キリリとしまった冬の空気の中にも陽の温かさを感じながら、遺跡内に復元された住居を見て回ります。先ほど眺めた高床式住居の先には、これまた教科書で習ったことのある竪穴式住居がいくつも復元されています。
中を覗いてみると、地面を掘って建てられているため、思ったよりも高さがあります。造りは日本家屋とは比べ物にならないほど質素ですが、先ほどの大型竪穴式住居同様、このような暮らしを原点として、木と土を巧みに組み合わせて建物を建てるという文化に発展してきたことがしっかりと感じられます。
一通り復元された建物を回ったところで、雪に埋もれた怪しいシェルターのようなものを発見。管理用施設かとも思いましたが、踏み跡が妙に新しいので、気になって近付いてみることに。
重たい扉を開けると、中には発掘途中を思わせるような土の断面が。盛土と呼ばれるこの部分には、穴を掘った残土や壊れた土器、土偶などが堆積しているそう。パッと見ただけでも、土器と思われる欠片がいくつも目に入ります。
鮮やかな冬の色彩に彩られた遺跡をあとにし、再び建物内へと戻ります。中には無料で見られる展示施設、さんまるミュージアムが併設されており、見学してみることに。
中へと入ると、早速巨大な土器がお出迎え。表面にはしっかりと縄のような装飾が施され、縄文時代の名の由来を久々に思い出します。
中には様々な出土品がたくさん展示されており、この土偶もその中のひとつ。先程の土器と同様、それぞれに凝った装飾が施されています。
これは集落跡から発掘された、真鯛の骨。他にも貝殻や動物の骨も展示されており、ここに間違いなく人々の暮らしがあったことを強く実感させます。
ミュージアム内に溢れる数々の出土品。重要文化財と書かれたものも多々あり、ここまでくるとなんだか特別なものでもないのでは?と錯覚を起こしてしまいそうなほど。
そんな中でも僕が目を離せなかったのは、この針や釣り針。骨や角といった硬い素材を、ここまで繊細に細工する技術。この美しい造形を目の当たりにし、思わず息を呑んでしまいます。
大量の展示物に圧倒されつつ、それぞれを見て知って楽しめるこのミュージアム。後半にはこんな土器の雛壇が作られ、製作時期と様式の移り変わりを視覚的に体感できるようになっています。
どの出土品も貴重なものばかり。のはずですが、ここまでいっぺんにたくさん目にすると、もう可笑しくなってきてしまいます。それは悪い意味では無く、それほど縄文時代の暮らしが身近に感じられるということ。
歴史にまったく興味の無い僕。これまでも遺跡の出土品は博物館やお城の展示などで目にすることはありましたが、あぁ、土器だ。くらいにしか思いませんでした。だからこそ、ここも思い付きで寄り道してみたに過ぎませんでした。
ですが、今回三内丸山遺跡を訪れてみてびっくり。復元されたものから当時の姿そのままのものまで、様々なものがたくさん詰まったこの遺跡。僕にはその歴史的価値の違いは分かりませんが、初めて、遺跡って面白いんだと感じることができました。
それはただ出土したものを見るだけでなく、実際に人の暮らしがあったであろう、ということが感じられるこの場所で見るからこその実感なのでしょう。そしてこの展示のボリューム。貴重な品を仰々しく少しだけ、ではなく、これでもかとたくさん並べられ、当時の息遣いを身近に感じることができる。
今回初めて、教科書でしか見ることの無かった白黒写真のこの時代のものと、自分の生きる現代との繋がりを肌で感じることができた。ここに来なければ、僕がそう思うことは無かったかもしれません。いやぁ、面白かった。青森を訪れる際には、三内丸山遺跡はお勧めです。
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