あれぇ?おかしいなぁ。4日前に東北から帰ってきたはずなのに、なんで東海道新幹線を待ってるんだろう。まあでもそんなどうでもいいことは気にしない!旅が僕を呼ぶ限り、僕はそれに応えたい。
品川駅を発ち、新横浜を経て順調に快走するのぞみ号。今回来たのは、初の乗車となるN700S。騒音や振動の少なさに、見た目はそれほどでなくとも中身は大きく進化していることが手に取るように判ります。
N700Sは相模湾を見送り、あっという間に静岡県へ。普段見慣れない車窓に目を輝かせていると、日本三大急流のひとつ富士川が。2か月前、身延山の麓でこの川を眺めたのがつい昨日のことのよう。そう長くない距離でこの川幅まで成長することを考えると、いかに暴れ川なのかが伝わります。
新幹線はさらに安倍川、大井川、天竜川と大河を越え浜名湖へ。ここまで来れば、もうすぐ愛知県。湯河原からここまで、毎度のことながら静岡県の広さを感じずにはいられない。
品川から僕にとって新鮮な車窓を満喫すること1時間半、1年ぶりとなる名古屋に到着。普段北上ばかりしているからあまり来る機会がないけれど、こうして訪れると意外と近いんだよな。
この日は土曜日。大勢の人で賑わう駅前をするりと抜け、名鉄百貨店へ一目散。お目当てのお店に着くと、案の定階段の踊り場までのびる行列。うわ、結構待つかな。そう覚悟しましたが、回転が速いため30分程で順番が。ずっとずっと来たいと思っていた、『矢場とん名古屋駅名鉄店』にお邪魔します。
並んでいるうちに注文を聞いてくれるため、席に着いて程なくしてロースとんかつ定食が到着。目の前で掛けてくれるみそだれの芳しい香りに、もう食欲MAX。ご飯とお味噌汁が運ばれてきたと同時に、居ても立っても居られずひと口。
うわっ!なんじゃこれ!べらぼうに旨すぎる!一見濃そうに見えるみそだれですが、軽めの粘度で甘さも思ったよりも控えめ。そのみそだれが程よく衣に浸み、ご飯があれよあれよというまに消えてゆく。
この後のことも考えロースとんかつにしましたが、これならおすすめのわらじとんかつでも全然いけちゃったよ。何なら、普通のとんかつよりも軽く食べられてしまう。この中毒性のあるみそだれ、名前の通りヤヴァとんだな!
東京八重洲にもお店があり、何度入ろうかと挫折しかけたか。でも今日まで待って良かった。やっぱり初めては、本場で味わってみたかった。その高まりきった期待をさらに超える旨さに、早くもこころは味噌色に。
矢場とんの余韻に浸りつつ、今宵の宿を目指すため近鉄名古屋駅へ。これから向かうは、松阪。そこまで遠い場所ではないため、今回は急行に乗っていくことに。
そういえば、近鉄の通勤電車に乗るのは中学校の修学旅行以来のこと。近鉄らしい塗装に思いきり鉄心を刺激されつつ乗り込めば、明らかに関東のものとは異なる空気感。それもこの車両、近鉄が初めてこの世に送り出したLCカーじゃん!
4扉にクロスシートが並ぶ車内、三角形の蛍光灯カバー。日本一の私鉄の世界観にときめいていると、電車は川幅一杯に水を湛える木曽川へ。1年前、この川の上流で出逢った想い出が懐かしい。
木曽川を渡り切ったかと思えば、すぐさままた大きな川が。長良川と揖斐川、仲良く並行する川を近鉄線は長大な鉄橋で一跨ぎ。
特急とはまた違った近鉄線の愉しさに揺られること1時間半足らず、松阪に到着。この駅に降り立つのは10年ぶりのこと。前回と変わらぬ駅舎の姿に、そんなに経ったものかと唖然としてしまう。
久々の再訪の感慨に浸るのも束の間、今宵の宿である『エースイン・松阪』にチェックイン。南口から徒歩1分、交通至便でお手頃価格の嬉しい宿。
ホテルに荷物を置き、ひと息ついたところで松阪の味に逢いにゆくことに。前回は松阪牛のすき焼きを食べたため、今回は違う地元の味をと『あみ焼き、鶏料理のぼやん』へ。本店に向かうと満席でしたが、すぐ裏手の3号店に予約を入れてくれそれほど待つことなく入店できました。
冷たいビールで喉を潤していると、注文した皮塩ポン酢が到着。見るからにこんがりと揚げられた鶏皮をバリっと噛めば、口中に広がる鶏の旨さと香ばしさ。せんべいのような軽やかな部分とポン酢に浸かりしんなりとした部分の楽しい対比に、ビールがぐいぐい進んでしまう。
続いては、メニューにずらりと並ぶ鶏刺しから。様々な部位があるなかで、見たことのない手羽さしを頼んでみます。手羽ってどうやって刺身にするのかな?そんな疑問に相方さんと首を傾げつつ待つことしばし、いざご対面。
艶やかで瑞々しさ溢れる身は弾力があり、じんわりとした旨味とともに甘味も感じる絶品な味わい。クセや臭みは全くなく、下手したら魚の刺身なんて食べている場合ではないとすら思えてくる。もともと鶏刺しは好きだけど、これには参った。このひと皿に、すっかり虜になってしまいました。
そしていよいよ、メインであるあみ焼きが運ばれてきます。今回選んだのは、若鶏に親鳥、そして肝。それぞれをしっかりとみそだれに絡め、熱々の鉄板の上に載せてゆきます。
まずは東京ではなかなか出逢えない親鳥から。しっかりとした身質は歯ごたえがよく、噛んでゆけばじゅんわりと染み出してくる濃い旨味。厚めの皮も弾力があり、若造には出せぬ滋味の塊といった力強い旨さに満ちています。
一方の若鶏は、ふっくらジューシー。じゅうじゅう焼き立てを頬張れば、これでもかと肉汁が溢れてきます。そして驚いたのが、肝の旨さ。このレバーは、これまで食べた鶏レバーの中で過去一かもしれない。
ほどよく焼けた肝は味噌の香ばしさをまとい、ふわとろの食感が堪らない。さらにしっかりとよく焼きにすれば、ホックホクのふくよかな味わいに進化。一緒に付いてきたハツもプリッとおいしく、使っている鶏がいかに新鮮かが伝わるよう。
そんな鶏を一層旨くしてくれるのが、絶妙な調合のつけだれ。赤みそベースですが濃すぎることなく、深いコクと心地よい渋味がお肉をしっかりと引き立てます。
いやぁ、心底旨かった。松阪牛は東京でも食べられるが、この鶏焼肉は現地でしか味わえない驚きの味。松阪に来たら、これ一択になってしまいそう。
昼間の矢場とんもそうだけれど、のぼやんのみそだれもこれまたヤバいな。早くも自分の深い部分が赤みそに浸食されはじめ、奥深い沼へとハマってゆくのを感じるのでした。
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