晩秋蔵王、染められて。~白き夢見し酔いもする 3日目 ①~ | 旅は未知連れ酔わな酒

晩秋蔵王、染められて。~白き夢見し酔いもする 3日目 ①~

11月下旬晩秋の蔵王名湯舎創で迎える静かな朝 旅の宿

蔵王で迎える穏やかな朝。どんな空模様かと窓辺に立てば、湯の街からのぼる湯けむりと山を下るもやの混じり合う幻想的な世界。この荘厳な空気感を吸い込むべく、静かな朝の湯屋へと向かいます。

11月下旬晩秋の蔵王名湯舎創2泊目朝食
白き出湯と戯れる至福の時間に身を委ね、芯から温まったところで寝床へごろり。あぁ、こんな時間もあと少しか。日常では決して許されぬ甘美な怠惰に溺れる寸前、踏みとどまって朝食会場へと向かいます。

鮭にたらこ、しらすや納豆とともに味わう白いご飯。そして嬉しい、山形といえばの玉こんにゃく。この味は一体どのようにして出しているのだろう。玉こんを食べるたびに気になっていたのですが、今朝そのヒントを発見。お鍋の中にするめのゲソが浮いており、これがあのじんわりとした旨味の正体かとひとり納得。

11月下旬晩秋の蔵王温泉バスターミナルから山交バスで山形駅へ
満腹を布団で落ち着け、この旅最後の一浴へ。2泊3日を掛け、全身の毛穴という毛穴から存分に補給した硫黄分。蔵王の絹のような湯のすべらかさを、名残惜しくも噛みしめます。

11月下旬晩秋の蔵王秋の終わり、冬の入口。そんな枯色に染まる車窓
蔵王温泉バスターミナルから『山交バス』に乗車し、いよいよ蔵王を離れる時が。二十年近く前、まだ若かりし頃の僕らが遊んだ銀世界。あの日の記憶に胸を温め、そしてその時と変わらぬ湯の温もりに全身を抱かれ。良い湯だった。また来よう。そんな再訪の願いを、枯色の車窓に託します。

11月下旬晩秋の山形駅近くのそば処つる福
秋の終わり、冬の入口。そんな移ろう季節を感じさせる車窓を愛でること40分足らず、終点のひとつ手前の山交バスターミナルで下車。そこから歩いてすぐの『つる福』で、山形名物を味わうことに。

11月下旬晩秋の山形つる福冷たい肉そば
山形県といえば、東北屈指の麺喰いどころ。メニューにはげそ天や鳥天そば、そして名物の鳥中華もあり激しく悩んでしまう。それぞれ温冷が選べ、迷いつつも王道だという冷たい肉そばを注文します。

ほどなくして、大ぶりな丼なみなみのおそばが到着。まずは澄んだおつゆからひと口。うわあ、何だこれ。ものすごく旨味が濃いし、そして経験したことのないそばのだし。

親鶏を沸騰させずに取ったというだし。ほんのり油は浮いているもののべたつきはなく、すっきりとしていながら鶏の旨味が詰まっている。薄い色をした見た目どおりしょう油感はそれほど強くなく、でも気持ち濃いめの塩分が味を引き締める。

続いて、山形らしい黒くて太いそばを。冷たく〆られたそばは噛み応えがあり、この強い麺にはこのスープの濃さがベストなのだと思い知る。

そしてまた旨いのが、載せられた親鶏。こりっこりの皮を噛みしめれば、じんわりと広がる鶏の脂の甘味。むねは硬めながらしなやかさがあり、ももは強い歯ごたえに込められた肉の旨味が堪らない。

一味をぱっぱと振り、華やかな辛味とともにワシワシと味わうそば。噛めば噛むほどそばの甘味と鶏の旨味が口中に溢れ、これはまずいものを知ってしまったと食べながら後悔。だって東京では、そうそう食べられるものではないんだもん。

11月下旬晩秋の山形旧紅花商人長谷川家所有の蔵屋敷山形まるごと紅の蔵
これまでテレビで見ては食べたいと思い続けてきた、冷たい肉そば。その破壊力に成すすべもなく、あっけなく虜になってしまった。食べ終わったときから、また食べたい。そんな余韻に浸りつつ、山形の街あるきへと繰り出します。

11月下旬晩秋の山形明治時代築という寝装のむらやの蔵
初めて訪れる、県都山形。一体どんな街なのだろうかと期待しつつ歩いてゆくと、大通り沿いに点在する古き良き建物。先ほどの山形まるごと紅の蔵は、かつて紅花商人であった長谷川家により明治時代に建てられたもの。その先に現れる布団屋さんの印象的な店蔵も、同じく明治時代築だそう。

11月下旬晩秋の山形大正時代建築の旧吉池医院
さらに進んでゆくと、重厚感溢れる洋風建築が。この旧吉池医院は大正時代に建てられ、去年まで現役の診療所として使われていたそう。

11月下旬晩秋の山形紙の大丸屋の渋い建物
正直言うと、県庁所在地と城下町といったイメージしかなかった山形。敢えて下調べせず訪れた初めての街。そこにこんなたくさんの豊かな表情をもつ古き良き建物たちが生きているなんて。

11月下旬晩秋の山形五堰のひとつ御殿堰
やはり実際に訪れてみなければ、知って感じられないものがある。だからこそ、旅することをやめられない。和洋新旧、それぞれが共存する街並みに、新鮮な旅の歓びを改めて噛みしめるのでした。

晩秋蔵王、染められて。~白き夢見し酔いもする~
11月下旬晩秋の蔵王温泉名湯舎創白濁の湯が掛け流される陶器風呂に浸かる至福の贅沢
2024.11 山形
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●1日目(東京⇒蔵王)
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2日目(蔵王滞在)
●3日目(蔵王⇒山形⇒米沢⇒東京)
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