世界遺産、日光山内の中でも一番有名である日光東照宮に到着。小学生の時以来なので、かれこれ15年以上振り。はやる気持ちを抑えて、表参道をゆっくり歩いていきます。両側に聳える樹木の高さが、空気感を一層荘厳なものにしています。
いよいよ、この石鳥居をくぐり、東照宮の中へと入ります。それにしても、平日の雨だというのに、凄い人、人、人。遠足の団体や、外国人の方もたくさん来ており、さすがは国際的観光地。
鳥居をくぐると、表門がお出迎え。色鮮やかな装飾と、両側に立つ仁王像が立派な門です。
表門をくぐれば、そこは別世界。絢爛豪華な装飾を施された建造物の数々が、圧倒するほどの存在感を持って並んでいます。子供の頃の僕の寺社のイメージは、木で作られた茶色い建物で、どれを見ても特に興味を持つことはありませんでした。
そんな中、初めて京都へ行き、色彩のある寺社を目の当たりにして興味を覚えて帰ってきた後に訪れたのが、この東照宮でした。京都の寺社とはまた違う、和とアジアを融合したような、独特な装飾と色彩に圧倒されたのを今でも覚えています。大人になった今訪れても、その記憶を裏切ることなく、新鮮な感動を与えてくれます。
いい意味で派手な建物が並ぶ中、ちょっと控えめな建物があります。これは神厩舎という御神馬をつなぐ厩で、東照宮内で唯一の素木造りだそう。この建物にも、しっかりと装飾が施されています。
その装飾というのが、有名な三猿、見ざる言わざる聞かざる、です。この三猿が有名ですが、両側にも表情豊かなお猿さんが並んでおり、それは人の一生を例えたものと言われているそう。
真下から見上げると、その立体感をさらに体感できます。まるで本物のお猿さんのよう。今にも飛び出てきそうな躍動感。見ていて飽きません。
様々な表情で遊ぶ猿たちを楽しみ、更に奥へと進みます。立派な鳥居の奥に控えるのが、日本で最も美しいと言われる、陽明門。
陽明門は、時間を忘れて眺めてしまうほど美しいということから、別名日暮の門と呼ばれています。白と金を主体とし様々な装飾が施され、他所の門とは全く違う雰囲気を持っています。日本の建物ですが、エスニックな雰囲気をとても感じます。
間近で見れば、無数の彫刻や装飾の数々。一体どれだけの時間と労力を費やして建造されたのでしょうか。徳川幕府の力の大きさが、時代を経た今でもひしひしと感じられます。細かいところまで見ていたらきりが無い、本当に日暮の門です。
門から横へと視線を移せば、そこにも並ぶ彫刻の数々。この回廊の壁には、様々な花鳥の彫刻がずらりと並んでいます。この彫刻が一枚板を透かし彫りにしたものだというから、なお驚き。昔の職人さんの技術力がどれほど高かったかを思い知らされます。
鮮やかに施された極彩色に、透かし彫りが生み出す陰影が美しさを更に際立てます。ここは正面から見るより、横から見た方がその美しさをより感じることができます。
陽明門とそれを囲む回廊に圧倒されつつ、中へと進みます。拝観順路に従い、先に家康公の眠る奥宮を目指します。その奥宮へと続く道の入り口にあるのが、これまた有名な眠り猫。案内の看板が無ければ見落としてしまうよう位小さく、高い場所にあります。
写真はズームして撮ったものなのであまり質感をお伝えできませんが、生で見ると、猫の毛まで見えそうな、まるで呼吸でもしていそうなほどのリアリティーがあります。
左右から見比べてみると、またその表情を変えます。スッとした鼻筋に、猫独特の口周り。見れば見るほど本物の猫のように見えてきます。これが彫刻、それも何百年も前に彫られたものとは思えません。その豊かな表情に、つい時間を忘れて見入ってしまいます。
背の高い立派な杉林の中を、奥宮へと進んでいきます。立ち込める靄が、その雰囲気を一層深めます。この石の回廊に使われているのは、一段一段全て一枚石だそうで、そのような足元のところまで贅を尽くされているという徹底ぶりに感心してしまいます。
参拝客でごった返す下の喧騒を寄せ付けない、静かな空気に包まれた回廊を登り詰めれば、奥宮に到着。雨に濡れた緑が幻想的。
東照宮の最奥部にひっそりと佇む、家康公の墓。ここに、天下統一を果たし、長く太平の世を築いたといわれる大将軍が眠っているのです。ただの荒地であった江戸を開拓し、幕府を置いて日本の中心地としました。
今の東京は、この家康公がいなければ存在しなかったことでしょう。もし、家康公が天下統一を果たしていなければ、東京はどのようになっていたのでしょうか。
僕の故郷(といっても、その当時は武蔵の国でしたが)である東京の礎を築いた家康公に敬意を込めてお参りをし、御本社へ向かいます。
天を目指す杉と、しっとりと濡れた石の回廊。ここへ来るまでは雨を疎ましく思っていましたが、雨には雨の日のよさがある、そう気付かされます。艶のある姿を見せる日光を体一杯感じることができ、実はラッキーだったのかもしれません。
御本社は残念ながら修理中で、シートの中にその姿を隠してしまっていました。きっちり参拝しましたが、内部は残念ながら撮影禁止。立派な天井が印象的でした。
御本社へお参りした後は、こちらの神與舎へ。こちらにも虎や孔雀といった見事な彫刻が施されています。東照宮の建物は、全て違うテイストで造られており、本当に見ていて飽きることがありません。
中には3基の御神輿が納められており、中央が家康公のものだそう。天井には鮮やかな絵が描かれており、御神輿の立派さだけでなく、室内の美しさも楽しむことができます。
神與舎を後にし、本地堂を見学。こちらも生憎撮影禁止です。中には有名な鳴き龍が描かれています。天井に描かれた龍の顔の真下で拍子木を打つと、その反響により鈴を転がしたような音色が聞こえるというもの。
実際他の部分と顔の部分と聞き比べさせてくれましたが、本当に違う。コンピュータも無い中、昔の人はどのようにしてそんな複雑なものを設計したのでしょうか。
写真は本地堂を出たところでの眺め。この角度から眺めると、極彩色の回廊と絢爛豪華な陽明門が一体となり、なんともいえない美しさを醸し出しています。ずっとこのまま、ここにいたいと思わせるほどの美しさ。
ずっと来たかった東照宮を大満喫し、充実した気持ちで東照宮を後にします。最後にもう一度振り返り、荘厳な杉の森に囲まれた陽明門の姿を目に焼き付けます。この空気感は唯一無二、本当に来て良かった。日光見ずして結構と言う無かれ、まさにその通り。
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