納豆好きには堪らぬ一皿に舌鼓を打ち、そろそろ沼田の街を離れる時間に。ここでしか味わえない唯一無二の余韻に浸りつつ、沼田駅へと向かいます。
初めて訪れたけど、良い街だったな。今日は時間の都合で外観だけの見学となった施設もあるので、これはまた来なきゃだな。そんな再訪の願いを胸へと宿し、国鉄型の頑張る上越線に乗り込みます。
新前橋で両毛線からの列車に乗り換え、さらに高崎駅からは上信電鉄へ。地方私鉄の情緒漂うホームに向かうと、そこには見慣れたあの車両が。この700形は、かつて北関東で大活躍していたJRの車両。職場は変われど今なお元気に走り続ける姿に、思わず嬉しくなってしまう。
僕の中で群馬といえば、湘南色の115系かこの107系。そんな思い出の車両との久々の対面に懐かしさを感じつつ揺られること13分、山名駅に到着。かわいらしい色に塗られつつも、歴史のにじみ出る木造駅舎。由緒正しき地方私鉄の香りに、何となく郷愁というものを嚙みしめます。
なぜここの駅まで来たか。それはずっと気になっていた神社があるから。初めて上信電鉄に乗ったときに線路下をくぐる参道と背後の立派な門を見て以来、いつか来てみたいと思っていたのです。
この山名八幡宮は、この辺りを治めていた山名氏が850年ほど前に宇佐神宮から勧進し創建された神社だそう。
上信電鉄の線路、白馬の祀られた隋神門、そして立派な朱塗りの鳥居の3つをくぐり手を清めるため手水舎へ。300年以上前に奉納されたという重厚な石造りの手水鉢には、目の覚めるような鮮やかさを放つ黄色の花が飾られています。
その隣には、躍動感ある猛々しい馬が。この神馬像は、全国に1万人ほどいるという山名さんの一族会が奉納したものだそう。
字は珍しいけれど読みは普通。そんな一般的な家柄の僕は鎌倉時代から続く氏の結び付きに圧倒されつつ、荘厳な佇まいの拝殿へ。表情豊かな人々や、軽やかに飛ぶ雀たち。躍動感ある緻密な彫刻に、自ずと目が奪われてしまう。
拝殿で初めてお参りすることのできたお礼を伝え、その脇からのびる道を奥へと進みます。するとそこに現れるのは、極彩色に彩られた優美な社殿。この本殿は、今から250ほど前に建てられたものだそう。
鮮やかな色彩美もさることながら、繊細なうつくしさを放つ見事な彫刻の数々。鳳凰、息、獏、唐獅子、蜃、象鼻と、6種の神獣がぐるりと社殿を護っています。
優美な彫刻を見上げつつ進んでゆくと、木製の大きな獅子頭が。山名八幡宮の象徴とされる獅子頭は、疳の虫や厄を喰い切ってくれるのだそう。後厄が明けたばかりの僕は、改めて日々の安寧をお願いします。
里に佇むお宮を包む静かな空気、社殿を彩る繊細な彫刻。そしてやっぱり、何故だか知らぬが八幡さまはしっくりくる。上信電鉄の車窓から見かけて以来ずっと気になっていた山名八幡宮で、また新たな高崎の魅力を知るのでした。
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