GW 春へと続く北海路 ~忘れえぬ航跡 3日目 ①~

太平洋フェリーきそで迎える雨の朝

大海原に揺られつつ眠るという非日常を味わい、自然と目覚める船上での朝。デッキへと出てみれば、外は結構な雨模様。吹き込む雨と共に肌を刺す冷たい風に、そそくさと船内へと戻ります。

太平洋フェリーきそマーメイドクラブ名古屋コーチンたまごかけご飯
目覚めのひとっ風呂を愉しみ、8時前に6デッキのマーメイドクラブへ。レストランでは朝食バイキングが実施されていますが、軽めの朝食で充分という場合はこちらのスタンドが便利。但し営業開始前にかなり並ぶので、席の確保と待ち時間、売り切れには要注意です。

今回は、数量限定の名古屋コーチンたまごかけご飯を注文。僕の少し後に売り切れていたので、朝食は和食派の僕としては非常にラッキー。ご飯にお味噌汁、名古屋コーチンの卵に海苔、そしてきゃらぶき。この内容で500円とは、船上にしてはかなりお得感があります。

海原を眺めつつ、波と一心同体となり味わうたまごかけご飯。名古屋コーチンは肉だけではなく卵も存在感があるようで、ぷりんとした濃厚な白身とコクのある黄身のバランスが印象的。

太平洋フェリーきそデッキで味わうサッポロクラシック
美味しいたまごかけご飯に舌鼓を打ち、ひと眠りしたところで再びデッキへ。すると空には青さが戻り、肌をなでる風も気持ち温かく。すぐさまクラシックの缶をあけ、喉に流れる爽快感とともに大海に浮かぶという解放感を満喫します。

太平洋フェリーきそデッキのベンチに腰掛け午前のビールを
デッキ後部のベンチに腰掛け、海の鼓動に身を任せつつ味わうクラシック。いつしかほんのり感じる酔いと波が同調し、空に海に陽射しにと、自分のすべてが溶けてゆくよう。

太平洋フェリーきそ船内売店で買った松尾ジンギスカン監修スティックポテト
そんな極上の船上での午前を彩るのは、船内売店で購入した松尾ジンギスカン監修のスティックポテト。「ジンギスカン風味」ではなく、「タレ風味」となっているのがポイント。嫌な肉々しさはなく、しょう油ベースの甘辛いタレがポテトによく合います。

太平洋フェリーきそ船上で勲碧純米生貯蔵酒
天気は回復したとはいえ、長時間デッキで過ごすにはまだ肌寒い。去年は半袖でデッキ焼けしたほどだったのに、同じ季節とは思えません。ということで、再びマーメイドクラブへと戻り一人宴会を。愛知県は江南市の勲碧酒造、勲碧純米生貯蔵酒をちびりとやることに。甘味酸味香りのバランスがよく、飲みやすく美味しいお酒。

太平洋フェリーきそマーメイドクラブの窓から眺める大海原
窓側の席が空いたので、そちらへ移動。ゆったりと揺れる船窓を眺めつつ味わう、旨い酒。船旅は、ただひたすらに時間が余る。それこそが、船で味わいたい最上の贅沢。することがないをする。持て余す暇を噛みしめる。普段の生活で味わえないからこそ、無性にこの贅沢を経験したくなるのです。

太平洋フェリーきそマーメイドクラブで食べる船の賄いカレー
海原と地酒に程よく心酔したところで、お昼のマーメイドクラブの営業が開始。ちなみに13時半からと若干遅いので、お昼を時間きっちりに食べたい場合はレストランを利用することになります。

うどんやそばといったメニューの中から、今回も船の賄いカレーを注文。だって、太平洋フェリー伝統の味なんて書かれたら、ついつい頼んでしまうでしょ。ちなみに、奥にフルボトルが写っているのはここだけの内緒。キャンペーンか何かでオリジナルラベルが異様に安く、思わず一緒に注文してしまいました。

奇をてらわない、オーソドックスなカレー。大人でも子供でも楽しめるちょうど良い辛さと、ぽってりとしたルーが醸すまろやかさ。強い個性が良しとされる昨今、こんな普通の美味しさが郷愁を誘います。

太平洋フェリーきそデッキに聳える巨大なファンネル
ワイン片手に優雅な昼食を味わっていると、まもなく姉妹船であるいしかりと離合するという放送が。カレーを食べ終え、早速デッキへと向かいます。

太平洋フェリーきそデッキで眺める姉妹船いしかりとの離合
左舷側で待っていると、遠くから近づく船影が。デッキに佇む人々は一様にその姿を見つめ、大海の一角で繰り広げられる姉妹の再会を今か今かと待ちわびます。

そして迎える、その瞬間。きそが大きな汽笛を轟かせ、いしかりがそれに応えるよう重い音色を響かせる。一年ぶりに味わう、この瞬間。なんだろう、この無性に泣きたくなる感情は。理由なく心に響いてくる。低い汽笛が、魂を揺さぶるのかもしれない。

太平洋フェリーきそデッキで見送る僚船いしかり
太平洋で出会った僚船は、汽笛の余韻を残して再び自分の針路へと戻ります。遠くなりゆくいしかりの姿。お互いの描いたレールのような航跡に合流し、それをなぞるように苫小牧と名古屋を目指します。

太平洋フェリーきそ仙台港入港前に開催されるミニコンサート
きそが名古屋から切り開いてきた路をいしかりが進み、いしかりの残した航跡を頼りにきそは苫小牧を目指す。そんな姉妹の絆の余熱に浸りつつ、ミニコンサートを楽しむことに。

フロアに響くギターの調べ。集う船客は静かに耳を傾け、仙台港入港前のひとときを共有するかのよう。僕はこの先苫小牧まで行きますが、仙台港で下船する人々も大勢いる。そんな人々が船との別れを惜しむようで、なんとなく切なさを感じてしまう。

ギターの音色とエンジンの響きだけが支配する、静かな船内。単なる乗り物としては語れぬ船のもつ包容力は、乗船してみなければ味わえない唯一無二のもの。乗船客が揺れと音楽に身を委ねる姿に、船旅自体が目的になりうるということを強く実感するのでした。