羽田から大空を翔ること3時間、人生初の宮古島に到着。今年も残すところあと2ヶ月ちょっと。東京では肌寒さが沁みてくる季節ですが、そうとは思えぬほどの鮮烈な青空がお出迎え。
宮古島も初ならば、この時季の沖縄も初めて。6月のむわっとした南国感あふれる空気感はどこへやら、心地よいからっとした風が肌を撫でゆく。

あの空色にしてこの空気なのか。はやくもはじめての感覚に触れたところで、ふたたび空港内へ。そこで迎えてくれるのは、琉球赤瓦や漆喰、宮古で獲れた貝などで造られたあたらかシーサー。天然素材の質感が、なんとも独特な表情を魅せています。

宮古のシーサーくん、はじめまして。これから5日間、どうぞよろしくお願いします。凛々しいシーサーにごあいさつを終え振り返ると、宮古のことばでようこそを意味するんみゃーちの文字。

おーりとーりにめんそーれ、そしてついにんみゃーちの島まで来たんだな。ホテルのロビーに書いてあったおーりとーりの意味すら知らなかった、人生初の沖縄旅。あのときはまさか毎年のように再訪できるなんて思ってもみなかったし、10年後にこうして宮古にまで手を染めるなんて想像すらしなかった。
そんな感慨に耽りつつ、バスの時間まで空港内のお土産屋さんをのんびりぶらぶら。置いているものが、八重山と全然違う。たった100㎞。でもそれを隔てる海と文化の違いは、僕の思っているよりもはるかに深いのかもしれない。

お土産屋さんを見たり僕らを乗せてきたポケモンジェットを見送ったりしつつ小一時間ほど過ごし、やってきた『宮古協栄バス』の系統9番に乗車し平良の市街地を目指すことに。

宮古空港を出発しドン・キホーテやサンエーといった聞き覚えのあるバス停を通過しつつ走ること15分、北小前で下車。そこから歩くこと2分足らず、これから4泊お世話になる『スマイルホテル宮古島』に到着。

宮古島のメインストリートとも称される西里大通りに面した本館でチェックインし、新館の自室へ。今回は相場よりもお手頃ということでこのホテルを選びましたが部屋は新しく快適、飲み食いするにも最高の立地でここにして大正解。

なにせ初めての宮古島、土地勘も何もありゃしない。まぁ今回は繁華街泊だし。そう思いつつカーテンを開けてみると、目の前にどんと広がる平良の港。なんだよこれ、最高なんですけど!?部屋に居ながらにして、宮古ブルーし放題。もうすでに、僕らのしあわせな時間は約束された。

港湾を染める青さに感嘆の声を漏らし、荷物を置いてひと息ついたところで初宮古散歩へ。ホテルの前にのびる西里大通りは、宮古島の中でも一番歴史のある商店街だそう。お土産屋さんのほか、夜になれば多くの居酒屋さんに灯が点ります。

平成の大合併で宮古島市となる以前、旧平良市の役所があったこの一帯。港もすぐ近くにあり、島の中心街らしく縦横にのびる街路沿いにはさまざまな店が密集。

空港から市街地までの平坦な道のりとは一変し、公設市場前の通りから先は海へと向け斜面の連続に。次はどんな街角が顔を覗かせるのだろう。そんな探検気分で、細い坂道を下ってゆきます。

何もかもがはじめて尽くし。坂道に折り重なるようにして建つ、沖縄らしいコンクリートの家々。そんな石垣とは全く異なる表情をもつ街並みに目を奪われつつ、足の向くまま路地を進み海沿いへ。

時刻は18時前、いつも訪れる6月ならばまだまだ明るい時間。でもさすがに冬至へと向かってゆくこの季節、港を染めるのは夜の予感を漂わせる夕刻の色。

はじめてとなる宮古の海を感じつつ歩いてゆくと、来年の出番を待つかのようにひっそりと保管される爬龍船が。いつかはハーリーも見てみたいなぁ。

平良港や舟溜まりの情緒にこころを染めつつ、さらにその先のパイナガマビーチへ。たぶん数日前の台風で砂浜が荒れてしまったのでしょう。普段は遠浅のきれいなビーチが広がっているようです。

この空色でもその青さを感じさせる海、沖縄らしさを感じさせる街並み。そんなはじめての宮古島の空気感に触れ、ぐるりとひと回りし公設市場前へ。旅立ち前に宮古島好きの人が言っていた、宮古は都会だよのことばの意味がなんとなく解る気がする。

これが宮古島なんだなぁ。眼に映るものすべてが新鮮で、ずっとキョロキョロしっぱなし。そんな宮古との初対面をひと通り済ませ、この島での初めての宴の場となる『Pork&Fish Dining HULAR(フラー)』へ。

南国つながりで何となくハワイアンな外観ながら、店内でメニューを見ると島の料理が想像以上にずらり。まずはカールスバーグの生で乾杯し、島豆腐の冷奴から始めます。
しつこいようだが、これが初めてとなる宮古の島豆腐。もっちりしっとりと濃厚で弾力があり、でもくちどけなめらか。豊かな豆の味わいを引きたてる削り節がまた堪らない。
その下にちらりと見えているのは、何かしらの塩辛。何かしらと書いたのは、これが何だか分からなかったから。いかではない、でもかつおの酒盗にあたるワタガラスにしてはクセがなさすぎる。この手の珍味が苦手な相方さんも、意外と平気だ旨いと豆腐と一緒に食べている。
なんだろう、塩っ辛いけどそれがものすごく島豆腐に合う。いまこの記事を書こうとして調べたら、かつおの腹皮の塩辛がお隣伊良部島で作られているらしい。これがそうだったのか?いまだにはっきりしませんが、とにかくこの組み合わせが最高だというのは間違いない。

旨い冷奴に触発され、カールスバーグをぐいっと飲み干し泡盛へ。豊見親と書いて、とぅゆみゃと読むそう。ロックで含むと、かんっとくるような辛口感。でも味のきつさはまったくなく、心地よい風味とほんのりとした甘味ですいっと飲みやすいヤバい奴。
そうか、これが宮古の泡盛の味か。僕が泡盛をおいしいと思えるようになったのは、八重山に行ってから。だから、宮古の酒はどうなんだろう。そう若干心配していましたが、そんなことはまったくの杞憂に終わりそう。
初となる宮古の島酒に頬を染めていると、つづいて頼んだ2品が到着。カリカリスパムは、その名のとおりスパムを細切りにし揚げたもの。そういえば、スライスはよくあるけどこんな食べ方は初めてかも。その食感はけんぴに近く、しっかりと揚げることで余分な油と塩分が抜け軽やかなおつまみに。これ、家でも絶対真似しよう。
島魚の天ぷらには、今日はシイラが使われているそう。沖縄らしい厚めの衣ながら、さっくりとした食感。なかからは、白身の良さが凝縮されたほくほくの身が顔を出す。
その淡白な滋味を彩るのが、2種のソース。沖縄の天ぷらによく合うウスターソースもさることながら、自家製のタルタルソースがまた逸品。色味からしてしば漬けが使われているのでしょうが、全体的にまろやかでやさしい味わいが上品な白身を活かしてくれる。

旨いつまみに泡盛が進み、つづいて月桃の花を。これもまたすっきりと飲みやすく、それでいてほんのりと火照りを連れてくるような心地よい酒感の持ち主。八重山の泡盛は、どちらかといえば麹が薫る。もしかしたら、宮古の泡盛はそれよりも飲みやすいのかもしれないな。
はやくも先島のあらたな魅力に心酔し、つづいて追加したのはローストビーフ。しっかりと赤身の旨味を感じる肉々しさ、それを彩るほんのり甘めのソース。玉ねぎやにんにくの風味が華を添え、月桃の花がもうからっぽに。

さらに琉球王朝1合を。あれ、今度はちょっと八重山に近づいたぞ。さきほどの2つより、より甘味と香りを感じるふくよかな味わい。この時点でもう悟った。宮古の酒、僕に合うんだな。
映えそうなおしゃれな店内ながら、しっかり味わえる沖縄の味。そんな宴の〆にと頼んだのは、島豚の青菜炒め。これがもう、ドンピシャ僕好み。
白身の甘味と赤身の旨味が豊かな豚、風味の良いしゃっきしゃきの小松菜。素材の味わいをダイレクトに愉しませてくれる、がつんとにんにくのきいたシンプルな味付け。
これは泡盛にもいいけれど、白いご飯が欲しくなる。いやでもやっぱり、琉球王朝にもばっちりだ。旨い旨いとすべて平らげ、大満足でお店を後にします。

これが、宮古島というものなのか。くどいようだが、五感に触れるものすべてが初体験。初めての島酒と島の味に上機嫌で歩く街並みも、こうして眺めるとやっぱり石垣と面持ちが違う。

初めてを存分に浴びたこころの火照りは収まる訳もなく、ホテルに帰り宴の続きを。滞在中の旅のお供にと選んだのは、沖之光2001。さきほど飲んだ月桃の花と同じ酒蔵で、これまたするりと飲み心地のよい危ない予感のする旨い酒。

いつもなら調子に乗ってぐいぐい飲んでしまいそうなところだが、明日からはさらなる未知が怒涛のように押しよせるに違いない。時間も気分もちょうどいい塩梅になったところで、まだ見ぬ青さを夢見て深い眠りへと落ちるのでした。



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