金ケ崎要害歴史館でこの地の歩んできた歴史に触れ、時刻はちょうどお昼どき。すぐ隣に位置する『侍屋敷大松沢家』で昼食をとることに。
立派な門をくぐると、そこに広がるのは目にも鮮やかな新緑が埋め尽くさんとばかりに輝き乱れる広いお庭。思わずうわぁ、すげぇや。とひとり呟きつつ、これまた趣深い近代の木造家屋へとお邪魔します。
通されたのは、窓辺の席。もう、新緑があまりにうつくしすぎて。このとき覚えた鮮烈な感動を表す言葉が、僕には見つけられない。
この贅沢は、どう頑張っても僕の写真や言葉では伝えきれない。画素や語彙からはみ出んばかりの新緑を浴びつつ飲む、至福の琥珀。あまりにもこの時間が鮮やかで、今日というこの日に金ケ崎に来るべくして導かれたとしか思えない。
手作りの小鉢とともにビールを味わい、網膜を灼く新緑に目を細め。そんなたおやかな時の流れに心酔していると、注文していた茶そばとかき揚げのセットが運ばれてきます。
鮮やかな緑色のおそばはコシがあり、啜れば香る庭園に溢れる新緑を思わせるようなふんわりとしたお茶の風味。かき揚げはサックサクに揚げられており、野菜の甘味がものすごく引き立つ味わい。〆にふるふるの茶碗蒸しも平らげ、何とも贅沢な昼食にお腹もこころも満たされます。
名残惜しいほどの新緑の潤いに別れを告げ、駅を目指し再び歩きます。するとがさごそと飛び出ててきた2頭の動物が。え、たぬき?と思いましたが、特徴を見るとアナグマのよう。野性のアナグマ、初めて見た。
緑に包まれた大松沢家の庭園から駐車場へと抜けると、その横にはこれまた立派なお屋敷が。茅葺であろう大屋根は鉄板で覆われていますが、木材の風合いから長い歴史を重ねてきたことが伝わるよう。
重厚感漂う佐藤家の横を抜けると、表小路と呼ばれる通りへ。両側を緑豊かな生垣に彩られ、通り沿いに大屋根の点在する姿に往時の光景を重ねてみます。
緑の生垣が続くなか、ひときわ目を引く、艶やかなつつじ。古いお屋敷もさることながら、このうつくしい生垣やお庭を維持するのは相当大変なことでしょう。
当初は定番の平泉に寄るつもりでしたが、調べていて目に留まり初めて訪れることとなった金ケ崎。ここで出逢えた新緑に染まる豊かな時間は、決して忘れ得ぬ大切な想い出に。
本当に、いいところだったな。これだから旅することをやめられない。鮮烈な緑と藩政時代の濃厚な空気感の余韻に抱かれ、また違う季節の表情も見てみたいと再訪を願うのでした。
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