秋晴れに輝く浜名湖の青さを全身に浴び、遠鉄バスで浜松駅へと戻り今宵の宿へ。北口から南口側へと線路をくぐり歩くこと3分、『ホテルセレクトイン浜松駅前』に到着。
今回予約したのはツインルーム。大浴場がついて素泊まりでひとり5000円を切るという何とも嬉しい価格。お部屋も広さは十分にあり、このお値段でいいのかと心配になるほど。
窓の外を見てみれば、それは見事なトレインビュー。16両編成の新幹線が数分おきに行き交う姿に、東海道の需要の旺盛さを感じます。
大浴場で旅の汗を流し、良き時間になったところで浜松での宴を愉しむことに。市内にいくつか店舗を構える『遠州男唄濱松たんと』の有楽街店にお邪魔します。
このお店は人気店のようで、訪れたときは満席。15分ほどで入店できほっとしつつビールを喉へと流していると、お通しの浜名湖海苔のかかった冷奴が運ばれてきます。
淡水と海水の混じり合う汽水湖である浜名湖。風味よく、それでいて磯臭さのない海苔。その旨味とほのかな塩分が豆腐を彩り、優しい味わいがふわっと口へと広がってゆく。
まず初めに注文したのは、浜松といえばの餃子。ご縁焼餃子は7個単位で個数を選べ、今回は他のメニューも食べたかったため14個を注文。もっと多い個数だと、浜松餃子といってイメージする円盤焼きで出てくるようです。
毎年毎年、宇都宮と消費量を争うほどの名物である浜松餃子。焼き立て熱々、猫舌の僕は覚悟を決めいざひと口。薄めの皮はパリっとこんがり焼かれ、中にはたっぷりのキャベツを中心としたあっさりめの餡。野菜の甘味に豚が旨味を添え、軽快な旨さにいくらでも食べられてしまいそう。
続いて注文したのはこの2品。浜名湖海苔の出し巻きは、穏やかなだしに香るほんのりとした生海苔が美味。そして驚いたのが、かつを刺身。
分厚く切られた、びかびかと光る見るからに旨そうな腹側をひと口で。ちょっとこれ、今まで食べたかつおと違う。本当に新鮮なのでしょう、皮もついて脂ものっているのにまったくクセがない。噛めば噛むほど皮目から旨味が広がり、かつお好きとしては堪らん味わい。
続いて、こちらも分厚い背側を。もっちもちの食感とともに広がる、赤身ならではの滋味深い旨味。あまりの旨さに、思わず目を瞑り大きく深呼吸をしてしまう。
いつもなら日本酒にするところ、今日はホッピー気分。軽やかな飲み口に合わせようと、郷土の味だという遠州焼きを追加。もちもちの生地にはたくあんが混ぜ込まれており、コリっとした食感と漬物ならではの旨味がいいアクセントに。味付けも控えめで、お好み焼きとはまた違った印象の初めての味。
ホッピーの中をおかわりし、続いて注文した濱松ホルモンを。しっかり旨味をもった、歯ごたえのよいホルモン。それをより旨くしてくれるのが、赤味噌ベースの味噌だれ。甘すぎず、コク深く。もやしとともに噛みしめれば、ホッピーの速度があがってしまう。
恐るべし浜松。昼に続き夜もその旨さに圧倒され、大満足でお店を後にします。街角には、昭和3年生まれの重厚なコンクリート建築。夜空に浮かぶ荘厳な姿に、来てよかったと旅の愉しさを噛みしめる。
途中駅のお土産屋さんで夜のお供を買い込み、部屋に戻り宴の続きを。まずは静岡市の静岡平喜酒造の醸す喜平純米酒。平成24年にできたという新しい酒蔵の醸すお酒は、水のきれいさとお米の味わいを感じる旨い酒。
続いて開けるのは、地元浜松の花の舞純米酒。これまで何度か飲んだことのある酒蔵ですが、久しぶりに飲んでみるとなんだか印象が違う。純米酒らしい旨味を感じつつ、するりと入ってゆく飲みやすさ。
本当に、今日は充実した一日だったな。前夜に急遽思い立ち、半ば勢いで訪れた初の浜松。食べるものは皆おいしく、浜名湖のうつくしさを胸に刻み。なんでこれまで、来なかったんだろう。疾走するのぞみを眺め、ここは通過するにはもったいない街だと強く強く思うのでした。
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