5月の最終日、僕らはふたたび羽田空港にいた。半月前、ここから長崎へと飛んだばかりじゃないか。そう思われそうですが、あれはあれ、これはこれ。

そう今日は、毎年楽しみにしている八重山への旅立ちの日。異動がないことが判ってすぐ、3月下旬に予約を入れてから今日という日をどれほど首を長くして待ちのぞんできたことか。

異動はないが、6月下旬に勤務パターンが変更に。その発表を待っていたのでは予約も一杯になるかもしれないし、休みも不確実。それなら行けるときに行くべきだ!ということで、今年はいつもより半月早い梅雨時の八重山旅を決意したのです。
そして、今回の旅で僕は勘違いをしてしまうことに。僕は八重山を愛し、そして八重山に愛されたのではないかと。我ながら、とっても気持ち悪いことを書いている自覚はある。だが、八重山に出逢って十年目。こんな隙間を狙ったかのような、奇跡の夏が迎えてくれようとは。

出発の2週間前から、毎日何度も何度も天気予報をチェック。そのマークに一喜一憂する日がしばらく続き、ついに台風も発生。
大丈夫。僕らなら、きっと飛べる。そんな念力にも近い想いを察してか、なんとも絶妙な進路と速度で進む台風。そして迎えた当日、奄美地方は欠航だが沖縄地方は飛ぶことに。そしてさらに、明日は沖縄地方も全便欠航が決定。

想いは通じる。ありがとう。そんなあふれんばかりの感謝を胸に乗り込む、うちなーの翼。機内へと入れば、出迎えてくれる沖縄の音楽と紅型のヘッドレスト。みーふぁいゆーのアナウンスを耳にすれば、はやくもこころは八重山色に。

台風がもう少し速かったら。日程があと一日ずれていたら。そう考えると、このタイミングでの旅立ちは奇跡だとしか思えない。やった。これで今年も八重山に無事逢える。そう安堵する僕らを乗せたB737は、小型機ならではの俊敏さで多摩川上空を急上昇。

いつもなら太平洋上へと飛び出し相模湾を見下ろす形になるが、今日は三浦半島の上空を横断。あの壮大な旅へと船出した横須賀の海も見え、思わずテンションが上がってしまう。

はじめての機窓を食い入るように見ていると、相模湾の上空へと差し掛かりいつもの眺めに。芦ノ湖の先には、頭に雲を載せつつもうっすらと姿を魅せてくれる富士の山。

梅雨前線の影響もあってか、途中気流が不安定な部分を通過するとの予想。搭乗前には、お手洗いは先に済ませておいてねのアナウンスも。揺れ、大丈夫かな。そんなことも杞憂に終わり、ベルトサインも消えはやくも三河湾の上空へ。

飛行も安定し、機内サービスが開始。せっかくのJTAだからとさんぴん茶にするか迷いましたが、滞在中いくらでも飲むつもりなのでJALのビーフコンソメを。上空1万メートルで飲むスープは、なぜこうも気分を高揚させてくれるのだろう。

おいしいビーフコンソメを味わっていると、これまたいつもとは機窓の様子が違う。これまでは伊勢湾から太平洋へと延々洋上を飛んでいたのですが、今日は紀伊半島を横断。横たわる雲の下には、うっすらと四国本島の島影も。

変化に富んだ陸地の情景も終わりを告げ、小さな飛行機はいよいよ広大な太平洋上へ。延々続く雲に挟まれた、パステルの青。そんな機窓に寄り添ってくれるのは、ウィングレットに描かれたかわいいアマミノクロウサギ。

眼下には、延々と続く雲の帯。大げさではなく、奄美から宮古くらいまではずっとこんな状態。ひたすらのびる、ひと筋の道路のようにも見える雲。もしかしたら、これが梅雨前線が可視化されたものなのだろうか。

雲や乱気流を避けるためか、上へ下へ右へ左へと得意の小回りで飛び続けるB737。巡航高度や速度もいつもより高いようで、15分ほどの遅延予想が定刻着に変更に。分厚い雲のなか、ついに意を決したかのようにぐいぐいと高度を下げるうちなーの翼。旋回も続いているし、もうそろそろだと思うんだが。

そう思い食い入るように機窓を見つめていると、雲間からついに姿をあらわした石垣島。ずっと旋回していたからそうだと思ったが、今年は白保側からの着陸だ。

どんどんと、大きさを増してゆく豊かな緑。逢いたいと、1年間ずっとずっと想い続けてきた宝のような島。今年もこうして再会でき、本当に本当によかった。

さあこれからが、僕らの夏のはじまりだ!焦がれるように延々と待ちわびた、八重山で過ごす時間。タイヤ越しに伝わる振動に、愛する島と繋がったという実感を強く深く噛みしめるのでした。


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