仲秋、信州、涼み旅。~しらほね色に染められて 2日目~ | 旅は未知連れ酔わな酒

仲秋、信州、涼み旅。~しらほね色に染められて 2日目~

9月下旬涼やかな白骨温泉かつらの湯丸永旅館で迎える静かな朝 旅の宿

白骨温泉で迎える静かな朝。障子から漏れる明るさに起こされ窓を開ければ、部屋へとふっと吹き込む信州の風。こりゃ、朝風呂にもってこいの爽やかさだ。すぐさまタオルを引っ提げ、誰もいない静かな露天へと向かいます。

9月下旬涼やかな信州白骨温泉かつらの湯丸永旅館1泊目朝食
東京ではまだ残暑厳しい日もあるなか、この涼しさが本当に身に染みる。鮮烈な山の空気に抱かれつつぬるい湯に揺蕩い、朝一から硫黄成分を存分に補給したところで朝食の時間に。

おいしそうなおかずに目移りしつつ、まずは白骨温泉名物の源泉で炊いたおかゆから。ひと口含めば、その豊かな味わいが十年ぶりのなつかしさとともに広がってゆく。

飲泉ではクセを感じる源泉も、おかゆにすると最上のだしとして昇華。ほんのりと、極ほんのりと香る卵のような優しい香り。とろとろのお米の甘味を引きたてるのは、塩気とは異なる若干のミネラル感。青菜やじゃこ、梅といった自家製のふりかけをかければ、延々と啜っていたいと思えるおいしさに。

本当に不思議だよな。3度目にしてなお驚いてしまう源泉の変化を愉しんだあとは、つづいて白いご飯へ。甘辛いわかさぎの甘露煮や、手作りの温もりを感じるきんぴらごぼう。そんなおいしいおかずとともに、おひつ丸ごと完食します。

9月下旬涼やかな信州白骨温泉かつらの湯丸永旅館朝食後にのんべんだらりと微睡む甘美な怠惰という至福
おかゆを含めたら、お茶碗4杯だもんな。さすがに食べすぎだと敷きっぱなしの寝床に転がれば、体がぐっと布団へと押し込まれてゆくような重たさが。

あ、これ、来たわ。こうして連泊すると、驚くほど体が反応する温泉に出逢うときがある。その感覚は大きく分けて二通り。下部のような日頃の疲れが跡形もなく霧散してしまう湯もあれば、須川のように奥から疲れをぐいぐいと押し出し駆逐するようなものも。

あぁ、動けない。須川高原温泉ほどのつらさはないが、何となく起きたくないし起きられない。背中と布団が接着剤で貼りつけられたような感覚に包まれつつ、夢と現の間を行ったり来たり。今回初めて白骨に連泊したけど、あの穏やかなにごり湯に秘められた力は強力なんだな。

9月下旬涼やかな信州白骨温泉かつらの湯丸永旅館午前の青空に透かされレースのようなうつくしさを魅せる露天風呂を覆う桂の葉
8時過ぎから寝床に拘束され、途中おもりのような体を奮い立たせて歯みがきを済ませ。そしてふたたび微睡みと覚醒を繰り返すこと11時過ぎ、ふっと糸が切れたように心身が軽くなる瞬間が。

前回も感じたことですが、ぬるめながら長湯厳禁だと本能的に察知する白骨の湯。やっぱりすごかったんだ。でもこれは、連泊したからこそ体感できたこと。日々のあれこれがすっかりと押し流され、軽やかな足取りで露天へと向かいます。

9月下旬涼やかな信州白骨温泉かつらの湯丸永旅館混浴露天風呂から仰ぎ見る信州の爽快な青空と流れる白い雲
そんな心身の変化を映すかのように、鮮烈な青さに染まる空。すぐそこを、かすめるように流れゆく白い雲。午前の陽射しに透かされ、レースのような繊細さを魅せる桂の葉。

9月下旬涼やかな信州白骨温泉かつらの湯丸永旅館連泊の昼食はアルピコプラザ地下の藤屋バスターミナル店で買った野沢菜と切干大根のおやき
あの瞬間、正反対へと舵を切った心身の調子。日頃の疲れが強制的に抜き出され、急激に襲い来る空腹感。信州の清々しさに抱かれつつの湯浴みを終え、部屋へと戻り昼食をとることに。

松本駅前のアルピコプラザ地下にある、昭和初期から続くという老舗の和菓子屋さん藤屋。ずらりと並ぶ信州名物のおやきのなかから、迷った挙句切干大根と野沢菜の2つを選択。

こちらのおやきは、焦げ目のないおまんじゅうタイプ。和菓子屋さんならではのふんわりしっとりとしたほんのり甘い生地、中には雪国らしさを思わせる甘辛に味付けされたたっぷりの具。これがヱビスの濃い苦味によく合い、昼間から上機嫌になってしまう旨さ。

9月下旬涼やかな信州白骨温泉かつらの湯丸永旅館午後の陽射しのなかたっぷり揺蕩う結晶を愛でつつ浸かる白きにごり湯
効果てきめんとは、こういうことか。午前中のあの怠さはどこへやら、すっかり影も形もなくなってしまった。それもそうか、こんなに成分の濃い湯なのだから。ゆらゆらと、湯面を流れゆく無数の結晶。その姿をぼんやり見つめ、自然のもつ力の強さというものを嚙みしめる。

9月下旬涼やかな信州白骨温泉かつらの湯丸永旅館2泊目夕食
浸かっては転がり、微睡んではまた浸かり。そんな贅沢な怠惰に揺蕩っていると、あっという間にもう夕食の時間。愉しい時間というものの逃げ足の速さに唖然としつつ、食堂へと向かいます。

さっそく地酒を注文し、今宵もおいしい時間のはじまり。優しい味わいのきくらげの卵とじや凝縮感ある鴨ロース、熱々ほくほくの海老とほたての陶板焼き。サーモンの刺身はクセがなく、じわっと広がる上品な脂の甘味と深い滋味がこれまた美味。

9月下旬涼やかな信州白骨温泉かつらの湯丸永旅館2泊目夕食揚げたて熱々カラッとほっくほくの岩魚のから揚げ
おいしい品々にお猪口を傾けていると、揚げたて熱々の岩魚のから揚げが。表面からっと、中ほっくほく。淡水魚ならではの繊細な旨味の宿ったエキスがほとばしり、骨ごと食べられる頭やしっぽの香ばしさもまた堪らない。

9月下旬涼やかな信州白骨温泉かつらの湯丸永旅館2泊目夕食温泉粥コロッケ
つづいて運ばれてきたのは、こちらも揚げたての小さなコロッケ。朝にも味わった温泉粥を使ったライスコロッケだそうで、興味津々で頬張ります。

さくっと軽やかな衣から、とろりとあふれる優しい旨さ。刻んだねぎが加えられ多少味つけもされているとは思いますが、なんとも出汁感のある深い味わいに。この華麗なる変身には驚かされた。これ、あと十個は食べたい。優しくも心を掴む逸品に、連泊して大正解だったと思わずひとりほくそ笑む。

9月下旬涼やかな信州白骨温泉かつらの湯丸永旅館2泊目大満足の夕食の〆は白いご飯とお吸い物
旨い品々に信濃の酒も尽きたところで、そろそろ〆ることに。ちょっとばかり残しておいたサーモンや卵とじとともに味わう、白いご飯。そのお供には、上品な塩梅のとろろ昆布と干しえびのお吸い物。

9月下旬涼やかな信州白骨温泉かつらの湯丸永旅館夜のお供にアルプス正宗純米大吟醸生貯蔵酒
1泊目は十年前と変わらぬ想い出の味、そして今夜はまた雰囲気を異にする趣向を凝らしたお皿たち。連泊だからこその醍醐味に心酔し、大満足大満腹で自室へと戻ります。

あとはもう、残された時間を湯と酒に預けるだけ。そんな夜のお供にと開けるのは、松本は亀田屋酒造店の醸すアルプス正宗純米大吟醸生貯蔵酒。とろりとなめらか、舌に広がるここちよい甘酸っぱさ。ですが後味べたつかず、するりと飲めるおいしいお酒。

9月下旬涼やかな信州白骨温泉かつらの湯丸永旅館夜電灯に照らされ情緒を増す夜の露天風呂
本当に、信州の酒はどれを飲んでも旨いものばかり。水の良さ、米の良さを感じさせる味にほんのり酔いを感じたところで、静けさに包まれた夜の露天へ。

9月下旬涼やかな信州白骨温泉かつらの湯丸永旅館白い湯から硫黄の香り宿る湯けむりが立ち上る夜の幻想的な露天風呂
ひんやりと頬に感じる冷気、全身を包む絶妙な塩梅のぬるめの湯。灯りを映し揺らめく湯面、そこから立ちのぼる湯けむりに存分に宿る硫黄の香。はぁ、ずっとこんな夜が続いてくれたら。そんな叶わぬ願いが頭をよぎるとき、それは間違いなく豊かな時間を過ごしているという証。

9月下旬涼やかな信州白骨温泉かつらの湯丸永旅館夜のお供に五一わいん信州メルロ
ゆっくりと、しかし着実に更けゆく夜。そんな時間を彩るべく、つづいて開けるのは塩尻は林農園の五一わいん信州メルロ。含めばとろりとまろやかコク深く、ぎゅっとした果実味のなかに感じるほどよい酸味や渋味が心地いい。

9月下旬涼やかな信州白骨温泉かつらの湯丸永旅館濃い成分による析出物に覆われ独特の表情を魅せる貸切風呂
これまで出逢った信州ワインとは、また異なる表情をもつおいしいワイン。これだから、信州という奴は。訪れるごとに、新たな魅力を教えてくれる。逢瀬を重ねるごとに、その深みへとどんどんはまってゆく。

9月下旬涼やかな信州白骨温泉かつらの湯丸永旅館貸切風呂に満たされる小梨の湯源泉のうつくしい乳白の湯
十年前は、この白濁の湯に込められた力には気づけなかった。今回連泊してみて、初めて知ることのできた白骨の不思議な湯力。またひとつ、危ない場所が増えてしまった。心身の芯までやさしく染めあげる白濁の湯に抱かれ、改めて自分好みであると確信してしまうのでした。

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