栗駒蔵王、名残り夏。~金銀乳白いで湯旅 5日目 ④~ | 旅は未知連れ酔わな酒

栗駒蔵王、名残り夏。~金銀乳白いで湯旅 5日目 ④~

9月上旬晩夏の仙台牛越橋より望む広瀬川と釣り人の姿 旅グルメ

三居沢の地で近代化遺産と荘厳な滝に出逢い、次なる目的地を目指します。乗るつもりだった『るーぷる仙台』が目の前で行ってしまったので、ここからのんびり歩いてゆくことに。

悠々と流れる広瀬川には、長い竿を操る釣り人の姿。鮎を釣っているのでしょうか。これほど市街地に位置しているというのに、渓流釣りができるという環境の良さに驚きます。

9月上旬晩夏の仙台大崎八幡宮一之鳥居
三居沢のお不動様からのんびり歩くこと約15分、るーぷる仙台のバス停ひとつ分進んだ大崎八幡宮に到着。仙台と山形を結ぶ作並街道沿いに建つ、大きな赤鳥居が印象的。

9月上旬晩夏の仙台大崎八幡宮350年以上の歴史を持つ二之鳥居
歴史ある街道沿いに聳える一之鳥居をくぐると、がらっと一気に変わる空気感。深い森を背負うように佇む二之鳥居は、350年以上も前に建立されたものだそう。

9月上旬晩夏の仙台大崎八幡宮御社殿へと続く長い石段
藩政時代より残る重厚な石造りの鳥居をくぐれば、長く続く急な石段が。9月上旬、まだまだ暑い時期。額に汗を感じつつ、一歩一歩踏みしめ登ります。

9月上旬晩夏の仙台大崎八幡宮朱塗りの三之鳥居と表参道
噴き出す汗と乱れた呼吸を感じつつ石段を登り切れば、朱塗りの三之鳥居とそこから奥へとのびる表参道がお出迎え。すぐ足元に幹線道路が走っているとは思えぬような静けさが境内を包みます。

9月上旬晩夏の仙台大崎八幡宮石段と長床
周囲の市街地とは一線を画す、凛とした空気を漂わせる境内。伊達政宗公の時代より続く鎮守の森が、喧騒だけでなく時の流れからも神社を護っているかのよう。

9月上旬晩夏の仙台大崎八幡宮420年近くの歴史を持つ国宝の御社殿
そしてついに、国宝である御社殿とご対面。黒漆に優美な金の装飾が映える御社殿は、安土桃山時代の文化を現代へと伝える貴重な生き証人。改修工事のため大部分が覆われていますが、ちらりと覗く破風だけでも見る者の眼を釘付けにするような迫力が。

9月上旬晩夏の仙台大崎八幡宮改修工事中の御社殿の見事な装飾
テントの下には、あまりにも煌びやかで優美な装飾が。社殿を引き締める黒漆と極彩色の、対極ともいえるような対比の妙。思わず息を呑み、ただただ圧倒されるばかり。

9月上旬晩夏の仙台大崎八幡宮境内を歩く鶏
戦火を逃れ、仙台藩の栄華を今へと伝える大崎八幡宮。瑞鳳殿にも通づる凛とした荘厳さは、政宗公の美意識というものが宿るよう。

こんなに何度も仙台を訪れていて、なぜ今まで来なかったのだろう。そう思うと同時に、これは改修工事が終わったらまた訪れてみなければなるまい。そんな再訪へと繋げる宿題を胸に、お参りを終えて駅へと戻ります。

9月上旬晩夏の仙台うまい鮨勘名掛丁支店
るーぷる仙台で駅へと戻り、お土産を買い込みこの旅最後の東北グルメを味わうことに。今宵の宴にと選んだのは、『うまい鮨勘名掛丁支店』。これまで何度も訪れたことのある、手軽においしいお寿司の食べられるお気に入りのお店。

6年ぶりの再訪に嬉しさを覚えつつ、三陸や東北産を中心にあれこれ注文。もっちりと赤身の旨味の濃いかつお、とろりと脂の甘味広がるめばちの中とろ。呑兵衛殺しのばくらい軍艦に、ごりっとした歯ごたえが堪らないつぶや石垣貝。最後に塩水うにの旨さに酔いしれ、大満足でお店を後にします。

9月上旬晩夏の仙台夜の仙台駅
ひょんなことから、久しぶりにゆったりと回ることのできた仙台の街。何度訪れても新しい魅力や未知なる発見がある。だからこそ、次も、またその次も訪れたい。ほろ酔い気分で夜空に浮かぶ駅舎の眩しさに目を細め、再訪の願いを託し改札へと吸い込まれます。

9月上旬晩夏の仙台E5系はやぶさ号とE6系こまち号の連結部
夏の締めに、良い旅だった。旅という趣味を始めてからずっと感じてきた去り際の切なさも、そういえばここ最近は薄れつつある。もちろん寂しい。でもその寂しさの質が、変わってきた気がする。

9月上旬晩夏のE6系こまち号東京行き旅の締めに蔵王純米吟醸
それまでは、ネガティブな意味での切なさだった。自分なりに色々と大変だった時期、旅は生き甲斐であり逃避でもあった。だからこそ、現実の待つ生まれ故郷東京へと引き戻されるこの時間が堪らなく切なかった。

でも今感じる寂しさは、純粋に好きな旅先から離れることに対する寂しさ。今回も良い旅だった。だからこそ、もう少しだけその余韻に浸っていたい。そんな胸の奥から満ちるような、優しい寂しさ。

9月上旬晩夏の東京駅E6系こまち号車体に輝くエンブレム
普通に旅すること自体、叶わぬ日々が続いたここ数年。僕の夏からねぷたの灯が消え、ついに八重山のあおさも失せ。去年の夏は、思い出すだけでも息が詰まるような灰色だった。

そして今年、僕の夏にあおさが、灯りが、そして緑が戻ってきてくれた。

6月、2年ぶりに全身に浴びた八重山のあお。8月には、3年ぶりにねぷたの灯りの洪水に呑み込まれた。そして今回、8月には味わいきれなかった東北の夏の豊かな緑に染められた。

春夏秋冬、味わいたいがために旅をする。どの季節も甲乙つけがたい良さがあるけれど、夏には僕を待ってくれている場所がある。そう思える土地と出逢い、こうして逢瀬を重ねることができているという事実の積み重ねが、僕の心境を変えてくれたのかもしれない。

自分的困難を乗り越え、旅と強制的に引き離される期間を経て。そして今、これまで以上に旅が愉しくて仕方がない。僕にとって旅とは、愉しむためのもの。3年ぶりに僕のもとへと戻ってきてくれた夏色、そしてそこで出逢えた金銀乳白に染まるいで湯の温もりは、僕にそんな旅への想いの原点を思い出させてくれるのでした。

栗駒蔵王、名残り夏。~金銀乳白いで湯旅~
9月上旬晩夏の須川高原温泉源泉地帯と秋田を望む
2022.9 岩手/宮城
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●1日目(東京⇒須川高原温泉)
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2日目(須川高原温泉滞在)
●3日目(須川高原温泉⇒青根温泉)
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●4日目(青根温泉⇒白石⇒鎌先温泉)
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●5日目(鎌先温泉⇒仙台⇒東京)
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