やってきました、天下の名湯草津温泉。その象徴である湯畑の源泉からは、硫黄の香漂う源泉がとめどなく溢れ続けています。立ち上る湯煙に視界がさえぎられるほどのダイナミックさ。
源泉から湧き出た温泉は、この樋を通って各旅館へと配湯されます。この樋には、強い酸性で温度も熱過ぎる源泉を入りやすいお湯に落ち着かせる効果の他、湯の花を効果的に採取する目的もあります。
夜になるときれいにライトアップされるので、草津に宿泊の際はぜひ夜に浴衣と下駄で散策したいところ。
何本もの樋に分かれて流されてきた温泉が、最後一本にまとまって落ちてきます。岩には強酸性のお湯でも生息できる、独特の色合いをした苔が生えており、お湯の色と相まってケミカルな美しさを醸し出しています。
それにしてもこの湯量、どうしたらこんな大量の温泉が枯れることなく自噴し続けられるのでしょう。自然の凄さに言葉も出ません。
この湯畑の光景は、小さい頃から本やテレビで何度も目にしてきましたが、実際生で至近距離から眺めていると、その迫力に圧倒されます。
湯畑で草津の力強さに触れた後は、いよいよお待ち兼ねの温泉へ。途中お土産やさんの並ぶ細い温泉街を通ります。この先には有名な温泉饅頭銀座が。歩いているとそこらじゅうから試食の温泉饅頭を手渡され、片道歩くだけでお腹一杯になります。
温泉饅頭を3つほど食べながら歩き、たどりついた西の河原公園。この先に目指す西の河原露天風呂が待ち構えています。
ここ西の河原も草津温泉の代表的な源泉の一つで、荒涼とした河原のあちこちからお湯が沸いています。昔の人はこの景色を、まるで三途の川のようだと思ったのでしょう。
湯畑からのんびり歩いて15分ほどで、『西の河原大露天風呂』に到着。ここのウリはそのスケールの大きさ。もうデカイ!なんてものではありません。写真で見るよりよっぽど広く、これはぜひ実際に訪れていただきたい。
プールかと思うほどの広い湯船には、西の河原の源泉が掛け流されており、その広さゆえ場所により温度が違うので、お気に入りのポイントを見つけることができます。
お湯は少しエメラルド掛かった透明で、さほど硫黄の香りも気になりません。湯畑に比べると優しいお湯といったところ。ここで出たり入ったり、満足のいくまで湯浴みを楽しみます。
雄大な自然とお湯に包まれ、すっかりのんびりしたところで腹ごしらえ。湯畑のほど近く、老舗旅館『大阪屋』の中にあるそば処で昼食を。お土産コーナーの横を行くとたどり着くことができます。
こちらのメニューはシンプルで、お蕎麦はざるかつけとろの2種類のみ。今回はざるを注文。ここの蕎麦の特徴と言えば、この太さ。田舎そばを更に通り越した太い蕎麦が盛られています。
太いから大味で喉越しが悪いか、といえばそうではなく、一口ほお張るとしっかりとした弾力とコシに、強い蕎麦の香り。ここまで太いとボソボソになりがちな十割蕎麦ですが、こちらの蕎麦はツルンと喉を通って行きます。
ただし、一口の量にはご注意を。口に収まりきらなくなってしまいます。焦らずゆっくりと、ちょっとずつ啜っていくのが美味しい食べ方。人によりかなり好みが分かれるところだとは思いますが、一度食べたら忘れられない、強烈な個性の持ち主。
美味しいおそばでお腹も大満足したところで、もう一度草津の湯を楽しみます。前回来たときに寄ってみたかった外湯、『白旗の湯』。無料で入ることができます。
中は湯船と壁一枚で仕切られた脱衣所があるのみの、いかにも外湯といった造り。木造の壁や床、浴槽が心地よく肌に馴染みます。
お湯は白濁した、強い硫黄の香りの酸性のお湯。温泉といえばこれ!と思い浮かべるようなお湯です。
浴槽は2つあり、左側の方はなんとか我慢すれば浸かっていられる程度の温度ですが、右側の方は強烈。30秒浸かるのが精一杯で、上がった後も汗が全く引きません。
それほど熱いお湯でも、静かにじっとしていれば入れてしまうのが草津の不思議なところ。同じ温度でも渋の外湯には入れませんでした。泉質の違いは本当に不思議なものです。
白旗の湯ですっかり茹ってしまった体を湯畑の傍でクールダウンし、今回の旅最後の温泉を満喫します。先程お昼を食べた大阪屋のすぐ隣に位置する『千代の湯』。
こちらはとても狭く、3人も入れば一杯になってしまうような湯船。そこに掛け流されるのは無色透明のお湯で、香りもあまり感じません。温度も丁度よく、これなら快適に入れる、という温度。
草津の強酸性のお湯は、肌の弱い人や入りすぎるとかぶれてしまうので、こちらのさっぱりとしたお湯は、最後の仕上げの湯として丁度いいかもしれません。
草津からの帰りも、ハーヴェストツアーのバスで。新宿まで2000円で運んでくれます。(規制により格安ツアー型バスは廃止)
あっという間だった、2泊3日温泉三昧の一人旅。渋も草津もそれぞれ個性的な、他は真似できない魅力を存分に味わわせてくれました。残念ながら、もう帰らなければいけない時間。明日からは仕事がまっています。
とはいえ、その仕事があるからこそ、非日常である旅行がより一層際立つのです。この3日間で出したもの、そして吸収したもの。それが明日からの活力になります。
観光地を目一杯巡るのも一つの旅の形ですが、今回のようなスローな旅の中で、普段考えられないことを考え、普段持つことのない無の時間を敢えて持ち、そしてからっぽになった部分に旅の思い出を詰めて帰る、そんな一人旅もたまにはいいのではないでしょうか。これだから一人旅はやめられない。次は、どこへ行こう。
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