鉄分たっぷり2泊3日の旅も最終日。朝風呂を浴びシャキッと目が覚めたところで朝食へ。和と洋のメニューが色々と並んでおり、好きなものを少しずつ取っていきます。
こちらの朝食には、つきたてお餅の田舎雑煮が用意されており、僕もひとつ頂くことに。つきたてというだけあり、お餅は最高。塩味ベースのおつゆにはたくさんの野菜が入っており、少しだけ濃い目の味付けも、東北を感じさせて美味。
お腹に余裕があればもう一杯!といきたいところでしたが、色々なおかずが並んでいるので、泣く泣く我慢。本当にここのお食事は、どれをとっても美味しい。窓の外に広がる清々しい朝の空気を眺めながら食べれば、その美味しさもまた格別。お腹も心も幸せ一杯にしてくれる、そんなお宿でした。
上質なお湯と味覚で大満足の鳴子ホテルを後にし、鳴子温泉駅から陸羽東線に乗車。この旅最後で最長の列車旅の幕開けです。今回来たのは、陸羽東線用の車両。前日乗ったものとは違い、4+2のボックスシートが並ぶ、オーソドックスな車内です。
発車待ちの間に見つけた番線表示。温泉地らしく、桶がデザインされています。このようなちょっとしたことに気づけるのも、時間と気持ちに余裕のあるローカル線の旅ならでは。
新幹線との接続駅である古川を過ぎ、陸羽東線の終点小牛田駅に到着。小牛田からは東北本線には乗らず、これまたローカル線の石巻線に乗り換えます。
陸羽東線が2分ほど遅れて乗り換え時間がほとんど無かったので、車両の写真は石巻駅で撮ったものです。僕にとってのディーゼルカーといえばこの形。ばあちゃんちの近くで慣れ親しんだ形と同じファミリーです。
車内に入った瞬間、むせ返るような暑さ。一瞬状況が理解できませんでしたが、よくよく見れば開け放たれた窓に、ぶんぶん回る懐かしい扇風機。そう、この車両は非冷房だったのです。
平成に入ってもう20年以上、このご時世に非冷房車に乗るとは思ってもみませんでした。現代っ子のいとこは初めての体験にちょっとしたパニック。昭和生まれの僕にとっては、懐かしい雰囲気。
小さい頃は、冷房が付いている車両でも真夏までそれが使われることは無く、いくら暑くてもみんな窓を開けて我慢していたものです。
国鉄やバスは大体そんなもので、滅多に乗らなかった私鉄に乗ると、早い時季でもクーラーが効いていたことに驚いたもの。そんな懐かしい記憶が一気に蘇ります。
開け放たれた窓から入ってくるのは、エンジンの熱気と構内を包む雑草の草いきれ。暑い日でも30℃を超えることは珍しかった昔とは違い、今の気候では非冷房はちょっと辛い。
でも冷房が付いてないからこそ感じられる、昔懐かしい夏の香り。野菜も果物も室温も、季節感をほとんど感じられない現代の暮らしの中で、久々に感じる暑さだけではない強烈な夏の印象。
そう、夏休みはこうでなきゃ。夏は人も草も生き物も、みんな元気。バテている場合ではありません。
停車中は熱地獄であった車内も、一旦走り出してしまえば、そこらじゅうの窓から勢いよく風が吹き込んできます。開けた窓からは絶え間なく鉄路の軽快なリズムが響き、ローカル線らしいゆったりしたそのペースに合わせ、夏一色の風景がのんびり流れ去ってゆく。
このリズムも景色も風も、今となっては絶滅寸前。レールは溶接され、空調完備の車両はほんの少ししか窓は開かない。それしか知らない今の子達にとってはなんてこと無いのかもしれませんが、小さい頃こんな鉄道の原風景ともいえるような車窓を体験して育った僕としては、これこそが理想の鉄道旅行。
快適さと引き換えに失った様々な風情。暑さを補って余りある情緒がたくさん詰まった、この旅で一番印象深い車窓となりました。目の前で暑い暑いと連呼するいとこよ、君が大人になったときに、この夏の1ページを思い出してくれると嬉しいな。
心地よい鉄路の響きの揺られ、あっという間に石巻駅に到着。石ノ森萬画館の最寄り駅であるこの駅には、たくさんの石ノ森作品のキャラクターが散りばめられています。
仮面ライダーに009など、誰もが目にしたことのあるキャラクターばかり。ここを起終点とする仙石線には、これらのキャラクターが描かれたマンガ列車も走っています。
石巻駅からは仙石線に乗車。南武線や八高線などと同じ、首都圏で見慣れた電車が使われています。山手線で長年多くのサラリーマンを運んだ電車は、遠い宮城の地で第二の人生を過ごしています。
仙石線は、基本的には住宅地を走る路線。家並みが途切れることは余りありませんが、途中こんな海沿いを走る区間も。穏やかな三陸の海に映る青空。なんとものどかな風景に、心が癒されます。
馴染み深い通勤電車の窓に広がる自然豊かな風景。そんな不思議な車窓を楽しみ、終点のあおば通駅に到着。地上に出れば、仙台駅がすぐ近くに見えます。
ここで一旦途中下車をし、仙台の街へ。この旅最後の目的である、おいしいおいしい牛たんを目指します。
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