偕楽園に常磐神社、千波湖と水戸を満喫しいよいよ港へと移動することに。今度は弘道館に水戸城跡も行ってみなければだな。そんな再訪の願いを抱きつつ、駅へと向かいます。

駅ビルでこれからひと晩のお供を買い込み、ホームへ。そこに佇むのは、2両編成のディーゼルカー。がらがらと小気味よいエンジン音を奏で、出発のときを待っています。

空いてる転換クロスシートに腰を掛け周りを見渡せば、子ども時代を思い出すような雰囲気。この6000形は、1985年に大洗鹿島線が開業する際に導入された車両。昭和末期生まれということもあり、回る扇風機がなんとも懐かしい。

並走していた常磐線と別れ、高架を進んでゆく気動車。車窓は次第にのどかさを増し、黄金に輝く田んぼが延々と続くように。鹿島臨海鉄道から眺める田園のうつくしさには、毎度のことながら胸を打たれる。

豊かな実りの季節を愛でつつ揺られること14分、あの壮大な旅への玄関口である大洗に到着。駅前で出迎えてくれるのは、漁港の町らしいカジキマグロと漁師のモニュメント。

駅前からのびる大通りをまっすぐ進み、大洗マリンタワーの横に位置するスーパーのセイミヤへ。ここで水やビールなどの重たいものやお惣菜にパックご飯と、最後の買い出し。駐車場には県外ナンバーの車やバイクも多く見られ、みんな同じことを考えているなと思わずにやけてしまう。

駅から歩くこと約20分、僕を海原へと解き放つ大洗港フェリーターミナルに到着。水戸駅からのバス便もありますが、途中スーパーにも寄れる大洗鹿島線でのアクセスが僕は好き。

そのままターミナルビルを通り越し、これからお世話になる船にごあいさつ。燦然と輝く太陽が誇らしげな、さんふらわあふらの。この船に乗るのは3度目。思えばおととしから、なんだかんだで毎年乗船してるんだな。

前回は自動チェックイン機で簡単に乗船手続きできましたが、ルームキーが磁気カードから紙に変更になり窓口での手続きが必須に。番号札を発券し待つことしばし、手続きを終え待合室へ。
そしてついに迎えた、この瞬間。徒歩乗船開始のアナウンスを聞き、重たい荷物を抱えて歩く長い長いボーディングブリッジ。だんだんと大きさを増してゆくフェリーの存在感。船出を目前にしたこの武者震いにも似た感覚は、一度体験してしまうともう取り返しがつかない。

ボーディングブリッジを抜けると、すぐさま北海道らしい情景がお出迎え。船内のあちこちに、北の大地を思わせるモチーフが散りばめられています。

4階の乗船口からエスカレーターに乗り、5階のプロムナードへ。いつもならここで一目散にソファーの場所取りをするのですが、今回はそのまま自室へ。

というのも、今回は柄にもなく大奮発して個室を取っちゃったから。この旅が頭に浮かんだとき、個室に乗ることをテーマに決めた。ちょうど一人でも貸切料金のかからないシングルキャンペーンをやっていたので、意気揚々とスーペリア和室を空室待ち。

でもそこはやっぱり人気の航路、空室など出るはずもなく敢え無く敗退。一度は慣れ親しんだカプセルタイプのコンフォートを予約したものの、出発2日前にえいやっ!とスーペリア和洋室に変更。あぁ痛い痛い、お財布が痛がっている。

1泊2日で、栄一さん4人ちょっとかぁ。我ながらやってんなこれ。そう思いつつも、待ち構えていた自室の豪華さにテンションは急上昇。
靴を脱いで上がる和洋室。ベッドのほかスツールとテーブルが置かれ、シャワーブース付きの水回りも。さらにタオルにパジャマ、スリッパに洗面用具と至れり尽くせり。

ちなみにパジャマは室内専用のようなので、短パンに履き替え大浴場へ。ちょうどこのとき、ちいかわの映画とコラボ中。くりまんじゅう兄貴、どうしても親近感を抱いてしまう。

船内のいたるところに散りばめられる、ちいかわたちの装飾。これを目当てに乗船しているファンも多いようで、うれしそうに写真を撮る姿をあちらこちらで見かけます。

いやもうこんなの、かわいすぎるじゃん。ちいかわ船長にハチワレコック、うさぎ整備士。映画を見ていなくても、ついつい写真を撮ってしまう。

ちいかわたちを探しつつ、まずは旅の汗を流すべく大浴場へ。身体を洗い、大きな湯船へ。目を閉じて、ひとつ大きな深呼吸。あぁ、最高だ。のりものとは思えぬゆとりと自由。それこそが、船旅の最大の魅力。

船上での湯浴みという最高の非日常を愉しみ、茹だったところで一旦自室へ。冷蔵庫で冷やしておいたビールを引っ提げ、海風に当たるべく甲板へ。

出港準備を控え、まだ静かな甲板。足元からかすかに伝わる車を積み込む音と振動が、これからはじまる壮大な船旅への期待を高めてゆく。

そんな胸の高鳴りと湯上がりの火照りをクールダウンさせるべく、冷たい金星で祝杯を。ちいかわ船長、これから苫小牧までよろしくお願いしますよ。

夜気と黒ラベルの冷たさに汗もひいたところで自室に戻り、いよいよ船旅の醍醐味であるひとり船上宴会開始。
太めに切られた田舎金平ごぼうは、根菜のほくしゃき食感と豊かな風味が印象的。濃すぎずの味付けで、ぴりりときいた一味が地酒を誘う。北海道産さんまフライはさっくりと揚げられており、しょう油で食べるのにぴったりの旨さ。セイミヤのお惣菜、いい味出してるね!
そしてやっぱり欠かせない、茨城といえばのそぼろ納豆。割り干し大根と納豆を合わせて味付けされたもので、ふっくらとした豆の風味と大根のしゃきこり感がたまらない。
そんな旨いつまみに合わせるのは、水戸は明利酒類の副将軍純米吟醸。するりと飲みやすく、さらりと甘酸っぱさが広がったかと思えば心地よい辛さが追いかけてくる。

至福の宴に心酔していると、あっという間にもう19時半過ぎ。もうまもなくか。船旅のなかでも最高の瞬間を見逃すわけにはいかないと、宴の途中ながら展望デッキへと向かいます。

足元からは、出港に向け力強さを増した機関の振動。商船三井伝統のオレンジ色のファンネルからは、その心臓が吐き出す煙。いよいよ航海がはじまるのか。迫りくる重油の匂いに、興奮はもう最高潮。

係船杭から外されたロープが巻き取られ、もうまもなくであることを教えてくれる。この瞬間、何度経験してもゾクゾクする。

今か今かと首を長くして見入っていると、エンジンの唸りを一段と強めさんふらわあふらのはついに離岸。これからはるか754㎞、17時間45分の旅路がはじまる。

ゆっくりと、しかし確実に遠ざかってゆく大洗港。なぜこうも、船出というものは胸に来るのだろう。このあたたかな感傷を味わいたいがために、こうして船旅というものを欲してしまうのかもしれない。

ファンネルの吐く煙を浴びつつ眺める、ゆっくりと流れる街の灯り。ありがとう茨城、また逢う日まで。煙る煌めきが、今日半日の記憶を想い出へと変えてゆく。

さんふらわあふらのはついに大洗港を出港し、太平洋という果てしなく広がる海原へ。加速度的に小さくなりゆく陸地の輝きをしかと見送り、船出という大切な儀式を胸の奥深くへと刻みこもう。

船旅だからこその旅情にどっぷりと浸り、その余韻を引きずったままふたたび自室へ。あとはもう、海の鼓動に揺られるのみ。そんな宴の続きにと開けるのは、日立の森島酒造が醸す富士大観純米吟醸。とろりと口当たりまろやかで、心地よい甘味と酸味、そしてキレをあわせ持つ旨い酒。

地酒とともにおつまみを平らげ、そろそろ腹固め。水戸駅のNewDaysで購入した、大洗はお弁当の万年屋が調製する水戸印籠弁当を開けることに。

箱から取り出せば、ばーんという効果音が聞こえてきそうな弁当箱が出現。輝く葵の御紋に、最後の最後まで家まで持って帰ろうかと悩んでしまった。

2段構成となっているお弁当、まずは上段のおかずから。豚の梅和えや梅の甘露煮といった水戸の梅にちなんだもののほか、じゅんわり味が染みたがんもや肉厚のしいたけ、人参の煮物も。
下段の炊き込みご飯を彩るのは、やわらかなたこの桜煮にぷりっと旨味の込められたつくば鶏の照り焼き。支えるご飯の味付けは控えめで、おかずとともに食べるのにちょうど良い塩梅。

おいしい駅弁に満腹になり、最後の1本をのんびりちびちびやることに。常陸太田は岡部合名会社の松盛純米吟醸。酸味や甘味に、ほんのり感じるちょっとした渋み。これまであまり茨城の酒を飲む機会がなかったけれど、どれもみんなおいしい酒ばかり。

お腹も落ち着いたところで、ふたたび大浴場へ。洋上での湯浴みという船旅だからこその至福に身もこころも茹だり、汗を落ち着かせようと海風に当たりにゆくことに。

甲板を目指す道中にも、いたるところで姿を見せるちいかわとその仲間たち。

コラボ企画で船内フォトラリーを開催しているようで、制覇すると特別な御船印がもらえるそう。みんな船内図を片手に、あちらこちらを探索しています。

のりものとは思えぬ広々とした空間で、各々が好きなように過ごす自由。これこそが、船旅の醍醐味だ。そんなフェリーならではの情緒を噛みしめつつ夜の甲板へと出れば、全身を撫でてゆく強い海風。足元から聞こえる波を蹴る音、ときおり頬に当たる波しぶき。ここがまぎれもなく海の上であることをふと思い出す。

9年前に竣工した、さんふらわあふらの。この船の特徴といえば、やはりこの二層吹き抜けのプロムナード。いつもはここで食べたり飲んだり。個室には個室の良さが、そしてコンフォートにはコンフォートの良さがある。こうして乗り比べてみるからこそ、その違いを実感できる。

部屋へと戻り、残りの地酒をちびちび味わうじんわりとした時間。ここに来て、ちょっとばかり揺れが強くなってきた。でもそれが、船に抱かれているという実感をもたらしまた心地よい。
常陸の酒を飲み干したところで、歯を磨いて就寝準備。それもすべて自室の中で賄えるという贅沢。のりものらしいちょっとした手間がうれしい、コンフォートのもつ旅情。一方で、個室のこの快適さや便利さは好対照。
掛け布団をはがしベッドに転がれば、背中に伝わるゆったりとした波の鼓動。はぁ、幸せだ。自分だけに用意された空間という贅沢さに身を委ね、いつしか深い眠りへと落ちてゆくのでした。



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