ありがとう、らいらっく。今回も本当に良い時間を過ごさせてもらいました。また絶対、次も逢おう。ボーディングブリッジから振り返り、もう一度だけありったけのありがとうを伝えます。
敦賀フェリーターミナルから敦賀駅へは、船の時間に合わせて連絡バスが運行。船が着き乗車が完了次第出発するため、下船後はバスへと直行した方が良さそう。ちなみに最初は歩いて移動しようかと考えていましたが、途中狭いトンネルもあり徒歩は危険。徒歩乗船の場合はこのバスを利用しましょう。
連絡バスに揺られること15分、人生初の敦賀駅に到着。今春に東京から北陸新幹線がつながったばかり。それがまさかこんな形で、海からここへと初上陸することになろうとは。
駅に到着したのはまだ6時前。ですが隣接するオルパークの待合室がその時間から開いているため、置かれた観光パンフレットで予習しつつしばらく時間を潰させてもらいます。
そして迎えた、午前7時。なぜこの時間まで待機していたか。それは、味わいたい朝食がここにはあるから。待合室の奥に位置する『気比そばあまの』へとお邪魔します。
古くから氣比神宮の門前町、そして海路陸路の交通の要衝として栄えた敦賀の街。船が北の海からこの地へともたらした昆布の加工品が名産だそうで、それならばとおぼろそばを注文。
こじんまりとした駅そばスタイルのため、さっとそばを温めてあっという間に完成。丼を受け取りカウンターへと向かう道すがら、もうすでに鼻をくすぐるだしの香り。
東京もんの僕としては、驚きの薄い色をしたおつゆから。うわぁ、沁みるぜこれは。薄口ベースで、ほんのり甘め。ですがおだしが効いているので、味が薄く感じることはありません。
続いて黒めの太いそばと一緒に啜れば、食べ応えある麺と程よい塩梅のおつゆの絶妙な相性に驚かされます。そして何より衝撃を受けたのが、おぼろ昆布のものすごい旨さ。
メニューにも書いていましたが、これは敦賀の職人さんが包丁で手がきしたものだそう。ふんわりと薄いおぼろ昆布は口溶けがよく、するりと溶けたかと思えば濃密な昆布の旨味がぶわっと広がる。それでいて、ありがちな昆布臭さのない上品さ。
関東では出会うことのない薄口のおだし、存在感ある太いそば。そして僕の知っていると思っていたものとは次元の違う、絶品のおぼろ昆布。それらが三位一体となり、するするとなだれ込む旨さにあっという間に完食。
これは開店まで1時間待った甲斐があったわ。寄港便で敦賀入りするなら、絶対におすすめ。しょっぱなから福井の味に歓迎され、いよいよ敦賀の街歩きへといざ出発。
敦賀の街を回るならレンタサイクルが便利ですが、せっかくの初めての街、自分の足で確かめることに。駅のコインロッカーにリュックを預け、折りたたみ傘と飲み物だけ持ち身軽な状態で歩きはじめます。すると道中には、明らかに歴史のありそうな銭湯が。こんな街の表情に出逢えるのも、のんびり歩きだからこそ。
まず目指すのは、気比の松原。オルパークでもらった地図を頼りに歩いてゆくと、笙の川に架かる松原橋へ。橋上から望む、雲が生まれる幻想的な光景。黒々とした山並み、モノクロームの世界に色を差す赤い欄干。目の覚めるような対比に、思わずハッと息を呑む。
駅から初めての街並みを味わいつつ歩くこと30分ちょっと、松島町交差点に到着。ここから松林へと入り、朝の森林浴を愉しむことに。
日本三大松原のひとつに数えられる、気比の松原。34万㎡に渡り、鬱蒼と繁る赤松や黒松。時刻はまだ8時前、ときおり散歩の人とすれ違うくらい。静けさの中、緑の放つ潤いある空気を胸いっぱいに吸い込みます。
みずみずしい松林を歩いてゆくと、ついに姿を現す敦賀湾。松越しに望む穏やかな海に、船上で過ごした時間が甦る。
東西1.5㎞に渡り、白砂青松が続く気比の松原。この時間だからか、それとも天候か。今はひっそりとしていますが、夏は海水浴場として多くの人で賑わうそう。
鏡のように、穏やかな顔をした敦賀の海。耳へと届く、寄せては返す波の音。その響きすら優しくまろやかで、静に支配されたあまりの空気感に呆然と立ち尽くす。
すぐそばに海の気配を感じつつ、のんびり歩く静かな松原。敦賀という大きな街にぽつんとここだけ、時が止まったかのような空気が流れる。
らいらっく、遠路はるばるここまで連れてきてくれてありがとう。初めての敦賀、おかげさまで早速満喫しているよ。
どこまでも穏やかな海の先に佇むあの船へ、そう感謝を伝えずにはいられない。上陸してから3時間、早くも感じ始めた街の魅力。僕にとって初めてとなる敦賀の街歩き、まだまだ先へと続きます。
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