稲庭うどんの極上の味の余韻にひたりつつ、そろそろ秋田を発たなければならない時間。秋田駅から特急つがる号に乗車し、この旅の最後の目的地、弘前を目指します。
そういえば、奥羽本線で特急に乗るのはあけぼので白神山地を訪れて以来。その時乗ったかもしか号は無くなり、その時に泊まった秋元旅館も廃業されてしまったそう。たった数年前の体験が過去のものになってしまった。とても良い想い出だっただけに、寂しいものがあります。
今回初めて乗車する、つがる号。その名の通り、僕が目指す津軽への想いを乗せて、青い稲の中を疾走します。
秋田の美田をつまみに楽しむのは、美酒爛漫の純米ふなおろし。秋田の米の丸みを感じさせるコクと、華やかな香りと酸味。山形も、秋田も酒が旨かった。そしてこれから行く青森もまたしかり。東北六県酒処。だから東北旅行は、やめられない。
だんだんと空を雲の割合が占めはじめ、今宵のねぷた運行は大丈夫なのかと一抹の不安を抱きつつ、ぼんやり眺める車窓。そんな時、窓の外に見えた大きな池。これはここ森岳が生産量日本一というじゅんさいを育てる池。昨日食べたじゅんさい鍋、旨かったなぁ。
東京を発ち、赤倉、肘折、強首と着実にコマを進めてきた、今回の旅。最終にして最大の目的地である弘前にはまだ着いていません。が、今回の旅の道中も濃いものばかりだったので、目的地を目前にして、少なからず寂しさを感じてしまいます。
道中をずっと共にしてきたこの普通乗車券とももうすぐお別れ。後は弘前でねぷたを楽しむのみ。
つがるはそんな僕を乗せて奥羽本線を北上。山深い秋田青森の県境を抜け、碇ヶ関を過ぎ、大鰐温泉を過ぎ、いよいよもうすぐ弘前へ。心配していた天気も、日が射すくらいに回復。車窓の右端には、岩木山が姿を現し出迎えてくれています。
列車に揺られ秋田から2時間ちょっと。この旅の終着地、弘前に到着。さあホテルへ行こう!と思ったところ、何やら生音の津軽三味線が聞こえてきます。
その力強い音色に誘われ、出口とは逆方向に進むと、津軽三味線の演奏会が開かれていました。久々に聴く、生の津軽三味線。骨身に沁みるような振動を伴う力強い音色に、ついに津軽の地へと辿りついたことを強く実感。
どうしよう、涙が出てきてしまいそう。ただでさえ津軽三味線の音色を聴くとダメなのに、山形、秋田を経て青森へと降り立ったこの瞬間に聞かされると、胸から色々なものがこぼれてきてしまいそう。
何とか昂る気持ちを抑え、生演奏を最後まで楽しみ、ホテルへと向かうことに。一年振り、また来ることができた弘前。これから二夜、僕の待ち焦がれた暑い夏が始まります。
一年振りの弘前の街並みをのんびり歩き、メインストリートである土手町商店街へ。そこにはスタート会場を目指すねぷたの姿も見え、4年連続でこの夏を味わえることへの幸せが、心の底からふつふつと湧きあがります。
そして、今年もお世話になる『弘前国際ホテル』(スマイルホテル弘前に名称変更)に到着。今年も何とかお部屋を押さえられて本当に良かった。宿が取れなければ、どれだけねぷたを見たくても、来ることは出来ないのです。
きんぎょねぷたに出迎えられ、もう心はねぷた一色。太鼓や鉦の音が聞こえてくるようで、日が暮れるのを待ち遠しく思うのでした。
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