煌めく湖畔に立つ爽やかな朝。今日も清々しい朝風呂を味わい、黄金色のお湯の余韻を湖上を渡る爽快な風に流します。朝日に照らされ、さざなみ輝く支笏の湖水。その独特の青さと太陽のもたらす金色が、見る者の内側まで照らすよう。
豊かな支笏の色彩に心身まで清められ、すっかりお腹もすいたところで朝食へ。にしんの切込みにぜんまいの炒め煮、とろろといった自分好みのおかずを選びます。
そんな中ホカホカのご飯を一層美味しくしてくれたのが、北海道産の黒千石大豆を使った納豆。黒豆特有の個性ある風味が納豆の味わいをより深くし、固すぎず柔らかすぎず、大きすぎず小さすぎずのバランスが絶妙。やはり北海道は豆の名産地であるということを思い知らされます。
湖水とつながる天然露天風呂や体と心を温める黄金色のいで湯、北海道の恵みを美味しく味わわせてくれる料理にと、様々な形で支笏を満喫させてくれた丸駒温泉旅館ともお別れのとき。
チェックアウトを済ませて駐車場へと出てみると、到着時には見られなかった桜が咲き始めています。ゴールデンウイーク、東京では夏日真夏日が出始める時期。ですが北の大地は、これから待ちに待った春を迎える。冬の長さの違いが生むこの差に、列島の広さへと今一度思いを馳せてしまう。
2泊を過ごした宿に別れを告げ、送迎車で支笏湖バス停へと向かいます。路線バスの時間までは少々余裕があったため、湖畔へと下りてみることに。穏やかな青さを湛えた湖水の先には、ツンと天を指し聳える恵庭岳。あの麓に、自分は今までいた。そのことがにわかに信じがたいほど、ここからは人家の気配すら感じられません。
視線を左へと移せば、悠々と横たわる風不死岳と樽前山。今も活動を続ける活火山としても有名な樽前山。噴火湾側から眺めるとあまり目立たない溶岩ドームも、支笏湖から望めばご覧の存在感。このドームは明治の噴火でできたというのだから、今なお温存されたその力の大きさに軽い戦慄すら覚えてしまう。
船着き場の更に先には、青い湖畔を彩る赤い鉄橋が。これは去年王子製紙の工場近くで保存車両を見た通称山線、王子製紙軽便鉄道の廃線跡。明治時代に空知川に架橋され、大正時代にここに引っ越してきたという経歴の持ち主。今なお歩道専用橋として活用され、現役の鉄橋としては道内最古なのだそう。
子供の頃訪れたことのある、支笏湖。その時は曇天だったのだろうか、この美しい青さの思い出は全くなく単なる湖として記憶されていました。ですが今回、大人になって初めて訪れた支笏湖が魅せたこの美しさ。
天気が変われば、季節が違えば、そして自分が変われば、見える景色が違う。そんな当たり前のことを改めて教えてくれた支笏湖に別れを告げ、『北海道中央バス』へと乗り込みます。
路線バスに揺られること小一時間、北の大地の玄関口である新千歳空港に到着。え、もう帰京の時間?いえいえ、簡単に東京へと戻る僕ではありません。空港は、路線や高速バスの結節点としても使える。ということで今回はバスの乗り継ぎのため、空港へと立ち寄りました。
最近は鉄路海路での渡道が多かったため、久々に訪れた新千歳空港。内部は改装され、スキーで毎年使っていた時とはがらりと雰囲気が変わっています。
そんな中、乗り物好きの僕には堪らない一画が。このエアポートミュージアムには、歴代のJAL乗務員制服のほか、様々な懐かしい展示がされています。そしてずらりと並ぶ、飛行機の模型。それにしてもJAS、懐かしいなぁ。今の青年たちは日本の空に3社の大手が存在したことすら、知らないかもしれません。
時刻は丁度お昼どき。空港内の北海道ラーメン道場には道内各地のラーメン店が集い、どこを選ぼうかと嬉しい悩みに頭を抱えます。北海道といえばの味噌にも惹かれましたが、今回は旭川ラーメンの『梅光軒』にお邪魔することに。
クラシックをグイっとやりつつ待つことしばし、お待ちかねの醤油ラーメンが到着。久々に対面する、旭川ラーメン。見た感じからすでに、あぁこれ好きなやつだと直感します。
初めての梅光軒。張っている油の量が少なめで、より食べやすいといった印象。動物系のだしがしっかりと旨味を支えるスープにしょう油の香ばしさが加わり、王道の醤油ラーメンというものを体現しているよう。
麺は小麦っぽさを感じる、これまた王道の中華そばといった雰囲気。味噌には黄色いプリプリ麺、そしてしょう油にはやっぱり、素朴な麺が合う。しょう油の香ばしさ、油のコク、そして粉の味わい。派手さはないが定番としての骨太さすら感じさせる旨さは、昭和生まれの心の琴線に触れる味。
久々に味わった、旭川ラーメン。また旭川にも行かねば。新たな宿題を胸に秘め、空港を行き交う旅客の波を眺めるのでした。
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