漢ふたり、灼熱の鉄道旅行第2日目の始まりに相応しい、真っ赤なボディー。郡山と会津若松を結ぶ、快速あいづライナー用の車両です。
この電車は元々特急型で、内装や座席もきれいにリニューアルされており、自由席なら乗車券だけで乗れるお得な列車。
僕の小さい頃は、このファミリーの特急型に乗りたくて乗りたくて仕方が無い・・・、という憧れの存在だったのが、いつの間にか快速用に。時代の流れとは、本当に早いものです。
いずれにせよ、特急=この形、という擦り込みで育った僕にとっては、乗車券だけで乗れるのは本当に嬉しい。ピンときていない現代っ子のいとこを差し置いて、昭和の僕は朝イチからテンションが上がります。今では絶滅寸前の、きらりと銀色に光る特急マークが凛々しい。惚れ惚れします。
この編成は、あかべぇ編成と呼ばれており、車体のあちこちに会津のキャラクターであるあかべぇが描かれています。このあかべぇ、見れば見るほどカワイイ、僕の大好きなキャラクター。
会津のシンボル、鶴ヶ城が黒いシルエットとなり聳え立つデザインもかっこいい。一時期のJR東日本は質素なものばかり作っていましたが、最近はいろいろと遊び心があり、僕は大好き。
列車は会津若松駅を定刻に発車。山が近くなると、列車は右に左にと進行方向を繰り返し変えながら進みます。
この区間は地図で見ても良くわかるように、会津盆地の縁に連なる山を越えるため、蛇行を繰り返して高度を稼いでいきます。急坂を登れない鉄道ならではのコース取り。
山を越えるといっても、景色は遠くに磐梯山を望む高原のようななだらかな景色。そのすり鉢上になった斜面を、列車はぐんぐん登っていきます。
白い雲が泳ぐ澄んだ空、大地は活き活きとした緑に覆われ、絵に描いたような夏休みの光景が広がります。
車窓は様々な景色を映し出す、刻一刻と姿を変える巨大なキャンバスと化し、何もせずに車窓を眺めているだけでも贅沢。列車旅の醍醐味です。
会津若松から1時間、郡山駅へと到着。ここから新幹線に乗り換えます。乗り換えの関係上、隣の福島駅まで、ひと駅だけMaxやまびこ号に乗車。
もうこのブログではおなじみとなっていますが、Maxに乗るのも初めてのいとこは嬉しそう。大人でも子供でも、2階建ての電車って、なんだか楽しくなります。
Maxはグングンとスピードを上げたと思ったらすぐに減速を始め、あっという間に福島に到着。新幹線って、やっぱり早いなぁと実感します。
この後乗り換えるつばさ号は、福島から先は在来線の特急扱いとなるので、今回の長距離旅行で新幹線はたったのこの一区間だけ。どれだけヘビーな行程なのでしょうか。
福島駅から新庄行のつばさ号に乗り換え。福島から先、奥羽本線区間を走るつばさ号に乗るのは僕も初めてで、アラサーだというのにドキドキわくわく、どちらが子供なのか分かりません。
程なくして銀色のスマートなボディーがホームへと滑りこんできました。待ちに待ったつばさ号です。
僕の小さい頃、山形新幹線が日本初の新在直通、ミニ新幹線として開業した時は、それはカルチャーショックを受けました。それまで白を基調とした新幹線しか無かった中で、シルバーに輝く初代400系つばさは、新幹線の新時代幕開けを思わせるものでした。
その初代400系も引退し、形や色調は変われど、その銀色に輝く姿は今でも新鮮で、新幹線の中でも唯一無二の存在感を誇っています。小さい頃に好きだったものは、大人になってもやっぱり変わらないものです。
この車両は、秋田新幹線こまち号と形式的には同じですが、山形新幹線用の仕様となっており、ほぼ違う車両と言っても間違いありません。
その中でも、山形新幹線新庄延伸の際に作られた編成と、400系を置き換えるために作られた後期型とではいろいろと違うそう。今回来たのは後期型。大型の案内表示や窓側のコンセントなど、新しい新幹線のスタンダードとなった機能が盛り込まれています。
車内は紅花やさくらんぼなど、山形の名産をモチーフにしたデザインが多用されており、列車をただの乗り物としてではなく、地域性を表現した特色のある内装が面白い。
ここ数年で、列車のデザインは格段にレベルが高くなってきているように感じます。これは画一を良しとする国鉄から民営化し、だいぶ時間が経ってJRとして成熟してきた証でしょう。
今日の夕食は、結構期待できそうなバイキング。ちょっと時間は早いですが、夜に備えて早めの昼食としました。福島駅で購入した、福島味づくし。郡山の駅弁調製元、伯養軒のお弁当です。
蓋を開けると、細かく仕切られた中に様々なおかずが入っています。鶏や鮭の照り焼き、野菜の煮物、豚のロールカツ、わらびとぜんまいの煮物、シメジのゴマ和えなどなど。デザートには福島らしく、黄桃が添えられています。
味付けは若干濃い目ですが、それも東北を感じられていい。ご飯がしっかり入っているので、おかずとのバランスもよく、最後まで美味しく頂きました。
最近は、本当にこの手のお弁当を買うことが多くなりました。単一の味で完結する肉系や釜飯系よりも、ちょっとずつ地のものをつまめるのがいい。これはのんべぇだからか、それとも年齢的なものか(汗)。どちらにせよ、同年代よりは趣味がジジ臭い僕なのでした。
駅弁に舌鼓を打ち、田んぼ広がる山形平野を眺めているうちに、終点新庄駅に到着。ここからローカル線である陸羽東線のディーゼルカーに乗り換え。この車両は八高線でも使われていますが、東北で見るとまた違った趣があります。
この時は、陸羽西線用の車両が使われていました。陸羽西線用の車両は、写真のように一人掛けの座席を回転させることができ、最上川の流れる車窓を楽しめるようになっています。陸羽東線用の車両は、2列1列の向かい合わせ、オーソドックスな形となっています。
列車はディーゼルカー特有の唸りを上げ、新庄駅を出発。今日は特急型と新幹線しか乗っていなかったので、このローカル感が心地いい。
この山形平野も、東北有数の米どころ。見渡す限り、柔らかい色をした田んぼが広がっています。福島よりも生育具合は若干遅いように見え、同じ東北でも季節のずれがあることがわかります。
まだしなやかな稲が、風の流れに沿って群を成して揺れていきます。その波を追えば、風の姿が見えるかのよう。
思い起こせば、小学校低学年の頃でしょうか、東海地方のやはり車窓で風の姿を見て以来、田んぼを駈ける風は僕の大好きな車窓の一つになりました。夏休み、忘れかけていた心が甦ります。
エンジン音を響かせながら、列車は段々と山沿いへと入っていきます。田んぼと山の境界が、手の届くところまで近付いてきました。山形と宮城の県境は、もうすぐです。
奥羽山脈の中心、分水嶺に位置するその名も堺田駅。ここから向かって右に降った雨は日本海へ、左に降った雨は太平洋へと注ぎます。
関東平野で生まれ育った僕にとって、中央分水嶺(太平洋と日本海の分水界)と聞くと、奥羽やアルプスなど仰々しい山脈が思い起こされますが、こんな緩やかな鉄道の駅付近が分水嶺と言われると、なんだか拍子抜けしてしまいます。
ですが、確かにここまでの道のりは登り坂、これを境に下りに転じました。意外に緩やかな形で日本の背骨を跨ぎ、列車は宮城県へと突入。今夜の宿である鳴子温泉までは、あと少しです。
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