櫓とお堀にかつてのお城の面影を感じつつ、のんびり歩き市役所へ。ここから市内循環バス『ぐるりん』少林山線に乗車し、次なる目的地へと向かいます。
市役所から市街地をくるくる走ること20分足らず、少林山入口バス停に到着。降りたバス停から来た方向へと少し引き返すと、立派な総門が現れます。
総門をくぐると、その先には長い長い石段が。冬の午後の木漏れ日の温もりを感じつつ、息を切らさぬよう一段一段ゆっくりと登ってゆきます。
長い石段を登り切り、さらに階段を上ると本堂である霊符堂に到着。高崎といえば、言わずと知れただるまさんの街。ここ少林山達磨寺は、その縁起だるま発祥のお寺だそう。この日は年末のお焚き上げを行った直後らしく数は少ないのですが、軒下には役目を終え奉納されただるまさんが積まれています。
明治時代に建てられたという立派な彫刻の施された本堂で、初めてきちんと高崎を訪れることのできたお礼を伝えます。
その隣には、全国のだるまさんが展示される達磨堂が。撮影禁止なので写真はありませんが、日本全国のバリエーション豊かなだるまさんが並ぶ姿は圧巻のひと言。
津々浦々、個性あふれるだるまさんの表情を楽しみ外へと出ると、この胸のすくような展望が。抜けるような冬の青空、その下に独特の山容を横たえる榛名山。頬に感じる空っ風が、上州の冬というものをこれまた感じさせてくれるよう。
壮大な上州の眺望を浴びたところで下山することに。途中には、鄙びた雰囲気の漂う茅葺のお堂が。この観音堂は、300年前にはすでに存在していたというこのお寺で一番古い建物だそう。
物心ついたころから様々な場面で目にし、だるま市の中継やだるま弁当などでも慣れ親しんできた縁起物のだるまさん。その故郷ともいえる場所に触れ、年末という時期もあり何となくほくほくとした気持ちでお寺を後にします。
ここから次の目的地まではそれほど距離もないため、バスを待たず歩いてゆくことに。碓井川を渡る鼻高橋からは、あまりにも雄大な榛名の展望が。
そして西を向けば、白銀に輝く浅間山。なめらかに雪化粧を施されたその姿は、艶やな気品すら感じさせるよう。
それにしても、橋上は特に風が強い。上州名物、空っ風。分水嶺にぶつかり水分をすっかり日本海側に落としてきた風は、それはもう本当にからっから。体を持っていかれそうな風速もさることながら、肌に感じる乾燥具合に本場の本気を見た気がします。
僕の生まれ育ち住む東京も、冬はからっからの風の吹く街。子供の頃から冬といえばの風の生まれ故郷を身をもって実感し、凄いすごいと言いつつ橋を渡り切ります。少林山への入口である橋らしく、親柱には凛々しいだるまさんが鎮座。
鼻高橋からしばらく国道18号に沿って歩き、この大きな赤鳥居を右折。榛名山を目の前に据えつつ、次なる目的地である八幡八幡宮を目指します。
少林山から歩くこと15分、八幡八幡宮に到着。1,000年以上の歴史をもつというこの神社。神門では仁王像が睨みをきかせ、神仏習合の名残りを色濃く感じさせます。
神門から続く石段を登ると、参拝者を出迎える立派な隋神門。八幡宮は一国一社とされていた時代に、上野国の八幡宮として建てられたという八幡八幡宮。その長い歴史において様々な武将の信仰を集めてきたそう。
子供の頃楽しみにしていた縁日や、今の家に引っ越してから毎年訪れる初詣など、物心ついたころから親しみのある八幡さま。上州を代表する八幡さまに、群馬での豊かな旅のお礼を伝えます。
創建800年を記念し、265年前に建てられたという現在の本殿。随所に立派な彫刻が施され、集めてきた人々の信仰の厚さを感じさせます。
お参りを終え本殿の横へと回ってみると、今なお残る極彩色の世界。渋い面持ちの正面からは想像していなかった煌びやかさに、この神社の経てきた歴史が溢れてくるよう。
更に近寄り見上げれば、迫力ある表情を魅せる彫刻の数々。美しい枝ぶりの松や力強さを感じさせる獏の姿に、思わず息を呑んでしまう。
脇障子には立体的な獅子の透かし彫りが施されており、間近で見ると今にも動き出しそうな躍動感に溢れています。
裏手へと回ると獅子の姿はどこへやら、脇障子には美しい牡丹の彫刻が。表裏で違う意匠が施された見事な透かし彫りには、古の職人の技と美意識が宿っています。
様々な彫刻に彩られた本殿を後にし歩いてゆくと、これまた見事な彫刻が施されたお社が。この天満宮は、かつて本地堂として建てられたものだそう。
想像以上の社殿の美しさに触れつつ、境内をのんびり一周。仁王門や本地堂、そして鐘楼といった神仏習合の名残り。市街地のすぐそばにありながら、古から大切に守られてきた八幡さま。小さな境内には、その歴史が濃密に詰まっています。
これまで群馬は何度か宿泊で訪れましたが、今までその魅力にあまり気づけていなかったのかもしれない。今回の旅では、僕の知らない上州をたくさん感じることができた。
群馬、いいところだな。八幡さまを頂く小高い丘から望む、高崎の街。冬晴れのその鮮やかな長閑さに、思わずひとりそうつぶやくのでした。
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