祭りの滾り、地の力。~ヤーヤドーが呼んでいる 1日目 ③~ | 旅は未知連れ酔わな酒

祭りの滾り、地の力。~ヤーヤドーが呼んでいる 1日目 ③~

8月上旬夏の弘前ねぷたJR東日本秋田支社キャラクターのあきおとつがにゃんのかわいいねぷた 旅の宿

手の届くほどの距離で繰り広げられる、めくるめく津軽の火祭り。祭りもそろそろ中盤かな。すっかり暮れた空の色味と涼やかな夜風にそんなことを考えていると、愛らしいねぷたが。

8月上旬夏の弘前ねぷたJR東日本秋田支社キャラクターのあきおとつがにゃんねぷたのかわいい後ろ姿
このわんことにゃんこは、JR東日本秋田支社のキャラクターなのだそう。秋田でみんなのことをのんびり待つ秋田犬のあきおに、津軽の海岸で気ままに暮らす猫のつがにゃん。それぞれねぷたに合わせておめかしし、かわいい姿を魅せてくれています。

8月上旬夏の弘前ねぷた駅前ねぷたの迫力ある大きなJRねぷた
いま観覧している場所は交差点の近く。信号機をくぐるために一旦縮んでいますが、大きなねぷたはビルの3~4階ほどまで届く高さ。その巨大な扇一面に描かれた、勇壮なねぷた絵。灯りにより夜闇へと放たれる迫力は、実際に対峙した者のみが感じることを許される。

8月上旬夏の弘前ねぷたJRねぷたの迫力ある勇壮な虎の袖絵
勇ましさを感じさせる筆遣いの鏡絵、その裏側に描かれる見送り絵に袖絵。迫力がありつつも繊細で情緒的な表情に、夏の夜の幽玄というものを感じずにはいられない。

8月上旬夏の弘前ねぷた巨大なJRねぷたに今年の夏もこうして津軽へと連れてきてくれたことのお礼を伝える
JRさん、今年も津軽へと連れてきてくれてありがとう。新幹線があるおかげで、勤務明けの夜にはこうしてねぷたを見ることができる。毎年毎年熱い夏へと誘ってくれる大切な足に、改めてそんな感謝を伝えます。

8月上旬夏の弘前ねぷた次から次へとやってくる趣向を凝らした大小のねぷたたち
祭りもいよいよ後半戦。すでに出陣から1時間半近くは経っていますが、途切れることなく次から次へとやってくるねぷたたち。色とりどり、さまざまな表情の競演が、長時間でもずっと見ていたいと思わせてくれる。

8月上旬夏の弘前ねぷた今年は風神雷神とともに虎が目立つ
その年その年で、用いられる題材になんとなく傾向が。今年は風神雷神とともに、虎が多く見られる気がする。そんなことを感じられるのも、毎年通ってきたからこその愉しみ方なのかもしれない。

8月上旬夏の弘前ねぷた祭りの主役ともいえる太鼓や鉦、笛のお囃子とともに響くヤーヤドーの声
思い返せば13年前、初めてきちんと訪れた津軽の地。たまたま立ち寄ってみた津軽藩ねぷた村で果たした、運命の出逢い。それは溢れんばかりの色彩美に輝くねぷたもそうだが、実演されたお囃子にこころを射抜かれた。

心臓へと響く力強い太鼓のリズム、鉦の響かせる涼やかな音色。どことなく愁いを含む笛がそこへ寄り添い、人々の放つやぁーやぁどぉーの声が胸を打つ。なぜだろう。ねぷたのお囃子を耳にするだけで、切なくも温かい感情が湧いてくる。

8月上旬夏の弘前ねぷた2026青の煌あおもり国スポをPRするたか丸くんねぷた
ねぷたに個性があるように、団体ごとにもそれぞれ違いのあるお囃子。眼で耳で祭りの滾りを受けとめていると、来年の青森国体をPRするたか丸くんが。と思って今調べてみたら、呼び方が国体から国スポに変わったみたい。昭和生まれのおじさんはもうついていけないよ。

8月上旬夏の弘前ねぷたあおもり国スポたか丸くんねぷたの袖絵には真っ赤に燃える津軽富士岩木山のカラクリが
たか丸くんのかわいさににやけていると、ぷしゅーっと噴き出る煙とともにせり上がる岩木山の山頂部分。

8月上旬夏の弘前ねぷたあおもり国スポたか丸くんねぷたの袖絵には真っ赤に燃える津軽富士山頂部分がせり出し完成する優美な岩木山
そして完成する、秋色に燃える津軽富士の雄姿と紅葉に染まる渓谷美。初夏に盛夏、そして冬の弘前しか、僕は知らない。桜と紅葉に染まる姿を、いつかは確かめに来なければ。

8月上旬夏の弘前ねぷた鮮烈な炎をまとう不動明王の袖絵
激しく燃え盛る炎を身にまとう不動明王。その力強い表情と鮮烈な色彩が、この夏を忘れ得ぬものとして僕のこころに灼きつける。

8月上旬夏の弘前ねぷたみちのくの地に多く残る義経弁慶伝説を題材にした組ねぷた
東北を旅していると、ときおり出逢う義経弁慶伝説が残る地。そんなゆかりのあるみちのくの夜空に、今こうして甦るその雄姿。矢に射られてもなお主君を護る姿が、力強さをもって表現されています。

8月上旬夏の弘前ねぷた義経弁慶伝説ねぷたの見送り絵に描かれた牛若丸と朱い欄干の五条大橋
見送り絵には、まだあどけなさの残る牛若丸。弁慶と出逢ったとされる五条大橋が、咲き乱れる桜とともに描かれています。

8月上旬夏の弘前ねぷた観客の目の前まで迫るおどろおどろしい生首ねぷた
勇壮な武者絵や妖艶な見送り絵が続くなか、なかにはこんな生首のねぷたも。いまは隊列を組み粛々と合同運行しているねぷたですが、かつては運行の順序や道を譲る譲らないで喧嘩が起きていたそう。こんなおどろおどろしい題材は、相手を威嚇するための喧嘩ねぷた時代の名残りと言われています。

8月上旬夏の弘前ねぷた大きなねぷた一杯に描かれた藩祖津軽為信公の雄姿
大きなねぷたいっぱいに描かれる、藩祖津軽為信公の雄々しい姿。津軽のお殿様が創った城下町、弘前。そこには藩政時代から続く熱き夏が、今もなお受け継がれています。

8月上旬夏の弘前ねぷた岩木山や弘前城とともに城下を温かく見守る藩祖津軽為信公
岩木山や弘前城とともに、城下を見守る為信公。猛々しい姿で描かれることが多いように思いますが、この柔和な表情はこうして弘前の街が在り続けていることを喜んでいるかのよう。

8月上旬夏の弘前ねぷた審査日初日の日曜日で多くのねぷたが出陣する8月3日
一団去って、また一団。この日はねぷたの審査初日の日曜日。翌日訪れた居酒屋さんの女将さんに聞いたところ一番多く出陣する日だったそうで、とめどなくやってくる灯りの洪水に圧倒されっぱなし。

8月上旬夏の弘前ねぷた津軽の夜空を焦がす鮮やかな鳳凰
迫りくる鏡絵に気圧され、去りゆく見送り絵に名残を惜しむ。表裏に込められた鮮烈な場面転換、そこに宿る色彩の美。光の放つ質量に、時が経つのも忘れどんどんどんどんのめり込む。

8月上旬夏の弘前ねぷた生首にからすが群がるおどろおどろしい見送り絵
時に息を呑むような残酷さがあるのも、弘前ねぷたの魅力のひとつ。初めて訪れたときは驚きましたが、陰陽あわせ持つからこそ味わい深くなる。見たいものしか見ないし、見せて良いものしか見せてはならない。昭和末期生まれの僕は、そんな今にどうしても違和感を持ってしまう。

8月上旬夏の弘前ねぷた南部藩から独立を果たす大浦為信公の戦いを描いたねぷた
漆黒の夜空に浮かびあがる、迫力に満ちあふれた為信公の勇姿。大浦下剋上物語と題された鏡絵には、南部藩から独立し津軽藩を築く際の戦いが描かれています。

8月上旬夏の弘前ねぷた睨みをきかせる大浦為信公
巨体を回し、眼前を通り過ぎてゆくねぷたの滾り。首が痛くなるほどの高さから射すくめられれば、その眼力に否応なしに気圧される。

8月上旬夏の弘前ねぷた勇壮な大浦為信公の裏に描かれるのは普賢菩薩の見送り絵と鮮烈さに溢れる鳳凰の袖絵
迫力ある鏡絵から一転し、見送り絵には静かなる表情を浮かべる普賢菩薩。漆黒に舞う鳳凰の極彩色が、津軽の夜空と僕のこころを焦がしてゆく。

8月上旬夏の弘前ねぷた天国と地獄が表現された迫力ある袖絵
城下の夜を、豊かな色彩で満たすねぷたの行列。来たるねぷたを心待ちにし、去りゆく灯りを静かに見送る。ただただ賑やかなのではなくこの荘厳さがあるからこそ、この夏を毎年求めてしまう。

8月上旬夏の弘前ねぷた稲作が盛んな田舎館を拠点とする令和ねぷた皆の遊稲の里への想いと題された温もりを感じる鏡絵
勇壮な武者絵が多く並ぶなか、何とも言えぬぬくもりを感じさせる鏡絵。遊稲の里への想いと題されたこのねぷたを運行するのは、5年前に発足したという令和ねぷた皆。田んぼアートでも有名な田舎館を拠点としているそうで、お米への想いがこの絵からも伝わってくるよう。

8月上旬夏の弘前ねぷた令和ねぷた皆の温かみ溢れる見送り絵
そしてこの絵を描いているのは、30歳の絵師の方だそう。古き良き情緒を守りつつ、あたらしい風も吹き込んでくる。その繰り返しがあるからこそ、長きにわたり弘前ねぷたが遺され続けているのでしょう。

8月上旬夏の弘前ねぷた独特な世界観をもつ鏡絵
そしてこちらも、他とは雰囲気を異にする鏡絵。その独特な世界に、思わず吸い込まれそうになる。

8月上旬夏の弘前ねぷた見送り絵を引き立てる袖絵の妖しい世界観
見送り絵や袖絵にも宿された、妖艶な空気感。創り上げるために携わった人々の世界観が込められているからこそ、それぞれのねぷたの放つ個性が際立つのだろう。

8月上旬夏の弘前ねぷたシンプルな背景に映える繊細な鏡絵
白い背景に浮かびあがる、緻密な絵のうつくしさ。大胆なもの、豪華絢爛なもの、力強いもの、繊細なもの。美術に疎い僕ですら、それぞれの絵の持つ雰囲気の違いを気づかせてくれる。その繰り返しが、長時間にわたる祭りを最後まで見届けようと思わせる。

8月上旬夏の弘前ねぷたあまりのうつくしさと世界観に息を呑む
この鏡絵に対し、見送り絵や袖絵はどうなっているのだろう。そんなことを考えているとねぷたは目の前を通り過ぎ、姿を現す新たなうつくしさ。その豊かな世界観が、ねぷたに宿る無限の魅力を僕へと教えてくれる。

8月上旬夏の弘前ねぷた今宵の最後を彩る鮮烈なうつくしさを放つ鳳凰の袖絵
そして迎えた、今宵最後の一台。そこに込められたうつくしさはあまりに鮮やかで、令和七年八月三日の夜が忘れ得ぬものとして胸へと灼きつけられる。

8月上旬夏の弘前ねぷた出陣から3時間近くの長い間愉しんだねぷたも今夜は終わり
午後7時過ぎからはじまり、3時間近くも繰り広げられた津軽の熱い夜。48団体と非常に多くのねぷたを見送ったはずだが、気づけばあっという間に終わってしまった。

8月上旬夏の弘前ねぷた熱い夜の終わりを惜しむべく最後のねぷたの後を追う
でも僕の夜はまだ終わらせない。祭りの熱の名残を惜しむように、最後のねぷたの後を追う。この時間が何とも切なく、それでいて愛しくて。

8月上旬夏の弘前ねぷた祭りの後の寂しさを埋めてくれる土淵川を彩る金魚ねぷたと明るい月
今年も無事に、津軽の夏に逢うことができた。本当に、善い夜だ。川辺に光る金魚ねぷた、それを見守る明るい月。この情景を眼にし、そうしみじみと噛みしめずにはいられない。

8月上旬夏の弘前ねぷた運行を終えそれぞれの家路に就くねぷた
土手町での運行を終え、それぞれの家路に就くねぷたたち。交差点で散り散りに別れ、だんだんと数を減らしてゆく。そこに漂う幾許かの寂しさまでもが、弘前ねぷたの味だと思う。

8月上旬夏の弘前ねぷたを見終えホテルへと戻る帰り道
祭りの後の余韻に浸り、そろそろ僕もホテルへと戻ることに。でも今年は、明日もまた逢える。連泊が叶った歓びを静かに胸に宿し、満たされた気持ちで帰り道を歩きます。

8月上旬夏の弘前ねぷた祭りの余韻を噛みしめつつ味わう八戸酒類五戸のどんべり
ホテルに戻りシャワーを浴びてさっぱりしたところで、宴の続きを。津軽の熱さにどっぷりと浸ったあとは、南部の酒で酔うとしよう。八戸酒類の醸す、五戸のどんべり。甘すぎず辛すぎず、しっかりと感じるお米の存在感。

未だ耳に残るヤーヤドーの声、網膜に灼きついて離れない灯りの眩さ。その熱をこころに宿し、静かに呑むにごり酒。明日も待つ津軽の熱い夏に想いを寄せ、その濃い旨さをじっくりと咀嚼するのでした。

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