亀山湖に浮かぶ小島で秋の風情に触れ、もうひとつ橋を渡り湖の南岸へ。湖畔から見えていた鳥居は、この後ろにある水天宮のものだそう。広々とした秋空と赤の対比は、はっと息を呑む鮮やかさ。
この一帯は亀山湖水天宮公園としてきれいに整備され、開放的な環境の中釣りをする人や近くには貸しボート屋さんも。その一画に建つ、まだ新しそうな石のオブジェ。普段は「映え」写真を撮ることはしませんが、ここまで誘導されてしまうとついついやってしまう。
秋うららの空気に満ちた広々とした公園に別れを告げ、ここで折り返してダム堤体へと戻ることに。その前にもう一度だけこの爽快な展望を。ここから眺めると、滞在している亀山温泉ホテルが本当に湖水の際に建っていることが分かります。
湖の東岸沿いへと入るとこれまでの風景とは一変し、鬱蒼と茂る木々の中を進むように。先ほどまで秋の日射しの眩さに溢れていたため、昼なお暗い森への場面転換はとても印象的。
天を目指しまっすぐ伸びる、無数の杉たち。太陽に透かされ浮かび上がる枝葉の繊細さ、並ぶ木立に広がる陰と陽の強烈なコントラスト。すぐ近くに湖水はあるはずなのに、急に深い森へと迷い込んでしまったかのような錯覚が。
ダム湖の周回道路らしくアップダウンを繰り返す道を抜け、木々越しに感じる人の営みの気配。この坂を下れば、もうまもなく国道に合流します。
もう少しだけ歩こうと、国道を右手に進み草川原地区まで足を延ばしてみることに。少し進むと展望が開け、先ほどまでとはまた違った趣が。一般的にダム湖は両岸を深い山に挟まれているイメージがありますが、山の縁の近くにまで湖水が迫る光景は独特なもの。
色づきはじめた木々と、そそり立つ地層断面の白さの対比。空と湖面との近さも手伝い、山深い地にあるダム湖とは全く異なる開放的な表情を見せています。
小櫃川と笹川の合流点に生まれた亀山湖。小櫃川上流へとこの先もまだまだ湖水が続いています。今度は自転車を借りて、サイクリングだな。そんな次への宿題を手に入れ、黄金に染まる秋色に見送られダム堤体方面へと戻ります。
大きなアーチを描く川俣大橋から望む、小櫃川の上流方向。すぐ隣には同じ方角に水を吐き出す亀山ダムがあるため、何となく方向感覚というものが歪みそう。
東から蛇行を繰り返してきた小櫃川はここで南へと流れを変え、Uターンして笹川と合流していたのでしょう。今は湖底に沈み見ることのできない往時の流れに思いを馳せるのも、複雑に入り組んだ地形に位置する亀山湖の楽しみ方のひとつかもしれない。
1時間ちょっとの湖畔散策を愉しみ、すっかりお腹も空いたところで昼食をとることに。ダム堤体すぐ横の亀山やすらぎ館にある『湖畔亭』にお邪魔します。
こちらはダムカレーや地元のSPF豚を使用したメニューが人気のようで、僕もSPF豚肉そばを注文。散策後の渇きをビールで潤していると、程なくしておそばが運ばれてきます。
こちらの肉そばは、炒めた豚肉が乗せられたタイプ。甘辛い香りに誘われ、まずはお肉をひと口。しっかり目の味付けに負けない豚の味わいが広がり、思わず白いご飯が恋しくなるおいしさ。
続いておそばと一緒に啜ってみると、今までに体験したことのない感覚。肉炒めがのったそばは初めての経験ですが、思った以上に相性良し。食べ進めるとおつゆに豚の旨味が浸みだし、時間の経過で違った味わいを楽しめます。
堤高34.5mと、それほど高くない亀山ダム。そのダムが、あれほど広範囲にわたり複雑なダム湖を形成している。千葉県最初にして最大の貯水量を誇る亀山湖。ぐるりと歩き、その豊かな表情が旅の想い出として胸へと刻まれるのでした。
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