展望台から戦場ヶ原の悠久の眺めを味わい、最寄りのバス停である三本松から『東武バス』の日光駅行きに乗車。もちろんこのバスもフリーパスのエリア内なので、乗り降り自由。本当にお得で便利なキップです。
バス停3つ分、あっという間に竜頭の滝バス停に到着。僕はこの先も歩くつもりのためこのバス停まで来ましたが、手前の滝上バス停からは流れ落ちる竜頭ノ滝に沿って遊歩道が整備されているようなので、そちらで降りて散策してもいいかもしれません。
日光三名瀑のひとつとして数えられる、竜頭ノ滝。大きな岩によって二手に分かれる流れを竜の頭に見立て、この名が付けられたそう。葉の落ちたこの時期には奥の階段状の渓流瀑まで見渡せ、その姿は長い胴を持つ牙をむいた龍のように見えます。
勇壮な竜頭ノ滝に別れを告げ、車道を歩き中禅寺湖畔へと進みます。シーズンにはキャンプを楽しむ人々で賑わうという、菖蒲ヶ浜。間もなくやってくる雪の季節を控え、その賑わいを微塵も感じさせぬほどひっそりと静まり返ります。
人もまばらな湖畔の遊歩道を、湖水を愛でつつのんびり散策。すると前方には、大きな赤屋根が印象的な渋い建物が。この中禅寺湖畔ボートハウスは、戦後すぐに建てられたリゾート施設を復元したもの。営業期間中にはデッキでの休憩や、古き良き時代のボートの見学もできるそう。
残念ながらこの時は閉館中。ですが眼前に広がる清々しい眺めに誘われ、僕もしばらくの小休止。火山に囲まれていることを教えてくれるように、五色に彩られる無数の小石。ゆったりとした中禅寺湖の波がカラカラと繰り返し洗う様を、時を忘れて聴くひととき。
うん、いい。この時期の中禅寺湖は初めて訪れましたが、観光客で賑わう季節では決して味わえない静寂という贅沢。稀にすれ違う人々もどことなくのんびりとした気配を漂わせ、観光地がようやく取り戻した平静というものを垣間見たような気がします。
砂利を洗う水の音と、湖面に揺れる淡い初冬の陽に戯れる静かな時間。今の季節だからこその静けさを胸いっぱいにしまい込み、更に湖岸を歩き二荒山神社中宮祠へと到着。
日光三山を御神体として祀る二荒山神社。中宮祠はそのひとつである雄々しい男体山を背負うように建ち、静かな中禅寺湖を見守り続けています。
立派な拝殿の横には、男体山山頂に位置する奥宮へと続く登拝道の入口が。この時期はその門は固く閉ざされ、単なる登山道ではない古くから続く山への畏怖の念を感じさせるよう。
山と湖の気配を前後に感じつつ、荘厳な拝殿にお参りを。その隣には、推定樹齢1100年以上という立派ないちいの木が。この中宮祠が建立されて間もない頃から、このお宮を静かに守り続けています。
日光の持つ深い歴史と懐に抱かれ、更に歩みを進めます。そのまま華厳の滝方面へは向かわず、中禅寺湖に沿って南方向へ。しばらく歩きふと振り返れば、豊かな湖水を治めるがごとく聳える男体山の力強い姿が。
背中に男体山の雄々しさを受けつつ、立木観音方面へ。まずはお参り前に腹ごしらえ。今回は湖畔に位置する『桝屋 味処』にお邪魔します。
こちらでは中禅寺湖で獲れる淡水魚も味わえるようですが、今回僕が最後の日光グルメにと選んだのは、やっぱりゆばそば。もうすっかり日光湯波のファンになってしまったようです。
まずはメインのおそばをひと口。太目でそば粉感をしっかりと感じる僕好みの田舎そば。おつゆも濃すぎず薄すぎずで、中央に載せられた大ぶりの湯波の煮物の風味を邪魔しません。一緒に合わせられた白きくらげの食感もいいアクセントに。
生湯波のお刺身はとろりとした濃厚な豆の旨味が美味しく、そして印象的だったのがからりと揚がった天ぷら。湯葉の天ぷらはパリッと香ばしく、奥から大豆の香りが追いかけてきます。田せりの香りも爽やかで、添えられたお塩で食べても美味しいですが、おそばに載せるとまた違う味わいを楽しめます。
本音を正直に書くと、入店時は失礼ながら全く期待していませんでした。本当に申し訳ないですが、鄙びたお土産屋さんに併設された食堂といった印象でしたから。でもやっぱり外見だけで判断してしまうのはいけない。今一度そう気付かせてくれました。
派手さはありませんが、きちんとしている。観光地でそれを守っているお店って、意外と少ないもの。煌めく中禅寺湖を眺めつつサクサクの天ぷらに舌鼓を打ち、穏やかな昼食をのんびりと味わうのでした。
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