 栃木
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●1日目(東京⇒加仁湯)
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●2日目(加仁湯滞在)
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3日目(加仁湯滞在)
●4日目(加仁湯⇒日光⇒宇都宮⇒東京)
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