冬を迎えに。~酸ヶ湯を染める清き白 5日目 ①~

初冬の酸ヶ湯で迎える最後の朝

酸ヶ湯で迎える最後の朝。昨日の束の間の晴れ間は嘘のように、今朝は凍てつく寒さを思わせる青白い世界が広がります。

この清冽な寒さを味わえるのも今朝が最後。身も心も凛とさせてくれるような空気を感じつつ、静かな千人風呂で穏やかな朝風呂を味わいます。

酸ヶ湯温泉旅館3日目朝食
そして迎えた三度目の朝食。ほたての中華あんやおひたしの他、昨日に引き続き味付きのこのりと南蛮味噌といったお気に入りのおかずで熱々のご飯を味わいます。

そして何よりうれしいのが、大好物の筋子の登場。三度目の正直ならぬ、三日目の正直。僕は子供のころからいくらよりも断然筋子派。これを出されると、熱々の白いご飯が止まらなくなります。

雪に埋もれる酸ヶ湯の窓の外
北国を強く感じさせる朝餉の味を、一層彩る白銀の世界。到着したときとは比べものにならない積雪が、酸ヶ湯を覆い尽くすかのよう。

この3日間でどれだけの雪が降ったのだろうか。くどいようですが、まだ11月下旬。来る本格的な冬に想いを馳せ、この宿を維持し続けることの大変さを感じずにはいられません。

11月下旬、早くも雪に埋もれる初冬の酸ヶ湯。
美味しいご飯と雪景色を腹いっぱい、もう食べられない!というほど堪能し、あっという間にそのときが。8:50発の送迎バスで、宿を去らなければなりません。

楽しい時、充実した時間というものは本当に速く過ぎてしまう。到着時は3泊ものんびりできる!と思っていましたが、蓋を開ければあっというまの3泊4日。それほどこの宿、このお湯、この景色が、僕にとっては格別だったという証。

酸ヶ湯温泉旅館送迎バスから眺める初冬の雪景色
バスは時刻通りに宿を離れ、雪道を踏みしめる音を響かせながら下界を目指します。車窓を染めるのは、一面の銀世界。この清純な八甲田の世界とも、しばしのお別れ。やっぱり冬には寒いところへ。この世界感を味わえば味わうほど、その思いは強くなるばかり。

青森駅前の特徴的な建物、ねぶたの家ワ・ラッセ
八甲田の裾を駆けおりること1時間、送迎バスは青森駅前のアウガ横に到着。市内の雪はもうだいぶ消え、先ほどまでいた場所がやはり別世界だったのだとと強く実感。

今日はもう帰るだけ。新幹線まで時間はたっぷりあるので、のんびり青森市内を散策します。まずはずっと前から気になり続けてきた、駅前にある印象的な建物の『ねぶたの家 ワ・ラッセ』に入ってみることに。

青森駅前ねぶたの家ワ・ラッセ入口を飾るねぶたの紙のアーチ
入場券を買い中へと入れば、幻想的な空間がお出迎え。ねぶたの紙でできたアーチの奥に連なる、艶やかな金魚ねぶた。あぁ、夏が待ち遠しい。あの扇情的な空気が、自分の中を一気に満たします。

青森駅前ねぶたの家ワ・ラッセスロープから眺めるねぶたの展示場
揺れる金魚ねぶたに目を奪われていると、突然広がる大きな空間。大きなねぶたがいくつも並ぶ姿は、まさに圧巻のひと言。余りにもベタですが、鳥肌がたつとは、こういうこと。

青森駅前ねぶたの家ワ・ラッセ美しい紅葉狩
スロープを下りきると、目の前には昨年の大賞を取ったねぶたが聳えます。これまで日中のねぶたは見たことがありましたが、闇に浮かぶ妖艶さは筆舌に尽くし難いほどの圧倒的迫力。

光りと共に溢れ出る鮮やかな色彩と、今にも動き出さんばかりの躍動感。これが街を練り歩く姿を想像しただけで、身震いすら覚えるほどの高揚感に包まれます。

青森駅前ねぶたの家ワ・ラッセ色彩鮮やかなねぶた
弘前のねぷたと同じく、故事を題材とする青森のねぶた。説明文に書かれたその由来を読めば、その躍動感は増すばかり。作者の方々の一瞬を切り出す力に、ただただ圧倒されます。

青森駅前ねぶたの家ワ・ラッセ闇に浮かぶ巨大なねぶた
鮮やかな色彩に溢れたものから、重厚さを感じさせるものまでその雰囲気は様々。造形だけではなく、色と光を巧みに操るからこそ現れる、ねぶた特有の臨場感。

青森駅前ねぶたの家ワ・ラッセ様々な題材のねぶたを楽しむ
これまで小屋にしまわれていたねぶたしか見たことがなかったため、ここで初めて表と裏があることを知りました。弘前ねぷたが陰陽のコントラストを味わうものとすれば、青森ねぶたは言わば両A面といった趣。1台で違う二つの顔を楽しめます。

青森駅前ねぶたの家ワ・ラッセ岩木山とりんごをバックに踊る動物たち
先ほど登場した紅葉狩とともに、釘付けになってしまったのがこのねぶた。岩木山と枝もたわわに実るりんごを背に、楽しく宴を繰り広げる動物たち。青森の豊かさを凝縮したかのような世界感に、しばし言葉を忘れて立ち尽くします。

青森駅前ねぶたの家ワ・ラッセ表情豊かな動物たち
武勇伝にちなんだ勇ましいものも好きですが、こんな郷土愛が伝わるものもまた堪らない。真下へと移動すれば、息遣いまで感じさせるような豊かな表情。人間だけでなく動物たちも津軽の短い夏を喜んでいるかのよう。

青森駅前ねぶたの家ワ・ラッセ出口に並ぶねぶたの面
青森に来る度に、気になり続けたここワ・ラッセ。ではなぜこれまで入らなかったのかといえば、それはやはり弘前ねぷたの影響が少なからずあったから。

僕が初めてねぷたに触れたのが、弘前。それ以来5年連続で訪れるほど好きになってしまい、もうねぷたを見られない夏なんて夏じゃない、といった状態に。

弘前ねぷたと青森ねぶたでは、形も趣も全く違う。青森は戦に勝った凱旋のお祭りなのに対し、弘前はこれから戦へと向かう出陣のお祭りなのだそう。

その空気感の違いは僕のようなよそ者でもはっきりと感じ取ることができ、僕の性格にピッタリと弘前ねぷたが共鳴してしまったのです。だからこそ、青森ねぶたの勇ましさは見てみたくもあり、少々気圧される部分もあり。

ですが今回、ここに来て強く実感。やっぱり青森ねぶたも生で観なければ!眼前に広がる圧倒的な力に、これまでここを訪れなかったことが悔やまれるほど。

僕はやっぱり津軽が好き。何度訪れても褪せることない感動は、僕の中の何かを揺さぶるから。凛々しいねぶたの面に見送られつつ、夏の祭に立ち会うことを強く決意するのでした。

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