ぷらっと浜松、旨し旅。~思い立ったが秋日 1日目 ①~ | 旅は未知連れ酔わな酒

ぷらっと浜松、旨し旅。~思い立ったが秋日 1日目 ①~

10月中旬秋晴れの東京駅東海道新幹線ホームN700Sひかり号岡山行き 旅グルメ

一昼夜勤務の後、日勤分の残業をして帰った日。22時間半労働の疲れを大好物の納豆バクダンでずるずると癒していると、「この連休天気良さそうだけどどうする?」と相方さんから突然の旅の提案。

え?えぇっ?こんな急に?でも、そんなん行くじゃん。そうと決まれば早業でお手頃価格の宿を押さえ、きっぷもえきねっとでかんたん手配。本当に、インターネットは罪な奴。こうして僕らは、本当に思いつきの旅へと出ることに。

10月中旬秋晴れの東海道新幹線N700Sひかり号岡山行き車窓から眺める大山の優美な姿
普段なら絶対にしないであろう、思い立ったが吉日旅。せっかくだからその勢いで身軽に行こうと、今回は愛用のコンデジMX-1をお留守番させPixelで写真を撮ることに。

10月中旬秋晴れの東海道新幹線N700Sひかり号岡山行き車窓に広がる箱根の山
JR東日本管内の新幹線に比べ、格段に乗る機会の少ない東海道新幹線。いつもとは違う視座から眺める大山の優美さに目を奪われ、箱根の山が近づいてきたかと思えばあっという間にひかり号は小田原を通過。

10月中旬秋晴れの東海道新幹線N700Sひかり号岡山行き三島付近の車窓には富士山の姿が
これまでののどかさから一変し、連続するトンネルを疾走するN700S。見た目はあまり変化がないように見えるけれど、乗り心地に関しては明らかに進化している。その快適さにこれなら博多まで・・・なんて話をしていると、三島に差し掛かった車窓にはうっすらと姿を見せる富士山が。

10月中旬秋晴れの東海道新幹線N700Sひかり号岡山行き車窓に姿を魅せる優美な富士山
密度の濃い建物の合間から姿を覗かせていた富士山も、愛鷹山の背後に隠れいったん休憩。そしてついに迎える、その瞬間。自身の持つ裾野の曲線美を見せつけるかのように、再び颯爽と姿を現す日本最高峰。

10月中旬秋晴れの東海道新幹線N700Sひかり号岡山行き車窓に広がる優美に裾野を広げる富士山の威容
進むごとに、角度を変え新たな美しさを魅せる富士の嶺。初めてこの光景を浴びたあの日を、僕は一生忘れない。

デビューしてまもない300系のぞみ号、その車窓から眺めた威容を誇るその姿。小学5年生の僕にとってあまりに大きく、あまりに優美で。物心ついたころから見える環境で育ち、五合目にも遊びに行っていたある意味身近な山。それを自分の中で特別なものと認識したのは、間違いなくあの瞬間だった。

10月中旬秋晴れの東海道新幹線N700Sひかり号岡山行き車窓に広がる静岡のうつくしい山並み
あの旅行で姫路城や京の都のうつくしさを知り、修学旅行の団体専用列車ではいつまでも見え続ける富士山に静岡の広さを痛感し。久しぶりに目の当たりにする、新幹線といえばの王道の車窓。秋晴れに染まるその眩しさに、眠っていた数々の想い出が目覚めてゆく。

10月中旬秋晴れの浜松駅
あのころとは比べ物にならないほど俊足になったひかり号に揺られること1時間24分、この旅の目的地である浜松に到着。これが僕にとって初浜松、そして初遠州。これまで通るだけだった遠江、どんな出逢いが待っているのかとわくわくが止まらない。

10月中旬秋晴れの浜松濱松地焼鰻まさ
時刻は11時前、まずは浜松といえばのうなぎを食べることに。どうやら、前々から浜松が気になっていたようで下調べしていた様子の相方さん。目星をつけていたお店に向かってみると、残念ながら改装中でお休み。もう一軒候補として考えていたという『濱松地焼鰻まさ』に向かいます。

生まれも育ちも東京、うなぎは上質で芳醇な飲み物だと信じてやまない僕。この地でも関東風を食べるものだとすっかり思い込んでいたのですが、相方さんは関西風の地焼を狙って探していたことが判明。どうやらここ浜松あたりに、関東風と関西風の境界線があるそう。それならばせっかくだからと、開店待ちの列に並ぶことに。

10月中旬秋晴れの浜松濱松地焼鰻まさ大ボクうなぎ1尾を使用した特重
初遠州、初浜松にして、初地焼き。名古屋では刻んだ状態のひつまぶしで経験済みですが、関西風をうな重としてきちんと食べるのは初めてのこと。一体どんな感じなんだろう。未知なる味に期待しつつ待つことしばし、ふたの閉まりきらないお重が運ばれてきます。

開ける前から漂う香ばしさに、居ても立ってもいられずいざご対面。うわぁ、こりゃもう見た目だけで反則だわ。蒸すという行程を経ず、脂を程よく残しつつ焼かれる地焼き。こんがりとした色味とつやっつや照りってりの煌めきに、早くも気圧されてしまう。

期待に胸を膨らませつつ、カットされた身をひと口。うわっ、パリッていうんですけど!?あの蒲焼が、こんがりさっくり焼けてるんですけど!?

素晴らしい食感におののいた刹那、ぶわっと広がるうなぎの脂と濃い旨味。蒸さずに焼くからこそきっちりと残される、うなぎ自身の持つ味わい。油が炭火に滴り落ちることにより生まれる薫香をまとい、本当に蒲「焼き」であることを全身で主張している。

こちらのお店ではその時どきの良い産地、大ボクという大きなうなぎにこだわって仕入れているそう。大ぶりだからこその身の厚みにより、しっかり焼いても脂はほどよく残されほくほくジューシーに。

そして気になっていた骨も、高温の炭火で焼き上げるため全く気にならない。関西出身の相方さんがはがして食べていたという皮もバリっと香ばしく、グニグニとはほど遠い至極の食感に。

ちょっとこれは、大袈裟ではなく衝撃的体験。関東風のふわふわとほどける柔らかなものとは、まったく違う食べ物だと思ったほうがいい。それらは甲乙つけがたいなんて発想すらおこがましく、どちらも似もせず非なるうなぎの最高の味わい方。

箸でもった蒲焼に豪快にかぶりつき、すかさず頬張るたれの染みた旨いご飯。なぜわさび漬けが?と最初不思議に思っていた組み合わせも、これがまた好相性。しっかりと存在感あるうなぎはわさび漬けに負けることなく、浜名湖産の海苔とともに頬張ればまた違った華やかさに。

ふっくらふわふわと溶ける柔らかさが、うなぎのおいしさだと考えて生きてきたこの43年。名古屋のひつまぶしは特別で、あの食べ方だから地焼きが活きるのだろうと思っていた。

そして、人生半ばにしてついに出逢ってしまった関西風の魅惑の旨さ。東京に越してきてうなぎを初めておいしいと思ったという相方さんも、これには驚いた様子。二人とも黙々とうなぎにかぶりつき、食後に揃ってひと言。これからは、浜松で強制途中下車させられそうだよねって。

しょっぱなから、その魅力の片鱗を見せつけてきた浜松。何で今まで、来なかったんだろう。早くもこの街の力に圧倒され、本当に思い立ったが吉日ってあるもんだなと身をもって実感するのでした。

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