塩原で迎える静かな朝。窓から差し込む眩さに目を覚ませば、鮮やかに染まる冬晴れの空。さっそく高尾の湯へと向かい、うぐいす色のにごり湯へ。ミルキーな温もりに抱かれながら、空色と白銀の鮮烈な対比を全身に受け取ります。

文字通りの目が覚めるような朝湯を満喫し、寝床でころころと怠惰に浸っているともう朝食の時間に。今朝も一杯目は温泉粥から。とろとろと優しく、しかしお米の甘味だけではないしっかりとした奥深い味わい。大地の恵みがもたらす至福の穏やかさに、心身の芯から温められます。
あらためて温泉粥の旨さに心酔し、つづいて白いご飯をおかわり。香ばしい焼鮭に豆の風味がうれしい湯波鍋、手づくりの温もりを感じるふきの煮物にベーコンエッグと、どんどんご飯が進みます。

おいしいおかずとご飯を味わっていると、熱々の煮物が。柔らかく煮られた冬瓜からは上品なおだしがじゅんわりと染みだし、高野豆腐のジューシーさもまた味わい深い。
おいしい朝食をたらふく平らげ、満腹を落ちつけたところで最後の一浴へ。それぞれ雰囲気も浴感も異なる、3つの浴場。どこで〆るか悩みましたが、山の湯の情緒と濃厚なお湯が印象的な邯鄲の湯へ。鼻腔へ毛穴へと染み入る硫黄の香を最後にもう一度補給し、塩原元湯での想い出として持ち帰ります。

名残惜しくも迎えてしまった、チェックアウトの時間。帰りもお願いしていた送迎車に15分ほど揺られ、塩原温泉バスターミナルに到着。バスの時間までまだ少しあるので、近くに架かる紅の吊り橋へ。この付近は、秋になれば真っ赤に染まるもみじが見事なのだそう。今度はその季節に来てみなければ、だな。

箒川の煌めきに目を細め、再訪を誓い『JRバス関東』の那須塩原駅行きに乗車。独特な色味ににごる明賀屋本館、とろりと濃厚な白濁湯の湯荘白樺。三度目となる塩原で新たに想い出として加わった、元泉館のうぐいすに染まるミルキーな湯。多彩な湯が点在する魅惑の湯郷、これはまた通い甲斐がありそうだ。

近くの那須も未開拓だし、奥鬼怒にもまた行きたい。栃木の湯の魅力に妄想を浮かべつつ揺られること45分ちょっと、西那須野に到着。バスはこの先新幹線の停まる那須塩原まで行きますが、急ぐ旅でもないので僕はここで下車。

コンコースからは、到着時には雲に隠れていた山並みがこのとおり。那須から日光にかけてのうつくしい稜線には、うっすらとした雪化粧。こうしてまたひとつ、この山々の懐に旅の記憶が刻まれる。

今度はどの湯どの宿で、あらたな想い出を増やそうか。そんな企みを冬晴れに映える山並みに託し、宇都宮線の上り列車に乗り込みます。

背中に感じる冬の陽射しがあまりに温かく、思わずうとうと。そんなとろとろとしたここちよさに揺蕩っていると、40分ほどで宇都宮に到着。

初めて訪れたときから比べて、だいぶ様変わりしたよな。再開発の波に圧倒されつつ駅前からのびる大通りを15分ほど歩き、繁華街に位置するドン・キホーテへ。地下の『来らっせ本店』で、宇都宮といえばのグルメを味わうことに。
同一フロアに市内5つの有名店が集まる常設店舗ゾーンと、曜日替わりでお店が入れ替わる日替わり店舗ゾーンの2つのお店が。今回僕が訪れたのは、日替わり店舗ゾーン。たまにしか訪れることのできない宇都宮、そんな観光客にとってはうれしいメニューがあるのです。

そのメニューというのが、曜日替わりのお店の餃子を2つずつ集めた盛り合わせ。A盛りB盛りとあり、それぞれ5店舗ずつ組み合わされています。
待つことしばし、注文したA盛りが冷たい生とともに到着。この日は火曜日。とんきっき、三栄飯店、宇都宮餃子館、幸楽、アトムと左から順番に並べられています。
端から一個飛ばしで、それぞれのお店の餃子をひとつづつ。肉々しいものや野菜が主役といったもの、なかにはしそが香るものまで。いずれも甲乙つけがたいおいしさで、宇都宮餃子の魅力にあらためて惚れてしまう。今度は好みの順番で、残りの5個を。ひと皿味わった時点でちょうど良い腹具合になってしまったが、今度はお腹を空かせてAB20個にチャレンジせねば。

名物に旨いものあり。宇都宮の魅力にすっかり満たされ、腹ごなしにのんびり街歩きへ。ドン・キホーテの横の道を南へと進んでゆくと、大きな郵便局が。その入口には、どんと鎮座する大谷石の銘板。独特の風合いと色味をした石材は、街のいたるところに使われています。

そのまま通りを歩いてゆくと、突き当りに姿をあらわす白亜の櫓。その足元を支える土塁はあまりにも重厚で、これまで訪れた城跡とはまた違った迫力に息を吞む。

平安時代にまで歴史を遡るという宇都宮城。戊辰戦争でお城は焼け戦後の開発によりほとんど遺構は失われたものの、本丸の土塁の一部は往時からのものだそう。現在は土塁や建物の一部が復元され、宇都宮城址公園として整備されています。

さきほどの凛とした櫓は、天守として位置づけられていたという清明台。その脇から土塁の上へと登ってみれば、その高さは思った以上。現在復元されているのは本丸の半分程度だそうで、かつては周囲をこのような土塁でぐるりと囲まれていたそう。

文字通りの要塞といった雰囲気を目の当たりにし、土塁から下りてお堀沿いへ。白く輝く富士見櫓、そこから連なるうつくしい土塀。一見慣れ親しんだ城跡のようではあるが、その足元を支える土塁の朴訥とした力強さとの対比が印象的。

宇都宮城址の迫力に圧倒され、そろそろ駅を目指すことに。その道中、街中に突如現れる重厚感あふれる建物。昭和7年建築のカトリック松が峰教会は、地元名産の大谷石をふんだんに使い建てられています。

双塔が聳える正面もさることながら、裏手へと回ればまた違ったうつくしさが。規則正しく積まれた石材、軒を彩る繊細な装飾。直線の目立つなか柔らかさを与えるアーチが、大谷石の風合いとあいまって温かみのある印象をもたらしている。
これまで何度か訪れたことのある宇都宮ですが、今回歩いたのは初めてのエリア。まだ知らぬ街の表情に触れ、新たな魅力を知るのでした。



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