しみじみ浸る、岩手の秋。~想い焦がれて東北へ 1日目 ①~ | 旅は未知連れ酔わな酒

しみじみ浸る、岩手の秋。~想い焦がれて東北へ 1日目 ①~

久々の旅立ちの地、東京駅赤レンガ駅舎 旅行記

旅することすら叶わぬ日々を抜け、ようやく迎えたこの瞬間。よし、今なら旅を愉しむことができそうだ。久々に味わうこの感覚を胸に灯し、ここ東京駅から旅立ちます。

E5系やまびこ号は東北へ
ホームに佇むのは、いつものE5系。この相棒に乗車するということは、向かう先はもちろん愛する東北。久々の旅先はと考えた時に、迷いなく選んだ僕のこころの故郷。最後に訪れたのは去年の2月。1年8ヶ月ぶりとなる逢瀬を目前に、旅立つ前から目頭が熱くなってしまいそう。

E5系やまびこ号車内で味わうスプリングバレー豊潤
行列に紛れて自席に座り、今か今かと待ちわびる。するとやまびこ号は音もなく東京駅を滑り出し、ホームを行き交う大勢の旅人を滲ませるかのように徐々に速度を上げてゆく。その姿も見えなくなったとき、居ても立っても居られずこいつをプシュッと。あぁ、幸せだ。視界が久々に色味を帯びゆく様を、心地よい苦みと共に噛みしめます。

10月下旬曇天の荒川をやまびこ号で越えて東京脱出
見慣れた雑多な街を縫い、北へと針路をとるやまびこ号。空が広くなったかと思った刹那、待ち望んだこの瞬間。東京脱出。僕がこのブログで好んで使う言葉ですが、この意味をこんなにも噛みしめることになろうとは。

E5系やまびこ号車内で味わう東北福興弁当
大宮駅も過ぎたころ、続いて開ける愛宕の松。むすび丸、今回は通るだけだけど、また今度逢いに行くからね。そんな願いを抱きつつ、11ヶ月ぶりとなる駅弁を。今回は、JR東日本フーズ(旧NRE)の調製する東北福興弁を選んでみました。

東北福興弁当中身
ふたを開ければ、ぎゅっと込められた東北6県の恵みたち。まずは左上の宮城から。揚げかまぼこである遊里揚は、すり身の弾力と豊かな旨味が印象的。のり佃煮には三陸産の花こえびが載せられ、ご飯との相性も抜群。

その下は、これから向かう岩手。北三陸産わかめと玉葱のかき揚げは、ほんのりとした磯の香りと甘味が広がります。鮭の味噌漬け焼きには県産大豆を使った味噌が使われ、ぎゅっと凝縮された旨味と香ばしさが愛宕の松を誘います。

続いて真ん中の仕切りの上段、青森へ。キャベツ炒めは県産のにんにく入り塩麴で味付けされ、派手さはないながらもぶわっと広がる風味が美味。青森名産の帆立は生姜味噌煮にされ、ほろりと崩れる身と共に旨さが染み出します。

下段は秋田のエリア。鶏肉揚げ煮の味付けには鮭しょっつるが使われ、鶏と魚醤の旨味の相乗効果により豊かな味わいに。添えられたハタハタの甘辛米麹和えもおいしく、愛宕の松が止まりません。

続いて右上は山形。いも煮風炊き合わせには県のメーカーのとび魚だしが使用され、それぞれの食材の旨味をひとつにまとめてくれています。そして山形と言えばの玉こん。生芋ならではの心地よい弾力が旨いのひと言。

そして右下、福島へ。揚げなすにはいわきのトマトと会津のヨーグルトのソースが掛けられ、浜通りと会津の融合した甘酸っぱい風味がたまりません。県産の紫花豆甘露煮は天ぷらにされ、油のコクが豆のホクホクを一層味わい深いものに。

旨いつまみで地酒を味わい、腹固めにご飯を。白ご飯には宮城のお米が使われ、駅弁とは思えぬもちもち感。駅弁のご飯、昔とは比べ物にならないほど、おいしくなったよなぁ。

その上に載せられた、白ご飯を一層旨くするご飯のお供たち。大葉入り会津味噌はコク深い旨味がご飯の甘味をより引き立て、金華さば焼きは脂ののりが最高。山形のヤーコン粕漬は、シャキッとした食感が楽しいアクセントに。

右側の茶飯は青森のさめだしと秋田の比内地鶏スープで炊き込まれ、ふくよかな味わいがお米ひと粒ひと粒に染みています。そこに岩手の佐助豚の焼肉が載せられ、豚の脂の甘味と茶飯の相性もバッチリ。

あぁ、旨かった。最後に青森のりんご甘煮と福島の若桃の甘露煮をデザートにし、大満足で蓋を閉じます。このひと箱に、ぎゅっと詰まった想い出の旅先たち。食材には地元の企業のものが使われており、今回訪れることの叶わなかった5県へと想いを馳せつつ食後の余韻に浸ります。

麓に霞みを横たえる福島の吾妻連峰
愛宕の松も無くなるころ、気が付けばもう東北入り。福島駅の手前では、雄大な吾妻連峰の姿が。頂に白さを載せ、麓には霞を横たえる。まるで水墨画のような幻想的な光景に、玉子湯での想い出を重ねてみます。

10月下旬やまびこ号車窓から望む蔵王山
やまびこ号はすぐに長いトンネルに入り、抜けたと思ったらもう宮城県。車窓には蔵王山が現れ、あの麓で味わった青根の熱い湯の感触が甦るかのよう。こうして車窓を眺めるだけで、数々の想い出が浮かんでくる。それだけ東北を旅できている自分は、間違いなく幸せ者。

10月下旬の新花巻駅
豊かな車窓に、旨い駅弁とワンカップ。そんな列車旅の醍醐味ともいえる贅沢を満喫すること3時間ちょっと、この旅最初の目的地である新花巻に到着。久々に降り立つ東北の地に、思わず涙がこぼれてしまいそう。

新花巻駅から花巻南温泉峡無料送迎シャトルバスに乗車
感慨に浸りつつ駅前のお土産屋さんで地酒を買い込み、花巻南温泉峡へと向かうシャトルバスに乗り込みます。宿に予約すれば宿泊者は無料で乗車でき、時刻は『花巻の観光協会HP』で調べられます。

北上川にそそぐ鮭の遡上する花巻の小川
バスは大河北上川を渡り、川に沿って市街地へと進みます。すると見覚えのある光景が。そうだ、6年前にこの小川でサケの遡上を目の当たりにしたんだっけ。15年表彰でもらった長い休みで訪れたあの旅が、昨日のことのように思い出されます。

10月下旬秋の花巻雲に霞む西日と田園風景
花巻駅を経由し、長閑な田園風景の中バスは温泉峡目指して走ります。目指すは僕の大好きなあの宿。久々の旅先にと真っ先に浮かんだ、僕にとって大切な想い出の地。これから過ごす穏やかな時間に思いを馳せ、雲に霞む西日をぼんやりと眺めるのでした。

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