青森沖で迎える爽快な朝。カーテン越しに射しこむ陽射しに起こされデッキへと向かってみると、この航海で一番の晴天が太平洋を染めあげています。そうそう、これこれ!雨や曇りの風情もありますが、やはり大海原には快晴が似合う。心の底から解放されてゆくのを感じます。
船尾へと視線を移せば、どこまでも青く染まる太平洋にのびる一筋の航跡。その色彩は、僕の知っている東京の海や八重山とも違う、真っ青と言いたくなるような独特の色合い。
海の青さは、空の青さを映すから。冷たいはずの北国の海原も、ここまでの晴れ空に照らされれば爽快な温かさを持つ青に染まってしまう。大自然の持つ純粋な色彩が心身の隅々まで行き渡る感覚を、全身で味わいます。
ありえないほどの鮮やかな青さに満たされたところで、6デッキに戻り朝食を。おにぎりにスープといった簡単なものですが、海原越しの朝日に照らされつつ食べれば極上の味に。
幸せだなぁ・・・。おにぎり片手に見つめる、黄金色に煌めく太平洋。こんな時間が、永遠に続けば。叶わぬ願いと知りつつも、やっぱりそう望んでしまう。海との戯れももうすぐ終わると思うと、この絶景を一時たりとも無駄にしたくない。
今回も極上の船旅を味わわせてくれたきそとも、もう間もなくお別れの時間。2泊3日を過ごした寝台を片付け、リュックひとつにまとめた荷物を持ってデッキへと上ります。すると遠くに薄っすら見える、樽前山と北の大地。その光景に、本当に北海道まで来たという実感が急激に湧いてくるよう。
名古屋からはるばる1330㎞の海原を越え、北の大地まで駆け抜けてきたきそ。晴天に聳える巨大なファンネルからは、ビルのような巨体を動かす力強さと共に威厳すら漂います。
青空に浮かぶ白い雲に映える、優美なファンネル。名古屋から仙台を経て苫小牧へ。満載の貨客を無事に送り届けられたことにほっとするかのように、弱まりつつある煙とエンジンの唸り。お疲れさまでした。乗り物という機械ではありますが、その言葉をかけてあげたい。
船は速度を落とし、苫小牧港へと静かに入港。どんどんと増してゆく人々の営みの存在感と比例するように、きそとの別れに対する切なさが膨らんでゆく。
きそはその巨大な船体を器用に動かし、着実に岸壁へと近づきます。足元を見れば、もう間もなく接岸。1年ぶりの北海道上陸を控え、北の大地への期待と共にきそへの想いが溢れ出します。
名古屋港から大海原を駆け抜けること1330㎞、きそはついに苫小牧港に到着。今回も、本当にありがとう。2度目には2度目の感動があった。自分の船旅好きを揺るぎないものとしてくれた、太平洋フェリー。また会うその日まで。再会を強く誓い、北海道の地へと降り立ちます。
昨年は1泊2日だった、北海道滞在。今年はたっぷり3泊4日。まだ見ぬ名湯との出会いに胸を膨らませ、久々の地上の感覚を足元に感じるのでした。
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