深き白に染められて ~厳冬の八甲田へ 1日目 ③~ | 旅は未知連れ酔わな酒

深き白に染められて ~厳冬の八甲田へ 1日目 ③~

青森駅前食堂と居酒屋おさない 旅グルメ

駅前方面へと向かい、今宵の酔い処、お目当ての『おさない』に到着。

実はここ、15年前にはくつるで到着した際に朝食を食べに来たお店。青森の酒場を調べる中で、この位置と店構えに記憶が重なり、店名は覚えていないながらも間違いないと確信。

そして今ここへ立ち、やはりそうだったとその時の思い出がよみがえります。あの時はいか刺し定食を食べたっけ。安いのにいかは新鮮で美味しく、サービスといって付けてくれた小鉢も美味しかったっけ。

青森駅前食堂と居酒屋おさないほたてのひも刺身たちの煮付けにしんの切り込み

1階が食堂、2階が居酒屋と分れているようで、僕はもちろん階段を上り2階へ。早速地酒と気になったつまみを数品注文し、暖かい店内で冷たい酒を味わいます。

そして運ばれてきたこの3品。まずは手前の帆立のひもの刺身から。大好物の帆立のひもですが、こうやってこれだけをお刺身で食べるのは初めての経験。

オフホワイトのきれいなひもを数本口へと入れれば、ジャキッ!コリッ!とした良い歯ごたえ。臭みは全く無く、程よい磯の香りと甘み、旨味が噛むほどに広がります。旨い、旨すぎる!貝柱より断然こちらの方が好み。

続いてお隣のたちの煮付け。今が旬の鱈の白子はふるふるとした食感で、凝縮された旨味がたっぷり。甘さの無いすっきりとした薄目の味付けで、淡白な白子の旨味を最大限に活かしています。

奥にはこれまたお気に入りの青森郷土料理、にしんの切り込み。麹でしっかりと漬けられたにしんはこれまた旨味の塊。この3品で何杯青森の旨い酒をおかわりしたか。

青森駅前食堂と居酒屋おさないかすべの煮付けほたての卵バター炒め

ここのお料理はやっぱり美味しかったと確信し、食欲に火が付いた僕は追加で注文。

左はかすべの煮付け。かすべとはエイのことで、柔らかな身とこりっとした軟骨の食感の対比が美味しい食材。こちらもたちの煮付け同様、シンプルかつ最適な味付けで、素材の味を邪魔せずお酒も進むというバランスの良さ。魚の美味しい食べ方を知っている港町だからこその味付け。

そしてお隣は、帆立の卵バター炒め。僕の大好物である帆立の卵だけを使い、ねぎと一緒にバターで炒めたシンプルなひと品。これがまた激ウマ。パンパンに張った卵には、甘味と風味が詰まりに詰まっています。

青森の帆立の旨さは生半可なものではありません。脇役であるはずのひもや卵が、主役の貝柱に追い付け追い越せの存在感を放つ。その理由はただひとつ、帆立そのものが新鮮で良いものだから。

ほろ酔いで歩く雪の青森

15年振りに再訪したお店で出会った、期待を裏切らない、いや、それ以上の料理の数々。自分の胃がひとつしかないことを残念に思いつつ、数あるメニューの中から自分で厳選したつまみ達と愉しんだ、何杯もの青森の酒。

贅沢、実に贅沢。青森に来て本当に良かった。極上の余韻を味わいながら、雪の舞う青森の夜を歩きます。

厳冬の青森夜に佇む海峡の女王青函連絡船八甲田丸

薄白い夜空の中静かに佇む、八甲田丸。純白の雪を思わせる白と黄色のツートンボディーが、凛と張りつめた冬の空気に彩りを与えます。

夜の青森雪に埋もれる産業遺産とライトアップされた青森ベイブリッジ

雪と寒さが色彩をも奪ってしまったかのような、モノクロームの産業遺産。そんな昭和の遺構を見守るように、ライトアップされた青森ベイブリッジが背後に聳えます。

夜の青森雪に埋もれる桟橋可動橋

80年もの間、本州と北海道を結び、人と物を運び続けた青函連絡船。かつてここには線路が敷かれ、いくつもの貨車が出入りしていました。

その歴史の火が消えてから四半世紀以上が過ぎ、そこにあるのは役目を終えて静かに残された、八甲田丸と可動橋のみ。当時の賑わいをこの目で見たことの無い僕にとって、その栄華は母の話と、映像の中のもの。そのことが、僕の心を一層連絡船と津軽海峡に縛り付けるのかもしれません。

夜の青森雪に浮かぶワラッセのねぶたの灯り

夜空に佇む女王は、旅の心を切なくさせる。青森と連絡船、そして哀愁。それらは僕にとって切っても切れない青森のイメージそのもの。できれば一度味わってみたかった、当時の連絡船。でもそれは永遠に叶わない夢。あぁ、切ない。

旅の夜の切なさに存分に身を置き、青森に来たという実感を今一度味わったところで、宿へと戻ることに。ベイブリッジの下には、明るい館内が透けて見える、ねぶたの家ワラッセ。近くへと寄れば大きなねぶたが輝く姿が見え、ねぷたとねぶたのはしごをしたいという夏の夢が再燃します。

厳冬の青森雪国での夜

夏の青森、冬の青森。どちらも好きですが、やはり雪国は冬に来た方が良いかもしれない。雪や寒さと戯れる度に、この季節が好きになる。冬には冬の熱さがある。それを味わいたいがために、こうやって冬の北国へと来てしまうのです。

青森夜のお供にねぶた純米酒

旅情にどっぷりと浸かったところでホテルへと戻り、大浴場で冷えた体を温めます。

雪に埋もれたこの街で味わった、味覚と郷愁。その名残をつまみに、今宵最後の酒を味わうひととき。すっきり辛口のお気に入り、ねぶたを片手に、明日からの秘湯で過ごす時間に思いを馳せ、胸を熱く躍らせるのでした。

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深き白に染められて~厳冬の八甲田へ~

呼吸をするかのように冬の海に佇む海峡の女王青函連絡船八甲田丸
2015.2 青森

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