カルルス温泉で迎える穏やかな朝。窓から差し込む朝日と川音に起こされ、清々しい気持ちで朝風呂を楽しむひととき。きらきらと陽射しに煌めくカルルスの湯を眺めつつ、存分に吸い込む湯の香り。泊った者だけに許される贅沢を、心ゆくまで噛みしめます。
清らかなお湯に満たされたところで、お待ちかねの朝食の時間に。食卓には美味しそうな品々が並びます。焼鮭、煮物、おからに昆布の佃煮。温泉場の朝食にふさわしい王道の和の味に、ついついご飯をお代わりしてしまいます。
昔ながらの温泉場の風情を色濃く残す鈴木旅館。久々に味わう正統派の湯治場の雰囲気に触れ、満たされた気持ちでカルルス温泉を後にします。
『道南バス』に揺られること20分、再び登別バスターミナルに到着。チェックアウト後の賑わいを見せる温泉街をのんびりと歩きつつ、登別といえばの地獄谷へと向かいます。
11年ぶりに目にするこの光景。前回訪れた時は冬だったので、雪のない地獄谷を見るのはかなり久しぶりのこと。青い空との対比が、その荒涼とした風景を一層印象深いものにしています。
荒々しい大地の滾りの中をゆく、木製の遊歩道。大丈夫だとはわかっていても、噴煙あがる中のびるその様子に思わず軽い戦慄を覚えてしまいます。
木の板一枚を隔て、足元に感じる地球の鼓動。登別温泉最大の源泉地である地獄谷には、至るところから湧き出た温泉が川となり流れています。
ダイナミックな地の力を感じさせる地獄谷に別れを告げ、大湯沼へとつながる遊歩道へと進みます。ここから先は初めて進む道。これから一体どんな景色が広がるのか期待しつつ、新緑の中をのんびり歩きます。
地獄谷から森林浴をしつつ歩くこと約15分、日和山の噴火によりできたという大湯沼に到着。ちなみに先ほどの地獄谷も、日和山の爆裂火口跡。これだけの噴火を起こした日和山、一体どれほどのエネルギーを蓄えていたのでしょうか。
岸まで下りてゆくと、途端に強くなる硫黄の香り。沼には灰色の泥と温泉が溜まり、その合間からお湯が湧き出る様子も間近に見て取ることができます。
日和山の強烈な力を感じつつ岸辺を歩いていると、沼から流れ出る川が。沼に湧いた温泉は大湯沼川となり、登別の街を目指して流れてゆきます。
遊歩道はその大湯沼川沿いに進み、お湯の香りを楽しみつつ歩きます。温泉の成分のためか河床は独特な色に変色し、流れる白濁したお湯と相まってここがただの川でないことを伝えるかのよう。
異様な世界感を味わいつつ歩みを進めると、まさに満開を迎えた1本の山桜が。川の織り成す独特な色遣いに、その妖艶さが一層強調されるかのよう。
さらに進むと、そこには足湯が。さすがは連休中、入れ替わり立ち替わり多くの観光客が足湯を楽しんでいます。自然の川を利用した足湯など、なかなか入れる機会はありません。もちろん僕も、せっかくなので浸かってみることに。
早速足を入れてみると、あまりの適温に思わずほっと息が漏れてしまいそう。足元には黒い砂が多量に積もり、足を埋めれば砂蒸し風呂のような感覚も味わえます。
視線を上流へと向ければ、青々とした笹の中流れる白濁の湯。文字通りの、源泉かけ流し。自然の造り上げた気持ち良さに、足のみならず心の芯までほぐされます。
眼で鼻で足で大地の恵みを体感したところで、今度は全身でもその温もりを味わうことに。地獄谷に面する『第一滝本館』で立ち寄り湯を満喫します。
11年前も訪れた第一滝本館。日本にある10種類の泉質のうち、半分の5種類をここ1か所で味わうことができます。巨大なホテルの収容力に合わせ、大浴場も圧倒的な広さ。湯舟は全部で35もあるそうで、それらが全て加水ながら掛け流されているのだから驚き。
大浴場は2階建ての構造となっており、2階の大きな窓からは地獄谷の景色を一望のもとに。1階には露天風呂が設けられ、それぞれ趣向を凝らした湯舟で違う泉質の湯めぐりを楽しめます。
これだけ広ければ、お客さんが多くても全く気にならない。広大な浴場も隅々まで清掃され、巨大ホテルとは思えないほどきちんとした環境で湯浴みを愉しむことができます。
11年ぶりに訪れても感じる、お湯へのこだわり。5種の泉質を巡る旅を存分に味わい、館内にあるラーメン処味自慢で昼食をとることに。今回はピリ辛の赤味噌ラーメンを注文。程よい辛さと味噌のコクが麺に絡み、期待以上の美味しさに一気に平らげました。
地獄谷に大湯沼、天然の足湯にこだわりの巨大風呂。あぁ、最後の最後まで北海道を満喫した。温泉のメッカともいえる登別で大地の恵みに触れ、終盤となったこの旅の楽しみをじっくりと噛みしめるのでした。
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