蔵の街に宿る想像以上の景観美を満喫し、そろそろこの街を離れることに。今度はもっとゆっくり時間を取って来よう。再訪の願いを胸に、栃木駅へと向かいます。
それにしても、今日は本当によく持ってくれた。ぽつりぽつりと降り始めた雨にそう感謝しつつ待つことしばし、両毛線の普通列車が到着。この旅最後の目的地を目指します。
国鉄型の電車に揺られること15分、佐野駅に到着。この駅に降り立つのは初めてのこと。今回はわずかな時間ではありますが、まだ見ぬ街への期待が膨らみます。
はじめまして、さのまるくん!駅に歩道にと、愛らしい姿で迎えてくれるさのまるくんにご挨拶。丼の笠をかぶっているように、佐野は言わずと知れたラーメンの街。最後にその名物を味わって帰ろうという魂胆です。
ゴ~ン!年末年始に流れる初詣のCMで有名な佐野厄除け大師は、残念ながら拝観時間終了。ラーメンのお店が開くまで少々時間があるので、少しばかり散策してみることに。
ここ佐野にも、古き良き建築がたくさん遺されているよう。和菓子屋さんの重厚な見世蔵や昭和初期の洋館の姿に、佐野にも時間を取って再訪せねばとまたまた宿題が。
佐野の街並みの雰囲気をさわりだけ愉しみ、良き時間になったところでお店へと向かいます。この日は土曜日。すでに売り切れ閉店のラーメン店が多く見受けられる中、お昼休みを挟み夕方から営業を再開する『角半』へとお邪魔します。
ふらりと見つけたまたま入ったお店ですが、じつは大正時代から続くという老舗の中国料理屋さんだそう。開店早々ひとりで生中を味わっているとぞくぞくとお客さんが入店し、あっという間に大賑わい。いいタイミングで入れたとほっと胸をなでおろします。
中華で生ビールとくれば、やはり外せないのが餃子。大ぶりの餃子には具がしっかりと詰まっており、たっぷり野菜のシャキシャキ感と甘さが嬉しい味わい。手作りだという皮は少し厚めで、もちもちとした食感を愉しめます。
そしていよいよ、お待ちかねの佐野ラーメンとご対面。まずは琥珀色に輝くスープから。豚や鶏といった動物系のしっかりとした旨味がありつつ、優しい穏やかな味わい。それでいてちょうど良い塩梅の塩分が全体を引き締め、ずっとレンゲで飲んでいたい沁みいる旨さ。
つづいて、自家製の手打ちという麺を。佐野ラーメンの特徴でもある縮れた麺は、すべすべとした肌を持つ美人さん。啜れば滑らかな口触りで、程よいコシともちもちとした食感が堪らない。
そしてまたおいしかったのが、具のチャーシュー。脂ほどよく、ほろりとほぐれる柔らかさ。さすがは中国料理屋さんだけあり、味付けもまた絶妙。
瑞々しい縮れ麺が口の中を踊る愉しい食感、その麺が程よく連れてくるじんわり旨いスープ。ときおりメンマやチャーシューを挟みつつ、箸とレンゲが止まらない。名残惜しくも最後のひと口までしっかり味わい、大満足でこの旅最後の夕餉を終えます。
なんだか今回は、ものすごく栃木県を満喫できた気がする。最後の最後まで充実した時間を過ごし、佐野駅前から『さーのって号』で佐野新都市バスターミナルへと向かいます。
佐野から東京まで鉄道で帰るとなると、両毛線で高崎か小山へ出るか東武線を乗り継いでゆくか。ですが『JRバス関東』のマロニエ新宿号に乗れば、バスタ新宿まで乗り換えなしの1時間40分。この路線のおかげで、この行程を組むことができました。
東北道をひた走るバスに揺られ、ぼんやり眺める暮れゆく車窓。流れる景色に、この旅の記憶を走馬灯のように重ねてみる。
早朝に家を発ち、6時間掛けてたどり着いた関東最後の秘湯。そこで過ごしたゆるりとした時間は、贅沢以外の何物でもなかった。そして帰りには、栃木の街並みに宿る歴史を肌で感じ、おいしい佐野ラーメンまで味わって。
しつこいようだけれど、今回は本当に栃木県を大満喫できた。これだから旅することを、やめられない。訪れるごとに新たな魅力を知り、もっと、もっとと、旅への欲張りは増してゆくのでした。
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