善光寺で貴重な時間を過ごした後は、美味しいものを楽しむことにします。まずは地酒。善光寺を出てすぐの場所にある、『西之門よしのや』に立ち寄ります。ここは地酒や味噌の販売のほか、それらを楽しめるレストランにギャラリーなど、たくさんの施設があります。
いかにも古いつくりの通路がきれいにライトアップされなんとも言えないいい雰囲気を醸しています。歴史ある雰囲気に、これから出会う地酒に期待が膨らみます。
ここでは各種地酒の試飲もでき、もちろん僕もいただきました。特に純米にごり酒はにごり酒の中でも濃厚で、どぶろくに近い雰囲気を持つなかなか味わえない特徴を即気に入り、お土産としてゲットしました。
続いては味噌の『すや亀』。ここは前回来たときにお昼を食べました。信州といえば味噌!ということで、この直売所奥にある食事処では自慢の味噌を活かしたメニューをいただくことができます。
特に焼きむすび籠はおススメ。味噌の香ばしい焼きおにぎりに何品かのおかず、そしてお味噌汁は数種類から選べ、おかわりもできるという嬉しいもの。もちろん老舗の味噌やさん、その美味しさは間違いありません。
今回もその香ばしさを楽しみにやってきましたが・・・、なんと時間が早すぎて食事メニューはまだとのこと。うぅん、残念。この後の予定もあるので泣く泣く諦めました。おススメのお店なので、今回は食べていませんがご紹介しました。
ならば信州といえば蕎麦!ということで、こちらも前回立ち寄った『油や』で昼食を。駅から1分という立地の良さで、この後乗る長電の時間に合わせて一杯やることにしました。
その立地の良さから、サラリーマンから観光客まで来るわ来るわ、あっという間に満席になってしまいました。そのため写真を撮るような雰囲気ではないため今回は割愛させていただきます。
ここは昼からつまみメニューも豊富で、純米の地酒も種類があり、のんべぇには持ってこい。僕は長野名物野沢菜ときのこおろしをあてに2合ほど嗜みました。
〆にはもりそばを注文。ここはもちろん手打ちの蕎麦で、ランチ時ピークのこのときは、打ちたてのそばが作業場からどんどん運ばれていました。
のど越しがよくコシのあるツルっとしたそばはとても美味しく、つゆも甘すぎず僕好み。量も東京のお上品なものとは違い、しっかり満足できます。長野で地酒とそば、いいですねぇ。
お腹も満足したところで、長電長野駅に向かいます。長電の駅は地下にあり、その入り口には湯田中行き特急ゆけむり号の看板が掲げられています。
こちらが今回乗車する『ゆけむり号』。この車両は小田急電鉄から譲渡されたもので、超短い4両編成(特殊な車両なので、普通の電車の2両ちょっとの長さ。)に短縮されています。
塗装はちょっとだけ変わったものの、車内の座席から表示まで小田急時代そのままで、ここが新宿駅かのような錯覚を覚えます。譲渡されてだいぶ経ちますが、長電はしっかり手入れしきれいに使っており、嬉しさを覚えます。
特急料金は100円で全席自由席。このゆけむり号に乗れば渋温泉の玄関口、湯田中駅まで乗り換え無しで連れて行ってくれます。
なんだかこの行き先に「はこね」や「さがみ」と書かれていないのが妙な気分。それくらい小田急ロマンスカーそのものです。それもそのはず、この車両は小田急でも現役で走っています。同じ車両が箱根と長野の違う会社で走っている、面白い現象です。
そしてロマンスカーといえばこの展望席。ここも自由席なので早めに並べば座ることができます。長電は地方の鉄道によくある「時間になったら改札開始」というスタイルですが、駅員さんに展望席の乗車口で待ちたい旨をお願いすれば快く早めにホームに入れてくれます。
小田急時代では見ることのできない地下走行区間の眺め。狭くて暗いトンネルをクネクネとすり抜けていく眺めに思わずテンションが上がってしまいます。小田急でも複々線化が完成すれば、同じような眺めを楽しむことができます。それまでは長電の専売特許。
いよいよ地上へと飛び出します。周りに座った大人も子供も「わぁ!」という歓声をあげます。
しばらく走ると、大河千曲川を渡る村山橋に差し掛かります。この村山橋は珍しい併用橋(道路と線路が同じ橋を共用する)で、長電の名物となっていますが、大正時代の架橋で幅員が狭いため架け替え工事が進められています。この歴史ある橋ももうすぐ見納め。
その新しい村山橋に目を向けてみると、なんとこれも併用橋。普通なら道路と分けて改築してしまうのが当たり前ですが、これは長電か長野県かわかりませんが、とにかく心意気を感じてしまいました。日本全国なんでも同じ様式にしてしまっては、街の個性が無くなってしまいますからね。
途中須坂の車庫で見つけた、長電の初代特急車。僕の小さい頃からの長電のイメージはこれで、よく子供向けの電車の本で眺めていたものです。
こちらも引退間際ではあるものの、朝夕の特急としてまだまだ現役で走っています。昭和を強く感じさせる丸みを帯びたデザイン、僕はこの時代の電車が一番好き。各社が競って名車をデビューさせていた頃です。今のように効率化、汎用性、低価格を目的とした電車は個性が無さすぎます。
電車はだいぶ郊外へと走ってきました。周りにはりんご畑が広がり、小布施を過ぎたあたりからは名産の栗畑も望むことができます。
電車はさらに先を目指します。志賀高原の麓、湯田中駅へとグングン勾配を登っていきます。この車両は元々箱根湯本まで行っていた車両。きつい上り坂もものともせず快走します。
長野駅から45分、湯田中駅に到着。歴史を感じる味のある駅舎と共に、懐かしいレコードの音色が旅人を迎えます。この駅ではゆけむり号が到着すると、「麗しの志賀高原」が流され旅情をかきたてます。
駅前には旅館名を書いた旗を持った番頭さんが迎えに来ており、僕らの世代ではテレビや映画でしか見たことの無いような温泉街の風景が広がります。まさにタイムスリップしたかの様。いい意味で、軽い眩暈を起こします。
長野駅の看板といい、湯田中駅の暖簾といい、そして車両の整備状況といい、このゆけむり号に対する長電の愛情がひしひしと伝わってきます。
地方私鉄に譲渡された車両は現役時代の輝きを失い、見るに耐えない姿になってしまうこともありますが、このゆけむり号は立派に長電の顔として、第一線で活躍しています。
今までは富士を横目に温泉地箱根を目指していましたが、第2の人生として志賀高原を見据え、湯田中温泉を目指す。なんだか共通するものがあり、この車両の安泰が見えたようでとても嬉しい気持ちになります。
小田急の車両はいつまで走るか分かりませんが、兄弟としてこれからも多くの人々を温泉に連れて行ってもらいたいものです。
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