愉しい時間は早く過ぎるもの。音龍で湯と川音に揺蕩っていると、あっという間に夕食の時間に。今宵はどんな味に出逢えるのかと期待に胸を膨らませ、食事処へと向かいます。
まずは、先付の姫鱒のカルパッチョから。昨日のお刺身でヒメマスのおいしさは確認済みですが、このカルパッチョがまた旨い。味付けはシンプルに塩とオリーブオイルなのですが、ヒメマスのもつ旨味の濃いこと。これはもう、いきなり地酒が進んでしまう。
お隣の前菜は、牛肉のたたき。赤身の旨味と脂の甘味を感じるお肉にしょう油ベースのさっぱりとしたたれがよく合い、これまたシンプルに食材の味を楽しめます。
今夜の焼き物は、鮎の塩焼き。こんがりと焼かれた鮎は、皮は香ばしく中ふんわり。柔らかい身が口でほぐれると同時に、鮎ならではの香りと旨味が広がります。川魚、本当に旨いよなぁ。
続いて運ばれてきたのは、熱々の2品。今夜の天ぷらも噛めばサクッと音がするほどカラッと揚げられており、きのこの瑞々しさや根菜の風味をしっかりと閉じ込めた逸品。
高野豆腐の煮物は、ひと口頬張り思わず旨っ!と声の出るおいしさ。上品な薄味ながらしっかりとおだしが染みており、その優しい味わいがお腹のみならず心まで沁みゆくよう。
そして今宵のメインは、上州牛のすき焼き。ちょっと厚めにスライスされた、大ぶりの上州牛。牛脂で焼いて割り下で煮込めば、程よい甘辛さの中に牛の風味が凝縮され間違いのないおいしさに。
じゅうじゅう、ぐつぐつ。これ贅沢すぎるよなぁ。などと独り言を言いつつお肉や具材を地酒とともに愉しみ、その旨味が移った卵をご飯にかけて最高の〆に。年末のご褒美に独り酔いしれ、大満足で食事を終えます。
いやぁ、今夜もおいしかった。ほくほく顔で部屋へと戻ると、いつの間にか降りだした雪。夜の闇を舞う白さに寒さも忘れ、思わず窓から顔を出し天を仰いでしまう。
雪の舞う静かな夜。そんな贅沢な時間のお供に開けるのは、川場村の永井酒造の醸す水芭蕉純米吟醸。昨日の谷川岳と同じ蔵ですが、甘酸っぱさを感じさせるフルーティーな味わいで全く違った印象のお酒。
しんしんと降る雪に誘われ、居ても立っても居られず大龍へ。夜闇に浮かぶ大きな露天には白い冬の使者が舞い込み、この季節にしか味わえない幻想的な雰囲気に。
頬に当たる雪の冷たさを味わいつつ、湯の温もりに抱かれるという贅沢。春夏秋冬、それぞれ露天の良さはあるけれど、この至極の対比は冬だからこその味わい深さ。
大きな露天風呂で雪と戯れ、芯から温まったところで部屋へと戻ることに。降る雪の勢いは増し、先ほどまで見えていた地面もすっかり白銀の装いに。
水芭蕉片手に、舞う雪をぼんやりと目で追う静かな夜。そんな夜を一層味わい深いものとしてくれる、湯めぐりの愉しさ。雪の降る中、本館の湯屋へと向かいます。
石造りの浴槽と竹林が設えられた竹龍。暗闇の先には木の根沢が流れ、その気配を感じながら湯に浸かればいつしか心は空っぽに。
色々と考えごとの多い日々の中で、無心になれる瞬間が必要。その間というものを大切にしたいからこそ、こうして旅に出るのかもしれない。
そんな夜を彩る2本目のお酒は、倉渕は牧野酒造の大盃にごり酒原酒。どろりとした飲み口はどぶろくを思わせ、濃厚ながら飲み飽きないおいしいお酒。
ちびりとお酒を傾け、年の瀬を感じる静かな時間。一旦空っぽになった頭に浮かぶ、今年重ねた旅の記憶。これまでで一番旅できた年だった。その想い出たちを、旅先で振り返る。そんな贅沢な時間の仕上げは、夜闇に浮かぶ川龍で。
漆黒の世界から、絶えず耳へと届く沢の音。湯の温もりに抱かれ、夜気の心地よさを頬に感じ、響く川音に耳を傾ける。そんな穏やかな時間に、いまはただただ身を委ねていたい。
降っていた雪もいつしか止み、天を仰げば夜空に瞬くいくつもの星。
湯に浸かり、見上げる満天の星空。来て良かった。掛け値なしに、素直にそう思えるかけがえのない瞬間。こんな時間を、来年も過ごすことができますように。旅を取り戻した今年一年を振り返り、来年への願いを輝く星に託すのでした。
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