冨崎で浴びたあおさを胸へと刻み、名残惜しくもそろそろ市街地へと戻ることに。帰りも『東運輸』の川平リゾート線に乗車します。

唐人の墓からバスに揺られること20分、離島ターミナルで下車。お昼を食べるため、以前よく泊まったベッセルホテルのある浜崎町方面へ。途中ちょっとばかり迷子になりつつ歩くこと10分ちょっと、お目当ての『石垣島きたうち牧場浜崎本店』に到着。
ここは自社牧場で育てた和牛を中心とした、焼肉やステーキがメインのお店。グランドメニューにはおぉぅ、、というお値段が並びますが、ランチは打って変わってお手頃価格。相方さん調べでは、特にハンバーグがおいしいらしい。

焼肉や牛丼、もつ煮込み定食なんかにも心が魅かれますが、ここは初志貫徹で自家製ハンバーグランチを注文。160gから200、300、400とグラム数が選べ、一番小さい160gで1,100円とこのご時世にはうれしい価格。
ハンバーグは、でかけりゃでかいほどいい。そう思いこれまで生きてきましたが、今日はちょっとばかり早めの夕食のため泣く泣く160gで抑えることに。オリオン中瓶を半分こしつつ待つことしばし、旨そうな香りとともにお皿が運ばれてきます。
表面をこんがり焼かれたハンバーグからは、破けていないにもかかわらずすでに染み出る肉汁。箸で割ればそれがじゅわっとほとばしり、あぁもったいないと急いで口へ。
うわぁ、これ、肉だ。牛肉100%のたねは、思っていたものよりもだいぶ細挽き。その分口当たりなめらかで、きめ細やかなお肉が絡み合いたっぷりの肉汁を包含。粗挽きのほうが食感や風味を強く感じがちですが、細挽きでこんなにも牛感が強いとは。
そしてより牛を食べているという実感を強くしてくれるのが、独特な味付け。見てのとおりソースはかかってないものの、ご飯のおかずとしてちょうど良い塩梅。なんだろう、いま思い出してもうまく説明できない。でも強いて言うならば、焼肉屋さんらしい味付け。
ふっくらジューシーなハンバーグを頬張り、すぐさま白いご飯で追いかける。米っ喰いの僕には堪らぬ共演に、その往復が止まらない。ランチはご飯のおかわり無料なのでもう一杯とも思いましたが、牛の密度の濃さに想像以上に満腹に。味覚もお腹もたっぷり満たされ、大満足でお店を後にします。

いやぁ、これは食べたことのないタイプの旨さだった。焼肉の面影を感じる、肉感に満ちたハンバーグ。その濃密な余韻に浸りつつ、近くの『ゆらてぃく市場』でお買い物。

農畜産物をはじめ、地元のお惣菜や海産物までいろいろと並ぶゆらてぃく市場。そんななか、今年も島にんにくを自宅用に購入。普通のものより粒は小ぶりながら、香りと味の濃さが段違い。去年初めて買って以来、家では欠かせぬ存在に。
そして、これまた去年はじめてその旨さを知った島バナナ。薄い皮の下には、もっちりなめらか食感の甘酸っぱい果肉。甘さと酸味のバランスがよく、そしてほどよく香る南国感がものすごく美味。
そのお隣、自然栽培と書かれたバナナの中にはなんと種が。当たり前のことだけれど、バナナも果実。種があっても不思議はないのだが、ちっちゃい点々しか見たことがないので正直びっくり。野性味を感じる風味も相まって、こんなバナナが自然に成る石垣島ってすげぇな!とあらためて実感。

冷房の効いた部屋で、のんびりごろりと過ごす午後。あれでもそういえば、今日って雨降るはずじゃなかったのか。これならビーチにも行けたな。結局1滴も降らぬまま、肌を灼く西日のなか予約していた『島唄三線ライブ居酒屋結風』へ。

ここは去年はじめて訪れ、すっかり気に入ったお店。このあとのライブに備え、まずは冷たいオリオンで乾杯しつつミミガーポン酢から。
おじぃちゃん、昨日も食べたでしょ。そう言われそうですが、大好物なのだから仕方がない。東京では真空パックのものばかりですが、やはり本場は味も歯触りも別物。食感の楽しい上品な豚しゃぶ。そんな表現がしっくりくる旨さは、毎日食べても飽きがこない。

つづいては、沖縄県魚のグルクンを唐揚げで。片栗粉をまとい、ばりっと香ばしく揚げられた身。噛めばほっくりとした白身から、じんわり染み出す深い滋味。本当に、この子の上品で淡白な旨さには惚れ惚れだ。

去年は揚げ物焼き物中心だったので、今年は魚をと刺身4点盛りを注文。もっちり瑞々しい、旨味の詰まったまぐろ。セーイカは肉厚で、ねっとりとした食感と濃ゆい甘味が堪らない。そしてうれしい、この旅初のイラブチャー。石垣では毎年たくさんのおいしい白身に出逢いますが、僕はこれが一番のお気に入り。

真っ青な魚がこんなに旨いって、南国の浪漫だよな。人生初の沖縄八重山で抱いた感想は、十年経っても変わらないどころか深まるばかり。泡盛片手にそうしみじみと新鮮な魚をつまんでいると、相方さん熱望の鶏の唐揚げが到着。
猫舌の僕、おそるおそる挑む大きな唐揚げ。歯を入れた瞬間、熱さよりもまず飛び出す肉汁にあっと驚く。表面ざっくり、中からじゅわっとあふれる肉汁。そこには鶏の旨味とそれを引きたてるちょうど良い塩梅の下味が凝縮され、ちょっとこれはお酒もいいがご飯と一緒にがっつきたくなる逸品。

おいしい品々と島酒を味わっていると、お待ちかねの三線ライブの時間に。偶然にも、去年と同じお兄さんがステージに。
前半は三線の音色とともに、後半は一五一会に持ち替え聴く沖縄の唄。縁もゆかりもない土地のはずなのに、なぜこうも胸の奥深くを震わせるのだろう。毎度のことながら、無意識のうちに目頭が熱くなってしまう。

いや、縁もゆかりもないは、もう違うな。はじめて訪れてから十年。縁があったからこそ毎年訪れ、こうして愛おしさが深まってゆくのではないか。
竹富島に真栄里ビーチ、そして今日再会できた冨崎のあお。どれもみんな、違う顔をしている。八重山を染める、無限の色彩。同じ場所でも同じ一瞬など決してある訳もなく、だからこそそれを確かめるために毎年こうして帰ってきたくなる。
今年も無事に、八重山の夏と再会できた。肌に網膜に、そして胸へと刻まれたあおい記憶を反芻し、三線の余韻に包まれ夜の美崎町を歩いて帰るのでした。



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