2024年、間違いなくこれまで生きてきた中で一番旅した一年だった。今年は本当に、旅に恵まれた。それは行ける環境という面でもそうだが、旅先で抱えきれぬほどの感動に出逢えたという意味。
1月、棚ぼたの北海道で今年の旅は幕を開けた。初めてのAIRDOで札幌へ飛び、久々の街にこころ躍らせ旨い海の幸に舌鼓を打ち。そして向かった、初めての十勝。そこで出逢えた味と白さは、広大な北海道においてまだ知らぬ新たな魅力を僕に教えてくれた。
3月には、まだ春浅い老神温泉へ。湯の香漂う優しい湯に抱かれ、初めての沼田の街の表情に触れ。これまで訪れる機会の少なかった群馬、これは開拓し甲斐があると改めて思わされる善き旅だった。
新緑の5月には、これまで何度も通った花巻南温泉峡へ。豊沢川沿いに、数キロごとにことなる温泉場が点在する魅惑の地。初めて訪れた山の神温泉のとろりとした湯に驚き、城下町金ケ崎では最高の新緑と時間旅行にこころを染めた。
岩手で新緑を浴びたというのに、同じ月には鮮緑に逢いに奥鬼怒へ。東北よりも遠い関東の秘境、ずっと気になっていた八丁の湯。すぐ隣の加仁湯とはまったく異なる泉質、そしてゆったりと流れる山岳リゾートの情緒に癒された。
7月。意図せずもらえたお休みを活かさぬ手はないと、5年ぶりにあの壮大な旅を決行。大洗発、苫小牧経由敦賀まで。航跡を紡いで辿り着いた福井。自分で旅するようになり初めて訪れた地で出逢えた新鮮な体験は、決して忘れ得ぬ想い出に。
8月には、冬の帯広に続き初の釧路の街へ。表情豊かな街の姿、そして夜の宴で味わった肴と酒の旨さが胸へと沁みた。そんな新鮮な旅の歓びがあったかと思えば、高校生の夏を思い出させる道東の雄大な自然との再会も。趣味を超えて生き甲斐として旅を続けてきたこと、その大切さが胸に刺さる旅だった。
残暑も去りつつある10月、愛する中央本線を繋いで木曽路へ。そこに待っていたのは、これまで経験したことのない力をもつ濃厚な冷泉。鮮烈な入浴体験が、脳裏に灼きついて離れない。
木曽から帰ってきた5日後、相方さんのひと言から急遽思いたち初の浜松へ。これまでふっくら蒸しあげた関東のうなぎ最高!あつた蓬莱軒のひつまぶしは別格で同率一位!そう思って生きてきた東京もんの僕にとって、人生初の地焼きのうな重の破壊力は強烈すぎた。
夜には浜松餃子やあり得ないほど新鮮な鰹で酒を呑み、そして翌日には念願のさわやかへ。はぁ、思い出すだけでよだれが出る。本当に、旨し旅だった。
11月には、これまた人生初の徳島と高知へ。これまで訪れたことのある香川や愛媛とはまったく異なる表情に、四国の山深さを思い知る。阿波から土佐への旅路は、四国へもっとおいでよと誘うような濃密さだった。
こうして振り返ってみると、今年は初めての地への旅がとても多かった。せっかく旅に出やすい今の環境、その好機を逃してはいけないと本能が欲していたのかもしれない。
何かに突き動かされるように、未知なる地への旅を重ねる日々。そんななか、やっぱり逢いたいと思える場所がある。2月には、これまで立ち寄りで訪れていた大釜温泉に初宿泊。雪に埋もれて浸かる茶色の湯に、改めて乳頭の奥深さを思い知る。
東北から帰ってきた4日後には、今度は西を目指して東海道へ。名古屋、松阪、お伊勢さん。これまで訪れたことのある地で出逢えた、新たな味。矢場とんに鶏のあみ焼きと、旨いものだらけの旅だった。
6月末、梅雨真っただ中の東京におさらばし愛する八重山へ。毎年毎年繰り返し重ねてきた、あの鮮烈なあおさとの逢瀬。このあおさがなければ、生きられぬ体になってしまった。また来夏まで、この鮮やかさを胸に灯しておこう。
僕にとって欠かせぬもう一つの大切な夏、それは東北で浴びる鮮烈な緑。弘前に満ちる灯りの洪水にこころを射抜かれ、あれからもう干支ひと回り。八重山と東北、その愛する地の熱さが揃ってこそ、僕の夏は完成する。
10月は、特に旅しすぎ月間だった。木曽、浜松に続き、10ヶ月ぶりとなる下部温泉へ。去年初めて訪れ、その効能に驚いた魅惑のぬる湯。あの感覚が忘れられず、どうしてもこの湯に逢うことを我慢できなかった。
そして11月、無性に再訪したくなり蔵王の地へ。二十年近く前、まだ若かりし僕らがスキーで遊んだ想い出の地。絹のような白き濁り湯と、懐かしい想い出に温められる穏やかな時間。再訪の悦びというものを、じんわりと噛みしめる旅だった。
そして今年の締めくくり、最後の旅となった冬の青森。あの白さに逢いたくて、豪雪の地酸ヶ湯へ。その旅の模様は、これからのお楽しみ。
こうして振り返ってみると、12か月間で旅すること16回。さすがにやりすぎだな。そう思いつつも、行けるときに旅することが賢明な判断だと僕は知っている。
未知なる地で出逢う、新鮮な感動。一方で、再訪した地で回顧に耽るという重ねた旅を噛みしめる悦び。そのどちらも甲乙つけがたく、こうして年を追うごとに旅への想いは深まるばかり。それだけ、これまで善い旅を蓄積してきたという証。
来年は、ちょっとばかり時間の余裕を作るのが難しそう。でも不思議と、あれだけ渇望していた旅への欲求も今は一段落。そりゃそうか。今年これだけ旅したんだから、そう思えなければバチが当たる。焦ることもない。次なる旅先が僕を呼んでくれるタイミング、そのときを待てば良いのだから。
あと2日半で、今年ももう終わり。黒豆を煮つつ、こうして一年の旅に想いを馳せる。これ以上の幸せなんて、僕には考えられない。そう思える年末を今年も迎えることができたことに感謝し、2024年のブログ納めとしたいと思います。
最後になりましたが、今年も遊びに来ていただき本当にありがとうございました。2025年が、皆さまにとって、そして僕にとって良い年でありますように。
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