初めて訪れる首里城。随所に感じられる王国の気配に圧倒されつつ、漏刻門をくぐります。この漏刻とは中国語で水時計のことを指すようで、当時はここに水槽を置き、漏れる水の量で時刻を計りお城の内外に知らせたそう。
続いて現れたのは、朱塗りが印象的な広福門。これまでの石積みの楼門とは違い、この長屋状の建物自体が門としての役目を果たしています。
門を抜けて振り返れば、この雄大な眺め。眼下には優雅な曲線を持つ城壁と独特の楼門が連なり、遠くには那覇の街並みと海を一望のもとに。雨に霞むその光景を、古の時代に思いを馳せつつしばし眺めます。
正殿の手前に控える下之御庭に設けられた券売所で入場券を買い、いざ正殿へ。そこへの最後の砦として構える奉神門の存在感に、まだ見ぬ景色への期待が一層強まるよう。
門をくぐると、艶やかな装飾を施された正殿とその前に広がる御庭。何故か初めての気がしない。そうだ、子供の頃に行った紫禁城に似てるんだ。慣れ親しんだお城との明らかな世界観の違いに、やはりここが独立した王国であったことを強く感じます。
建物内部は撮影禁止のため、この眼を通して記憶へと焼き付けます。歴代国王の肖像や、御差床と呼ばれる豪華絢爛な玉座に漂う、異国の香り。僕の何かに訴えかける、独特の空気感。自分の知らなかった部分を呼び起こしてくれるからこそ、こうして毎年琉球の地を訪れるのかもしれない。
初めて訪れた首里城で感じる、震えにも似たこころの共鳴。やっぱり沖縄、好きだなぁ。単なる南国リゾートではない、今も残る濃厚な世界観。鮮やかな景色や味覚だけではなく、この地を包む独特な空気こそが沖縄を沖縄たらしめているのでしょう。
極彩色の余韻に包まれつつ、城外へ。石垣沿いに歩いてゆくと、モノクロームの世界の中佇む久慶門が。様式が違えど、お城はお城。城主を守るために施された知恵と贅に触れ、城郭という建築の奥深さに今一度魅かれてしまう。
雨の名残を色に残す、黒々と連なる独特の石垣。進むごとに変えるその表情を噛みしめつつ、城壁沿いの道を進みます。
初めて訪れた首里城。そこに広がるのは、大陸と日本を融合させた独特な世界観と、優雅な曲線美。僕の中でその象徴ともいえるこの石垣の優美さを、最後にもう一度目に焼き付けます。
この旅で初めて訪れた本島。八重山を包む空気感とはまた違った味わいに、沖縄という地の深みにはまってしまいそう。鮮やかな首里の余韻に酔いながら、旅の終わりを噛みしめるのでした。
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