木曽路にゆらめく若き春 ~まだ見ぬいつもの、その先へ。3日目 ①~ | 旅は未知連れ酔わな酒

木曽路にゆらめく若き春 ~まだ見ぬいつもの、その先へ。3日目 ①~

3月上旬木曾川のほとりの棧温泉で迎える爽やかな朝 旅の宿

木曽路で迎える静かな朝。窓から差し込む明るさに起こされ外を見てみれば、山の向こうから漏れくる朝日の気配。今日はしっかり歩く予定。晴れの予感に心弾ませ、朝の爽やかな湯浴みを愉しみます。

3月上旬木曾川のほとりの棧温泉2泊目朝食
この2泊3日、冷たい薬水のおかげですっかりと心身のコリが取れてしまった。温冷交互浴で芯からすっきりと空っぽになったところで、お待ちかねの朝食を。

ホクホクの身の赤魚、昆布の旨味ののった湯豆腐。ほっくりと甘い蒸し野菜に、ご飯を一層進ませるとろろ。朝からゆったりと和食を味わい、食後にコーヒーとチョコで一服。こんな穏やかに流れる朝は、旅先ならではの贅沢。

3月上旬木曾川のほとりの棧温泉客室から木曽川の最後の煌めきを眼に焼き付ける
部屋へと戻り、出発の時刻までぼんやりと眺める木曽川のきらめき。対岸の旧国道を走る車も少なく、谷に響くのは川の流れる音と鳥の声だけ。時折聴こえるうぐいすのさえずりが、若い春を感じさせてくれる。

3月上旬中央西線上松駅
本当はコミュニティバスで駅へと向かうつもりでしたが、そのことを女将さんに伝えるとご厚意で送っていただけることに。たった一人のために申し訳ない。そう何度もお断りしたのですが、宿の皆さんの優しさに甘えてしまいました。

3月上旬中央西線上松駅停車中のJR東海313系中央西線普通列車中津川行き
宿から車で5分ちょっと、上松駅に到着。すでに停車中の普通列車に乗車し、発車のときを静かに待ちます。

3月上旬上松駅車窓から眺める王滝森林鉄道の保存車両
通過待ちのため発車はまだまだ先だな。そう思いつつ窓の外を見てみると、そこには林鉄の車両の姿が。

この車両は、昭和50年に廃止された王滝森林鉄道で使用されていたもの。ディーゼル機関車、木材の積まれた運材台車、そして小さな客車。こうして見ていると、今にも再び動き出しそうな錯覚が。

3月上旬中央西線車窓から望む寝覚の床
僕が生まれる6年前まで、こんな小さな列車がこの地を行き交っていたんだ。林鉄の走る風景に思いを馳せていると、列車は定刻に上松駅を発車。走ることしばし、鉄橋の下に奇岩の並ぶ光景が。ここは、古から木曽川の景勝地として知られている寝覚の床。車窓からちらりと覗く姿に、思わず得した気分に。

3月上旬中央西線車窓から眺める木曽川
屈曲部にあたる寝覚の床だけ、異様に川幅が狭くなる木曽川。浸食された狭い岩場を抜けた流れは、再び広い川原を取り戻します。それにしても、本当に平地がない。狭い谷底は川に占拠され、残された余地を国道と分け合いつつ走る中央西線。

3月上旬中央西線車窓から眺める貯木場
昔から良質な木材が産出される木曽谷。最盛期には、この深い森の中に総延長400㎞もの森林鉄道が張り巡らされていたそう。もうその雄姿を見ることはできませんが、車窓に現れる大きな貯木場からは今なお林業が盛んであることが伝わります。

3月上旬中央西線車窓から望む木曽川に架かる古い吊り橋
ひたすら谷の中腹を行く車窓を眺めていると、見るからに古そうな吊り橋が。年季の入ったコンクリートの主塔、そこに張られたワイヤーに吊られる華奢なトラス。現役かは分かりませんが、古豪の渋い姿に思わず目を奪われます。

3月上旬中央西線車窓に広がる木曽谷の風景
谷幅が広がるにつれ、段丘上に増えてゆく人家の姿。先ほどまですぐ対岸に迫っていた山も遠くなり、車窓は一気に開けた印象に。

鳥居峠で奈良井川に別れを告げて以来、ひたすら木曽川と寄り添い続ける中央西線。谷の中わずかに許されたルートを紡ぎ、それでもまだまだ木曽谷は終わらない。

僕の生まれた街、そしていま住む街。そこから二条のレールで繋がっている。そのことが俄かに信じがたいほど、中央西線の車窓は独特なもの。延々と谷を行く歴史ある中央本線の姿に触れ、鉄路の繋ぐ浪漫というものが改めて深く胸に刻まれるのでした。

木曽路にゆらめく若き春 ~まだ見ぬいつもの、その先へ。~
3月上旬春の気配漂う妻籠宿
2023.3 長野/岐阜/愛知
旅行記へ
●1日目(東京⇒棧温泉)
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2日目(棧温泉滞在)
●3日目(棧温泉⇒馬籠宿⇒旧中山道⇒妻籠宿⇒名古屋⇒東京)
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