長野へ来たら必ず寄りたい善光寺さん。久々のお参りを終え、すぐ北側にある善光寺北バス停より『アルピコ交通』のループ橋経由戸隠キャンプ場行きバスに乗車。目指すはもちろん戸隠。神社や忍者、そしてそばでとても有名な場所です。
善光寺さんからバスに揺られること約40分、戸隠宝光社バス停に到着。まずはここで下車して腹ごしらえをすることに。バス停の近くにはいくつかのおそば屋さんがあり、その中で気になった『いろりの蕎麦処築山』というお店にお邪魔します。
こちらのお店は宿坊がやっているようで、店内の雰囲気もどっしりとした落ち着いたもの。入口すぐには炭火のくべられた囲炉裏テーブルが置かれ、まだ寒さの残る山ではありがたい暖かさに包まれています。
戸隠限定、雪囲いの地酒でほっと一息ついていると、お待ちかねのそばが登場。こちらのお店は鳥そばがおすすめのようで、入口ののぼりにも書かれていました。4月下旬とは思えないほどひんやりしていたため、温かい鳥そばにも惹かれました。
ですがせっかくの初戸隠、やはりおいしいと言われるそばはざるで食べてみたい。そう悩んでいたところ、冷たいざる盛りそばに鳥そばの付け汁を単品で組み合わせられるとのこと。もうこれしかないでしょ!ということで、冷たいそばに熱い汁の組み合わせで頂きます。
まずはざるの冷たいそばつゆでひと口。何が凄いって、その食感。戸隠産のそば粉100%で手打ちされたそばはコシがしっかりとありつつ、何の抵抗もなくつるりと喉を落ちてゆきます。角の立ったつやつや、きめの細かい見た目の通りといった印象。
お次は熱々の鳥そばの付け汁で。温められた分そばの風味がより際立ち、それでいて柔らかくなってしまわないことにびっくり。なんですか、このそばは。そばでは間違いのない信州ですが、その中でもものすごくおいしい。やはり戸隠、ここ生まれの粉と水のなせる業なのでしょうか。
そしてこの付け汁がまた旨い。香ばしく焼かれた鶏とねぎからは、旨味たっぷりの油や甘味が出ています。更に、具だくさんなのがまた嬉しいところ。ねぎは一本分使っているようで、もうねぎ好きにはたまりません。
力強く繊細なそばを、そばつゆと鳥汁、ふたつの味で楽しめる幸せ。鉄釜で炊いたほかほかのそば米もサービスで付くので、残った鳥汁片手にご飯を食べれば、お腹も心も大満足。ふらりと入ったお店が大当たり、旅の中でも最上級に嬉しい瞬間です。
旨い地酒に旨いそば。戸隠の恵みをお腹一杯味わったところで、気合を入れて戸隠神社へのお参りをスタート。まずはバス停のすぐ近く、五社の中では一番麓に位置する宝光社へ。
実はバスの中からちらりと見えていたので覚悟はしていたのですが、やはりこの石段を目の当たりにするとその角度と長さに圧倒されます。初っ端からこの出だし、奥社まで行けるかなぁ。
雨にけむる杉木立のなか、ひたすら上を目指す長い石段。息を切らさぬようペースに気をつけつつ、じっくりじっくり登ります。そして遂にご対面。社殿には幾多もの彫刻が施され、ここが古くからの信仰の場であることを感じさせます。
ひっそりと雨に濡れつつ佇む宝光社。その荘厳さに気圧されつつ、続いて中社へと向かいます。車道でも辿りつけるのですが、雨もまだそれほどでも無かったため古くからの参拝道をゆくことに。
入口に大きな雪塊があったのである程度は想像していましたが、古い参詣道は4月末だというのにまだこの残雪。雨の平日、ただでさえ歩いて参拝する人は皆無。立ちのぼる融雪霧は幻想的で美しく、だからこそ深い森へと迷い込んでしまいそうな錯覚に襲われます。
五社すべてにお参りすれば、一層のご利益があるという戸隠神社。でも雨と雪で足元も悪く、バスも1時間に1本のため、途中の火之御子社は今回は見送ることに。
それにしても、心細かった。民家や車道があるにもかかわらず、誰もいない、それでいて誰かに見られていそうな深山幽谷の世界。本当にひとりぼっちって怖いんだ。今日は何だか変だ。善光寺さんでも同じようなことを感じたんだった。
ひとりの不安、そして雪解けのプーさんの怖さに耐えつつ歩くこと約25分、中腹に位置する中社に到着。最後の登り坂はきつかったですが、観光客の姿を発見したときは本当にホッとしました。
鳥居から垣間見える石段は見なかったことにして、鳥居の横に聳える立派な杉を見上げます。途中から3本に分かれたこの三本杉は、樹齢800年を超えるそう。戸隠神社はとにかく杉。杉の多さ、そして立派さがものすごく印象に残っています。
そして一旦は現実逃避した石段を登りつめ、中社の社殿に到着。息を整え、落ち着いたところでお参りします。
これから向かうはさらに山奥。正直ここまでの残雪とは思っていなかったので、この先進むかどうか少しだけ逡巡しました。が、なぜかこのときの僕には、行かなければという謎の使命感が。行かないという選択肢を振り払い、奥社を目指してさらに歩みを進めるのでした。
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