田沢湖駅からバスに揺られること約30分、角館の街に到着。伝承館入口というバス停で降りれば、武家屋敷はもうすぐそこ。運賃もこまち利用より安いため、時間さえ合えば田沢湖駅からはバス利用がおすすめです。
夏、秋と角館には2度ほど来たことがありますが、冬のこの時期は初めて。銀世界の中静かに建ち並ぶ黒塀や木立を期待していましたが、やはり今年は雪が少ないのでしょうか、道路の雪はすっかり溶けています。
立派な門や蔵を構える武家屋敷には白い雪が積もり、しっとりとしたモノクロームの風情が漂う街並み。そこに色を添えるのは、秋田ならではの杉の深い緑。緑豊かな夏に、枯色が郷愁をそそる秋。それらの記憶もさることながら、冬の静かなこの空気感もものすごく良い。
桜の名所としても知られる角館。枝垂桜のつぼみはまだ固く、それでいて内部では着々と準備を始めていることを感じさせるようなほんのりとした膨らみが。これらが一斉に咲き乱れる春。その姿に思いを馳せ、いつかはその時期にもここを訪れてみなければと心に誓います。
以前訪れた際にも立ち寄り、古の武士の暮らしに触れた岩橋家住宅。門には雪を頂き、この時期ならではの渋い佇まいをみせています。
門をくぐれば、敷地内にはたっぷり積もる雪。厚い板で施された雪囲いが、この地の雪深さを物語るよう。炭火くらいしか暖房がなかった江戸時代。木造家屋での豪雪地の暮らしは、一体どれほど大変だったことでしょう。
しっとりとした武家屋敷の街並みを愉しみ、時刻は丁度お昼どきに。今回はふと目に留まった『旬菜料理月の栞』にお邪魔してみることに。
帰りの新幹線までは時間はたっぷり。ということでひとり静かに昼酒を味わうことに。そのお供にと選んだのは、秋田ならではの名物。長芋とんぶりはプチプチとした食感が美味しく、じゅんさいのつるりとした口当たりが地酒を進めます。
続いて酒のあてにと注文したのは、比内地鶏のだし巻玉子。分厚く焼かれた卵は風味が濃く、程よくきいただしと甘さも相まってもう最高の肴に。思わず秋田の酒をおかわりしてしまいます。
旨い郷土料理に、郷土の酒。程よく火照ったところで、冷たいうどんで〆ることに。オーソドックスな稲庭うどんをとも思いましたが、今回は特製ごまだれ冷やしうどんを頼んでみることに。
運ばれてくるとごまだれの他に、普通のうどんつゆも。両方食べたいと悩んでいたため、この嬉しい心遣いに思わずにやけてしまいます。
見るからに瑞々しく、つや肌の稲庭うどん。まずは基本のうどんつゆでつるりとひと口。あぁ、本当に旨い。細いながらも強いコシ、それでいてゴワゴワ感のない究極のしなやかさ。稲庭うどん、食べるたびに一層好きになってしまう罪な奴。
続いてはごまだれで。クリーミーになるまで摺られたごまは、その見た目通りの濃厚さ。ですがうどんの風味を損なうことなく、存在感ありながら見事な調和をみせています。本当にこのたれは旨い。つるつるとうどんがいくらでも食べられてしまう。
他にもメニューには魅力的な品々がたくさん。春になれば山菜も食べられるようで、これはまた時期をずらして来てみたい。秋田美人を思わせる美しいうどんを最後の一本まで平らげ、大満足でお店を出ます。
外へと出れば、先ほどまでの雲もどこかへ行ってしまい、まぶしいほどの冬の青空が。お腹も満たされたことだし、さあもう一度武家屋敷へ。ほんのり酔い心地の角館散歩は、更に続きます。
コメント