初秋のぽかぽかとした陽射しを浴びつつのんびり待つことしばし、2両編成の新庄行き列車が入線。それにしても、何度見てもキハ110はカッコいい。なかなか乗るのが難しい路線を走っているため、僕にとってはいつも貴重な体験。
進行方向左側のボックス席に座ると同時に、エンジンを高鳴らせ列車は出発。ディーゼルカーのゆったりとした加速に身を任せていると、程なくしてあの赤い大屋根が目に映る。
喜至楼、今回も素晴らしい時間を本当にありがとう。去りゆく姿を目で追い、感謝といつまでも在り続けてほしいという願いを託します。
初秋の彩に染まる、ローカル線の車窓。足元に感じるディーゼルの唸りが、旅情をより一層掻き立てる。秋の汽車旅ならではの郷愁に、今はひとり静かに身を置いていたい。
僕の愛するキハ110に揺られること20分ちょっと、あっという間に新庄駅に到着。乗り換えの列車まではまだ時間があるため、併設する交流センターゆめりあに行ってみることに。
中へと入ると、以前は最上の自然を体験できるスペースだった場所が鉄道ギャラリーに模様替え。入口ではD51の模型が出迎え、早くも鉄ちゃん心がくすぐられる。
壁一面にずらりと並ぶ写真たち。山形を中心に東北路を駆け抜けた列車がたくさん展示されており、気をつけないと次の列車を逃してしまいそう。
国鉄時代から現在まで様々な車両が並ぶ中で、ひときわ目を引く400系つばさ。この車両が登場した時の衝撃を、今でも忘れることができない。
新在直通という画期的な運転方法もさることながら、当時は白に青か白に緑しかなかった新幹線の中でこのシルバーのボディーは鮮烈すぎた。デビューしてから33年経っても、このデザインの秀逸さは色褪せない。
館内には、地元の高校生が作成したという巨大なジオラマが。新庄市、最上町、戸沢村と、陸羽東線・西線の沿線風景が見事に再現されています。
最上町のジオラマを覗いてみると、模型でも存在感を示す喜至楼の姿が。本館のみならず別館、そして半円形のホールまで再現され、なんとなく嬉しくなってしまう。
思いがけず濃い鉄体験に浸り、ニヤニヤしながらホームへと向かいます。程なくして、奥羽本線の山形行き普通列車が入線。東北といえばのいつもの701系ですが、新幹線と共に走るため幅の広い標準軌用の台車を履いています。
701系の大きな窓いっぱいにすすきが流れ、銀色に輝く秋の車窓。新庄発車後は長閑さが漂っていた車内も、地元の人や沿線の温泉帰りと思われる人でいつしか賑やかに。
初めての山形線普通列車に揺られること1時間5分、乗り換え地点である羽前千歳に到着。ここから仙山線に乗車し、再び奥羽山脈の懐を目指します。
こちらもこの区間は初乗車。平地を出たと思ったら、結構な勾配を登ってゆく仙山線。たった10分ちょっとで、この山深さまで到達。
ホームから望むのは、かの有名な山寺。山を覆う深い緑、その合間に顔を出す巨岩。そのはるか上の方に見える、点在する建物。これからあそこまで登るのか。目の当たりにする高さに気圧されつつ、石段に挑む心の準備をするのでした。
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