鎌先温泉で迎える、この旅最後の朝。3つの宿を巡り4泊したというのに、あっという間にこのときを迎えてしまう。そう思えるのは、今回の旅も充実していたからこそ。
黄金に染まる湯ですっきりと目を覚まし、お待ちかねの朝食を。食卓にはおいしそうな和の品々が並びます。
こんがりパリッと焼かれた鮭、手作りの優しさに溢れるほんのり甘い玉子焼き。これまた穏やかな味付けの切り干し大根に、定番の海苔や納豆と、どれもご飯に合うおかずばかり。
そして今朝もやっぱり驚いたのが、ご飯のおいしさ。瑞々しく粒だったお米はもっちもちと弾力があり、それでいて重たさのない口触り。噛めば一粒ひと粒が存在感を放ち、豊かな甘さを広げてくれる。
おいしい朝食にお腹も心も満たされ、金に輝く鎌先の湯でこの旅最後の一浴を。市街地から離れ、山の中にひっそりと佇む小さな温泉街。そこに湧く力強い湯を心に刻み、江戸時代からの面影を残す最上屋旅館に別れを告げます。
またひとつ、良い湯良い宿に出逢うことができた。鎌先の湯の香の余韻に包まれつつ、『きゃっするくん』に乗車します。
コミュニティバスに揺られること20分、白石駅に到着。乗り換えとしてでなく、初めてきちんと訪れた白石の街。城下の面影に優しさ滲むうーめんと、この街で出逢えた良き記憶を胸に改札へと吸い込まれます。
ここからは東北本線の普通列車に乗車し、一路仙台を目指すことに。この区間を在来線で移動するのは、一体どれくらいぶりだろうか。今は亡き北斗星で駆け抜けたことが、ただひたすらに懐かしい。
白石駅を発車して走ることしばし、減速したかと思えば次の東白石駅に停車。対岸とは白石川で隔てられ、駅前にはか細く走る道路のみ。ほんのり漂う、秘境駅のような趣。こんな小さな発見と出逢えるのも、のんびりとした列車旅の醍醐味のひとつ。
速すぎず遅すぎず、丁度よい速さで流れる田園風景。速さの高みを目指し時間的ゆとりをくれる新幹線も良いけれど、在来線のしっくりくるこの速度感がやけに心地良い。叶わぬ願いと知りつつも、特急列車や普通列車で旅する日が戻ってくれたらと想ってしまう。
僕の中に残る東北本線の記憶を手繰っていると、50分足らずで終点の仙台駅に到着。この旅も残すところあと半日、東北の夏の名残りを最後まで満喫することに。
時刻はちょうどお昼どき。さらにこの日は楽天の試合があったようで、仙台の街は平日というのに想像を超える大混雑。お昼はここ!と決めていた『たんや善治郎』も御多分に漏れず長蛇の列で、本店は諦め駅ビル内の牛たん通り店の列に並びます。
昔から行列嫌いで、余程でなければ並ぶことはしない僕。でも、今日はがんばった。なかなか進まない列のなか辛抱すること小一時間、ようやく入店。(料理が出てきたらさ、延々と写真撮ってアップして、箸でつんつんしながらしゃべってないで、ちゃんと食べようよ・・・。)
前は出張族が多くて回転が良かったんだけど・・・。このあと山寺に行く予定、狂っちゃったな・・・。そんなちょっとばかりのモヤっと感をビールで呑み込みつつ待つことしばし、お待ちかねの牛たんとの再会の瞬間が。
今回注文したのは、上選極厚真中たん定食。一本の牛たんから1~2枚しか取れないという、一番柔らかい部分を使用した定食です。
魅惑的な分厚い塊を、サクッとひと口。たんとは思えぬ柔らかさと歯切れの良さの後、ぶわっと広がるどこまでも豊潤な肉汁の波。ギュッと凝縮されたたんの香りや旨味、香ばしさが口中に溢れ、間髪入れず麦飯が欲しくなる。
たんでひと口ふた口、南蛮味噌でもうひと口。お漬物でさっぱりしたところで旨さに満ちたテールスープを啜れば、また分厚い牛たんへといきたくなる。そして〆には、麦とろご飯。もっとじっくり味わいたいのに、箸を止めることができずあっという間に平らげてしまいました。
6年ぶりに再会できた、善治郎の真中たん。久々に食べてやっぱり実感、僕の好みど真ん中。たんの旨さを最大限に感じさせてくれるシンプルな塩味、歯ごたえと柔らかさの絶妙な共存、そして何より溢れんばかりに詰まった旨味。テールスープもこれまた絶品で、この記事を書いているだけでもよだれが止まらない。
久々に味わった仙台牛たんの本気の旨さに圧倒され、大満足でお店を後にします。山寺へは行けなくなったけれど、この味に再会できただけでもう充分。急遽の予定変更は旅には付きもの、午後は仙台の街歩きへと繰り出します。
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