宇都宮のまた新たな魅力に触れ、この旅最後の目的へと移動することに。初めての乗車となる、東武宇都宮線。2023年には栃木県誕生150年を記念して「いちご王国」ラインの愛称が付けられ、駅名標もそれに合わせたかわいいものに。

これから向かうは佐野。小山を経由しJRで行くこともできますが、東武宇都宮のほうが市街地に近いため便利。すっかり東武線の栃木の顔となった、4両編成のワンマン列車に乗り込みます。

東武百貨店に抱かれたホームを出て、しばらくは高架を走る普通電車。宇都宮の市街地を抜ければ車窓はのどかさを増し、枯色の田園の先にはうっすらと雪をかぶった日光の山並みが。

単線のローカル線にのんびり揺られること35分、終点の新栃木に到着。すぐにやってくる南栗橋行きでひとつ隣の栃木まで移動し、両毛線へと乗り換えます。

211系に漂う国鉄の残り香を噛みしめること15分、この旅最後の目的地である佐野に到着。前回は時間の都合で立ち寄ることのできなかったあのお寺を目指し、西日に染まる街へと歩きだします。

前回訪れた際にも驚きましたが、和洋様々な古き良き建物があちらこちらに遺されている佐野の街。特に日光例幣使街道沿いには重厚な蔵造りも点在し、城下町や宿場として栄えた往時の面影をいまへと伝えています。

夕刻の色味に旅の終わりを重ねつつ歩くこと15分、惣宗寺に到着。と正式名称で呼ぶより、関東住みの僕にとっては佐野厄除大師の名でなじみのあるお寺。出迎える重厚な山門は、かつての佐野城城門を移築したものだそう。

山門をくぐり進んでゆくと、すぐさま姿をあらわす黄金に輝く梵鐘。おぉ、これが佐野厄除大師の鐘か!ごーーーん。新年の訪れを無条件に実感させる、物心ついたころから見てきたCM。その象徴ともいえる鐘に、思わずテンションが上がってしまう。

944年に創建し、400年以上前にこの地に遷されたという歴史深い佐野厄除大師。黒瓦に金の映える大屋根が印象的な本堂に、こうしてふたたび佐野を訪れることのできたお礼を伝えます。

初詣に向けた準備が進められる境内を抜けると、通りに面したところに建つ見事な唐門が。極彩色に彩られた彫刻、金に輝く葵の御門。ここ惣宗寺は、久能山から日光へと改葬される際に徳川家康公の棺が一泊した場所なのだそう。

いつかはと思っていた佐野厄除大師へのお参りを終え、ふたたび歩きはじめる佐野の街。西日はどんどんとその力を弱め、古き良き町並みがセピア色へと染まってゆく。

夕刻から夜への移ろいを感じつつのんびり歩くこと40分足らず、この旅最後のグルメとなる『佐野青竹手打ちラーメン大和』に到着。行列のできる人気店のようですが、開店の15分ほど前に着いたため5番目の整理券を無事入手。

塩や味噌、餃子ラーメンなるものもあり迷ってしまうが、初めてはやはり王道をとラーメンを注文。席に着き待つことしばし、良き香りを漂わせお待ちかねの丼が運ばれてきます。
まずは、琥珀色に輝くスープから。ひと口含めば、ぶわっと口中に広がる豊な味わい。優しいしょうゆ味ではあるが、鶏や野菜の旨味や甘味が想像以上に溶け込んでいる。穏やかながら分厚い味わいに、またひと口もうひと口とれんげが進む。
つづいて、佐野といえばの待望の麺を。青竹を使って手打ちしているという太めの縮れ麺は、噛めばもっちもちとした食感とともに広がる小麦の旨さ。しなやかでぷるりと弾力もあり、つるりなめらかに喉を落ちてゆく。
麺を啜ってはその艶やかな食感にほほを緩め、スープを飲んではほっと息をつく。そんな幸せな往復に、あっという間に丼は空っぽに。あぁ、旨かった。お腹もこころもすっかり温められ、大満足でお店を後にします。

おいしい佐野ラーメンに満たされ、ほくほくとしたこころもちで歩くこと10分ちょっと。佐野のアウトレットをちょっとばかり覗き、善き時間になったところですぐ近くに位置する佐野新都市バスターミナルへ。ここから『JRバス関東』の運行するマロニエ新宿号で帰路へと就くことに。
8年ぶり3度目となった塩原。塩釜、新湯、そして今回新たに想い出として刻まれた元湯のぬくもり。個性的なにごり湯が、まだきっと彼の地にはたくさん隠されているはずだ。
ふらりと気軽に行ける距離に、魅惑の湯が湧いている。これはまた、まだ見ぬ湯を求めて再訪せねば。そんな企みを胸に、関東の広さと豊かさをあらためて思い知るのでした。




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