7月末日、東京駅。僕はここから、今年二度目の夏へと旅立つ。これから向かうは、南部と津軽。毎年僕を待ってくれている、津軽の熱い夜。そしてだいぶ前の夏、一目惚れした盛岡を彩るあの踊り。今年は欲張りにも、そんなふたつの祭りに逢いにゆこう。

そういえば、十和田の蔦や谷地といった山奥の温泉地には泊ったことはあるものの、青森の太平洋側に位置する南部地方はきちんと訪れたことがなかった。そう思い立ち、今回は東北町から旅をはじめることに。

家族連れで賑わう駅弁屋祭で揉みくちゃにされ、ぼろぼろになりつつなんとか自席へ。すぐさまクラシックをプシュッと開ければ、はやぶさ号は北を目指し出発。ぐいっと冷たい苦味を喉へと流していると、E5は夏色の荒川を軽快に渡り無事東京脱出。

毎度のことながら、東京駅の大混雑は明けの体に堪えるな。とはいえ数年前の異様な往来の少なさを思い返せば、それすら喜ばしいと思えてしまう。やっぱり、交通は貨客を乗せてなんぼ。そんなことを考えつつ、まずは空っぽになったお腹を満たすことに。

いろいろ並ぶ駅弁に目移りしつつ、今回は三沢の三咲羽やが調製する青森のぜいたく弁当を購入。2年前にも食べたことがあり、そのおいしさを知っていたので安心して手に取ることができました。
ふたを開ければ、ぎっちりと並ぶ8貫のにぎり寿司。〆さばと海峡サーモン、それぞれ2種の味付けで2貫ずつ愉しめます。
まずはきゅっとほどよい塩梅に〆られたさばから。特製ピリ辛ダレは、〆さばの凝縮感を彩るちょっとした辛味が食欲をそそる。田子にんにくみそ載せは、ふわりと香るにんにくの風味と味噌のコクがさばの旨味をより豊かなものに。
つづいて、津軽海峡の荒波で育てられた海峡サーモンを。手前には、マヨネーズと茎わさび。つんとした鮮やかな辛味をマヨがまろやかに抑え、旨味たっぷりのサーモンにぴったり。
そしてお気に入りは、クリームチーズとオニオン。サーモンとの相性は言わずもがな、海峡サーモンの濃い旨味を一層深めてくれる。
そして副菜もどれもおいしいものばかり。分厚い玉子焼きは、ほっくりと甘めで好みの味。鶏の唐揚げも王道の旨さで、きりりとした高清水をくいっといきたくなる。
そしてやはり食材の宝庫青森らしく、県産のごぼうを使った2品が秀逸。かつお風味のごぼう漬けは、ぱりぽりと噛めば口から鼻へと芳しさがふわっと抜けてゆく。
海藻の旨味と食感を残した昆布巻きには、ほっくりとしたごぼうとともにしみじみとした味わいを演出するさばの組み合わせ。前回も旨い旨いと食べたこのお弁当、今回は副菜がさらにおいしく進化している気がする。

これから向かう三八上北に思いを馳せつつ、三沢の駅弁を味わう。我ながらいい選択だと自画自賛していると、あっという間に宇都宮を過ぎ那須から関東を抜け東北へ。車窓を彩るのは、夏の東北を象徴するような田園。この緑に逢うたびに、この地の豊かさにこころが満たされる。

東京から韋駄天のはやぶさ号に揺られること2時間46分、八戸に到着。ここで、在来線に乗り換えるため途中下車。これから二晩の友を仕入れるため、駅前のユートリーへと向かいます。

館内へと入ると、まず出迎えるのが巨大な山車。これは八戸三社大祭に運行される山車の上物の前半分を再現したものだそうで、実物はさらにこれより大きいのだというのだから驚き。

その隣には、山車の運行の様子を再現したミニチュアが。これまで僕の暮らしてきた土地では、お祭りといえば御神輿一択。山車文化のないところで生きてきたので、生で見たらきっとその迫力に圧倒されるんだろうな。

豪華絢爛な山車に迎えられ、無事に夜のお供を手に入れふたたび駅へ。ここからは、旧東北本線を受け継いだ第三セクターの青い森鉄道に乗り換え。貨物の大動脈でもあり電化されていますが、薄い黄緑色をしたかわいい車両がエンジン音を響かせ停車中。
今回はたまたま乗り継ぐ列車が、JR大湊線へ直通する快速しもきた。このキハ100ファミリーには、もう乗れないと思っていた。小海線で初めて出逢い、八高線や東北路で何度も乗った大好きな車両。乗り納めしたと諦めていたところで、この再会は胸にくる。
そんな僕を乗せ、小さなディーゼルカーは大湊を目指し定刻に出発。ガラガラと小気味よい音とともに、軽快に速度を上げてゆくキハ100。その想い出深い乗り心地に身を任せ、久々となる東北の汽車旅に心酔するのでした。


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